キストコイ

彩。

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始まり

ご主人様

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他の女達と関係持つ男が婚約者候補になり、その最低さを更生させたら長年夢だった一人暮らしが出来るようになるから頑張らなきゃ! って、次の日も思える程ポジティブだったらよかったんだけどね。


「無理だ……」


次の日、私は一人暮らしにつられて面倒で大変な事を引き受けてしまった事にベッドの上で後悔をしていた。


「人を変えれる程の事私に出来るのかなぁ……」


出来なくこのまま彼に遊ばれ、気を抜き気付いたらヤられていたって事があり得そうである。昨日話してて思ったがなんかそういうコトは彼は上手そうである。


「朝飯の時間なのに降りてこずなーに一人考えてんの?」

「!?!?」


思い浮かべていた相手が呆れた顔で私を覗き込んでいた。彼の長い髪が私の顔に当たる。


「何勝手に人の部屋に入って来てるんですか!」

「ノックしたけど返事なかったのアンタだけど?」

「う、それはすみません……」


気付かない程に彼の事を考えこんでいたらしい。朝ご飯食べに降りようと体を起こそうとするが目の前に彼が居て起き上がれず彼を視線で避けるように向けるが。


「……」

「!? え、ちょっ……」


無言で返されたと思うと彼の両手が私の顔の横に置かれた。覆い被されている状態であり、顔に影がかかる。


(改めて顔見ると……本当に綺麗な顔だな。よく見ると男だとわかるけど女に間違わられそうなくらいまつげも長いし……じゃなくて!)


「あの……凪さ……」

「イザナ」

「イザナくん避けて下さい?」

「……ひな」

「!? ちょっ……!」


片方の手が私の頬に触れたと思うと顔が近付いてくる。もしやキスされそうになっているのに気付き慌てて手で体を押すが全然ビクともしない。


「い、イザナくん……」

「……」


このままされてしまうと思い、咄嗟に目を瞑る。が、待ってもそれは訪れず恐る恐る目を開くと楽しそうなイザナくんの姿を見て、またからかわれたのに気付く。


「イザナくん!」

「アンタってこういう事されるとすーぐ赤くなって震えて可愛いよな~なんだよ男幼馴染み二人居るのにそういう事しねーの?」


私には幼馴染みの男兄弟がいる。昨日隣挨拶したのかわからないがイザナくんは知っているようだ。


「じゃれあいはしますが……というか貴方とは会って間もないですし、そういう人とするとそりゃあ照れますし嫌なのでやめて」

「ふーん……」


やめて欲しいって言葉を聞かず彼は立ち上がるので起き上がる。全然聞く気がないしイザナくんはマイペースな人のようだ。相手すると疲れるなぁっと思いながら立ち上がると床に見慣れないものが落ちているのに気付く。拾うとそれは男の写真だった。短い茶髪に垂れ目で顔は整っていてかっこいい顔つきしている。私の好みじゃないが。

(何でこんな写真がこんな場所に?)

「あ!」

「あ」


不思議に首を傾けて写真を見ていたらバッとイザナくんに奪われた。驚いて顔をみるとはじめて見る恥ずかしそうな表情をしていた。そんな表情も出来るんだとまじまじ見ていたら気恥ずかしそうに口を開く。


「見たよな」

「はい」

「忘れてくれたりしね?」

「それは……」


いいですよっと言おうとした私に閃き、止まる。先程からイザナくんのペースに巻き込まれ照れたり焦ったりして困っている。これはいい機会かもしれない。


「……貴方の返答次第ですね」

「ん?」


意外な展開だったらしくイザナくんは驚いた表情をし、聞き返した。言った自分もどうやってイザナくんのペースに巻き込まれないようにすればいいか思いつかない。彼の珍しく気恥ずかしそうな表情だったし、今まで接してきた性格的に余程の事なんだろう。だったら。


「私の言う事を聞くと言うのはどうでしょうか?」


迫って来た時とかやめてと言えばすぐ離れてくれたり、一緒に住むしご飯作ってと頼むとか。我ながらいい案だと思い、にっこり笑ってイザナくんを見ると……何故か彼は楽しそうに笑っており、何か変な事言ったのかと狼狽えると手を取られる。


「い、イザナくん?」

「なぁ、ひなそれってさ……」

「は、はい」

「ひなが俺のご主人様みたいな感じになるわけ?」

「!?!?!?」


(ご主人様!?)

