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本編
ep02_2
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あと、気になったのはいきなりすぎる結婚のことだよね。
これもね、いちおう事情があるみたい。
この世界は女の子の出生率が低いらしくて、だいたい男女比が4:1くらいなんだって。だから女の子は成人すると、もれなく結婚しなければいけないっていう決まりがあるんだとか。
21歳――あたしの年齢は当然この世界じゃ成人済。
呼び出した大事な愛し子をフリーにしておくのは危険だから、早々に旦那さんを決めなきゃいけない決まりがあるらしい。
でね? 召喚された愛し子が最初に触れた男のひとこそ、晶精が愛し子を護るために晶精が定めた相手になるらしく。
その男のひとのことを〈晶精の護人〉って呼んで、やっぱり特別な存在になるらしい。
「今は失われているとはいえ、ノウトはもともと〈晶精眼〉の持ち主だ。彼が選ばれたのは、驚きはしたが納得だよ」
「晶精眼、ですか」
「ああ。左眼がね、君のような碧い瞳だった。今は力を失っているけれど、晶精との縁はあるんだ」
「左眼……」
あたしはオッサンの目を見る。
気になってたんだよね。左右で色素がちがうっぽかったのが。
片方の灰色は、なんだかいろんな色がちかちか混じりあった虹のような色で、綺麗だなあって思ってたのがそれみたい。
「っ……な、なんだよっ」
おっと。見られるのに慣れてないのかな。
オッサンちょっときょどって、身を後ろに引いちゃった。
「あはは。チセ、手加減してあげてくれ。君の住んでいた世界とはちがうのだろう? この世界は女性が少ない。だから、女性慣れしていない男も多いんだ」
「あっ……そういう……?」
えっ。オッサン、その顔で純情とか? なにそれカワイイじゃん。
興味が湧いてもうちょっとマジマジみてみるとさ、案外キレーな顔してるんだよね。
なんていうの? 雰囲気イケメン寄り?
無精髭も似合ってるし、猫っ毛っぽい髪もさ、もう少し手入れしたらシンプルなシャツとか着てるロックバンドのボーカルっぽい感じになりそうな。服が着崩れた感じも逆に似合って見えるし、………んんん? オッサン、素材、よくない?
年はそこそこ離れてそうだけど、ヒョロッとしてるところとかも嫌いじゃないし、わりと……好みかもしれない。
あれ?
アリかもしれないよ???
「おい、じろじろ見るなって」
「でも、あたしの旦那さんになるひとだし」
「ぶっ」
あ、吹き出しちゃった。
「あはははは! ノウト、お似合いだよ、君たち」
「茶化さないでください……」
肩を落としたオッサンは、わざとらしくヤレヤレ、って首を横にふる。
「クソ。絶対なにかの間違いですから。しばらくは護衛がわりはつとめさせてもらいますけど、かわりの男が見つかったら、即! この任は退かせてもらいますからね」
「もう婚姻は認めたよ?」
「くっ……勘弁してください。せめてコイツ……あ、いや。愛し子さまの好む男が見つかったら、交代させてやってください」
「見つかったら、ね」
「含みのある笑いやめてもらえますか?」
オッサンてば、面倒くさいって気持ちが前面にでてるけど、あたしのこと気をつかってはくれてるんだね。
でもさ。交代か……。
いいひといるかな……?
いま籍入れたよね? となると、ソッコー離婚して再婚計画たてろってこと?
ああ……、もう、なるようになれって感じだね。
すっごい人ごとみたいに感じちゃうけど、こればかりはしょうがないよね。状況理解するので手いっぱいだもん。
「というわけだ、チセ。多少面倒くさがりだけど、悪い男ではないんだ。そこは私が保証する」
「はあ。それはなんとなく伝わりました」
「うん。それはなにより。君のことに関しては私が最高責任者になるから、この国で生活するにあたって困ったことがあれば、私かノウトになんでも相談してほしい」
「はい」
「さしあたっては住まいだね。これはもう用意しているから、――ノウト、君もだよ」
住まいが提供されるのは助かる、っていうかないと困る。
……でもこれ、もしかして、オッサンと共同で住む感じ?
「っ…………マジですか……」
オッサンめちゃくちゃ嫌そうだねーっ。
「うん、夫婦だからね」
「いや、自分の家がですねえ」
「夫婦だからね」
「…………はい」
結婚するってそういうことか。……うん、そりゃ、そうか。
なんだかノリでうんうん頷きまくっていたけど、あたしはここでようやく、状況を理解することができた。
ひとまずルームシェアって考えたらいいよね。
この世界に詳しいひとが近くにいるルームシェア。
うん。
結婚しちゃったものはしょうがないから、それなりに仲良くしようよ、オッサン!