勿論そんなつもりで言った訳じゃないが、言われてみれば自分の言う事を聞けってなんだか偉そうな言い方だった。訂正しなければっと焦って口を開く前にイザナくんが跪く。


「弱味握って自分のいう事聞かせるか……ははっ、いいねひな」

「イザナくんそれは……」

「面白そうだからいいぜひな。アンタは今日から……」

「!」


ちゅっと手の甲にイザナくんはキスを落とした。


「俺のご主人様な」

「!!」


顔に熱が集まるくらい真っ赤になり、口をパクパクしながらイザナくんを見る。イザナくんはソレをみて満足そうな表情をし立ち上がる。


「じゃあ、先にダイニング行ってるな」

「あ……」


訂正する前にイザナくんは部屋を出て行った。残された私は頬に手を当てる。熱い。


「……どうしよう」


引き受けた事よりあのマイペースなイザナくんのご主人様になるなんて面倒な事に……いや。

(頼まれたことはまともにすることだった。命令を聞いてくれるなら居る間はやめてくれて、そのうちまともになるかもしれないし)

悪い事じゃないっと思うようにした方がいい。じゃなきゃ、ご主人様になったという事で悩んで疲れそうだ。


「ご飯食べよう……」


まずはこの疲れた心と体に栄養をと自分もダイニングに行く事にした。



***


(そういえばあの写真の人誰だったんだろう……)


放課後図書部の友達に会いに一人廊下を進みながら朝の事を思い出していた。
楽しそうだと理由もあると思うが、イザナくんが何でもいう事聞くのを了承したくらいの写真。かっこいい顔でそういえばどこかで見た事がある気もする。


(有名人かな……でもイザナくん人の写真持ち歩かなさそうなのに何でなんだろう……)


不思議だと考えていたから背後からの気配に気付かなく急に肩をポンっと叩かれ驚いて振り向くとそこに居たのは。


「こんにちは甘泉さん」

「なっ!」


昨日追いかけて来た人だった。高等部の人に注意されたのに諦めが悪い人だ。


「何度話しかけてきても無駄です。私は貴方に興味ないので仲良くなる気ありません」

「そんな事言わずにさ。俺の家はこれから上がると思うし……それに俺は顔悪くないだろ? な?」


家の事はどうでもいいし、顔は昨日から見たイザナくんの方が数倍かっこいいし綺麗だと思う。冷めた目で男子生徒を見るが、構わず話してくる。


「甘泉さんも俺と婚約するといい事あると思うよ? 何より」


(本当にしつこいなぁ……)

私にしては結構言っている方なのに諦める気配がない男子生徒にため息が漏れる。どうすれば諦めてくれるかっと視線を窓の方に向けるとそこには。

(イザナくんだ)


そういえば図書部は中等部と高等部の間にあるのだった。また女と遊んでいたのかと思ったが、意外にも彼はひとりで私と目がパチッとあう。目があうと視線をずらし状況を理解したのか頷いた。
何かしてくれる訳ないしと、私は視線を逸らし走って逃げるかと背を向けようとするとそれに気づいた男子生徒に手首を掴まれた。


「用事があるので離してくれませんか」

「君が俺と婚約を結んでくれるなら」

「あのですね……」


いい加減にしないと先生か親に言いますよと脅そうとした時だった。私の肩を強い力で引き寄せ、男子生徒から引き剥がされた。何かと思った時にはぽすっと程よくついた筋肉が頭に当たり朝嗅いだ匂いがする。


「残念だったな」

「え」

「あ、貴方は……!」

「この甘泉陽菜は婚約者は居ないが候補は居るんだよ。俺様とかな」

「イザナくん!?」


顔を上に向けると男子生徒に楽しそうに笑うイザナくんの姿があった。


「貴方が婚約者候補だと!? そんなの一途じゃない貴方がなるなんて……」

「そう。俺は一人に絞るとか面倒で婚約者は怠い。だから候補なんだよ」

「貴方は彼女にふさわしく……」

「確かに俺はひなにふさわしくはねーと思う。だけどひなの意見聞かず無理矢理婚約者になろうとしているお前よりはマシだとは思うな」

「!!」

「そんなひなのこと考えれねーなら一生候補にも上がんねーよ。諦めて他のやつんとこに行けよ」

「っ!」

「そして二度と関わるな」


イザナくんが冷たい声で言うと、男子生徒は唇を噛み締め言い返さず去って行った。

(凄い……)

私が困っていた人をあっという間に諦めさせた。婚約者候補なのを知られたけども。


「アンタって大変なんだなー」

「へっ?」


去っていた先を見ていたら上から声が聞こえ、顔をあげるとイザナくんが私を見ていた。


「昨日会った時も追われてたんだろ? モテるんだな」

「……財産目当てですよ」


思ったより呆れた声で言ってしまった。
そうなのだ。迫って来る男はほぼ財産目当てで私の性格とかは事はどうでもいい。だから、家から離れ誰も知らない場所で一人暮らしをしたいのだ。


「まぁ、慣れましたけど」

「……ひな」

「なんです……!?」


上を見上げた時に顔を手で傾けられ、ちゅっと音を立て唇を重ねられた。目を見開きイザナくんを見るとまたニヤリ笑っている。


「な、な……」

「慰めにとご主人様を助けたご褒美に」


なんでしたのかと問う前にイザナくんはけろりと言う。私は顔を真っ赤にしされた唇に触れる。


(慰めと助けたご褒美だと!?)


「どちらも求めてませんけど!」

「いいじゃん婚約者候補だし」

「婚約者ならともかく候補はキスはしないです! というか」

「ん? ……お」

「私のファーストキス……」


ファーストキスに夢見ている年頃だったのでされたと思うと、涙が目に集まっていく。イザナくんは予想外だったらしくそれを見て驚き、前に回り込み涙を手で拭う。


「っ……」

「悪かったって……」

「わ、たし……初めては……す、きな……人とって……決めてたのに……」

「……」

「それを……」



(こんな会って間もない人と……!)


手で涙を拭くが止まる気配がなく溢れていく。初めてを奪われた悲しみなのだろうか。


「ひな」

「!!」


名を呼んだイザナくんに前から抱きしめられ、彼の匂いに包まれる。


「悪かったよ。アンタを周りの女と同じ軽く扱って」

「……」

「アンタはそういうの慣れてないのにさ……ごめんな」


優しい手つきで頭を撫でられ、申し訳なさそさそうな声に段々と落ち着き涙が止まった頃話しかけた。



「イザナくん」

「ん?」

「反省してるんですか?」

「してる」


手が背中にいき、優しく抱きしめてくれる。彼の事はあまり知らないが声は反省してる気がする。だったら動物にされたと思う事にしよう。でも、簡単に許すのは嫌なので。


「……じゃあ、何してくれるんですか」

「え」

「女のファーストキスは高いんですよ? 何もしないで終わらせる気ですか」


少し意地悪にそう言ってみた。


「俺にキスされた女は泣いて喜ぶんだけどな」

「イザナくん?」

「はいはいっと。……じゃあ、そうだな今度俺のバイト先のウェスペルで特別スイーツセット奢るからそれで」

「ウェスペル!?」

「お、おう?」


ウェスペルという名を聞いて私は顔を上げイザナくんを見る。


「あの場所のパフェ凄い美味しいんですよね! イザナくんのバイト先なんですか?」

「あ? あぁ、ホールで料理提供しているけど」

「そうだったんですか……楽しみです」

「泣き止んだか」

「イザナく……!」


頭を撫でられ何かと見つめると微笑まれ、ドキッとした。美形の微笑み顔は心臓に悪い。でも見惚れてしまう。


「今度からからかう程度を気を付けるな」

「は、はい……」


いつもの表情に戻り、私をパッと体を離す。ぬくもりが消えて少し寂しく感じる。


「後、今回悪かったから言う事聞くレベル上げる」

「はぁ……って! もしかして言う事余り聞く気なかったんですか?」

「まぁ、面白かったら聞こう程度だった」

「今は?」

「軽い面倒事なら聞く」

「全然聞く気ないじゃないですか……」


やっぱりこの人簡単にはいかない。


「ははっ。……いいじゃん今回助けてやったしさーこれで言い寄って来るやつ減ると思うぜ」

「そうですかね……」

「ん。……まぁ、違う面倒事起きると思うけど」

「え?」

「その時も近くに居たら助けてやるよ。俺のご主人様だからな」

「はぁ……?」


起きる面倒事は言う気はないようでわからないが頷いとく。


「というか俺用事でこっち来てたんだったからじゃあな」

「はい」


去って行くイザナくんの姿を立ち止まり見ながら考える。
キスして泣いたら面倒だと置いていきそうなのにイザナくんは謝ってくれたし、お詫びもしてくれた。最低な人だと思っていたがそこまでクズじゃないのかもしれないと感じたのだった。
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