これもね、いちおう事情があるみたい。
この世界は女の子の出生率が低いらしくて、だいたい男女比が4:1くらいなんだって。だから女の子は成人すると、もれなく結婚しなければいけないっていう決まりがあるんだとか。
21歳――あたしの年齢は当然この世界じゃ成人済。
呼び出した大事な愛し子をフリーにしておくのは危険だから、早々に旦那さんを決めなきゃいけない決まりがあるらしい。
でね? 召喚された愛し子が最初に触れた男のひとこそ、晶精が愛し子を護るために晶精が定めた相手になるらしく。
その男のひとのことを〈晶精の護人〉って呼んで、やっぱり特別な存在になるらしい。
「今は失われているとはいえ、ノウトはもともと〈晶精眼〉の持ち主だ。彼が選ばれたのは、驚きはしたが納得だよ」
「晶精眼、ですか」
「ああ。左眼がね、君のような碧い瞳だった。今は力を失っているけれど、晶精との縁はあるんだ」
「左眼……」
あたしはオッサンの目を見る。
気になってたんだよね。左右で色素がちがうっぽかったのが。
片方の灰色は、なんだかいろんな色がちかちか混じりあった虹のような色で、綺麗だなあって思ってたのがそれみたい。
「っ……な、なんだよっ」
おっと。見られるのに慣れてないのかな。
オッサンちょっときょどって、身を後ろに引いちゃった。
「あはは。チセ、手加減してあげてくれ。君の住んでいた世界とはちがうのだろう? この世界は女性が少ない。だから、女性慣れしていない男も多いんだ」
「あっ……そういう……?」
えっ。オッサン、その顔で純情とか? なにそれカワイイじゃん。
興味が湧いてもうちょっとマジマジみてみるとさ、案外キレーな顔してるんだよね。
なんていうの? 雰囲気イケメン寄り?
無精髭も似合ってるし、猫っ毛っぽい髪もさ、もう少し手入れしたらシンプルなシャツとか着てるロックバンドのボーカルっぽい感じになりそうな。服が着崩れた感じも逆に似合って見えるし、………んんん? オッサン、素材、よくない?
年はそこそこ離れてそうだけど、ヒョロッとしてるところとかも嫌いじゃないし、わりと……好みかもしれない。
あれ?
アリかもしれないよ???
「おい、じろじろ見るなって」
「でも、あたしの旦那さんになるひとだし」
「ぶっ」
あ、吹き出しちゃった。
「あはははは! ノウト、お似合いだよ、君たち」
「茶化さないでください……」
肩を落としたオッサンは、わざとらしくヤレヤレ、って首を横にふる。
「クソ。絶対なにかの間違いですから。しばらくは護衛がわりはつとめさせてもらいますけど、かわりの男が見つかったら、即! この任は退かせてもらいますからね」
「もう婚姻は認めたよ?」
「くっ……勘弁してください。せめてコイツ……あ、いや。愛し子さまの好む男が見つかったら、交代させてやってください」
「見つかったら、ね」
「含みのある笑いやめてもらえますか?」
オッサンてば、面倒くさいって気持ちが前面にでてるけど、あたしのこと気をつかってはくれてるんだね。
でもさ。交代か……。
いいひといるかな……?
いま籍入れたよね? となると、ソッコー離婚して再婚計画たてろってこと?
ああ……、もう、なるようになれって感じだね。
すっごい人ごとみたいに感じちゃうけど、こればかりはしょうがないよね。状況理解するので手いっぱいだもん。
「というわけだ、チセ。多少面倒くさがりだけど、悪い男ではないんだ。そこは私が保証する」
「はあ。それはなんとなく伝わりました」
「うん。それはなにより。君のことに関しては私が最高責任者になるから、この国で生活するにあたって困ったことがあれば、私かノウトになんでも相談してほしい」
「はい」
「さしあたっては住まいだね。これはもう用意しているから、――ノウト、君もだよ」
住まいが提供されるのは助かる、っていうかないと困る。
……でもこれ、もしかして、オッサンと共同で住む感じ?
「っ…………マジですか……」
オッサンめちゃくちゃ嫌そうだねーっ。
「うん、夫婦だからね」
「いや、自分の家がですねえ」
「夫婦だからね」
「…………はい」
結婚するってそういうことか。……うん、そりゃ、そうか。
なんだかノリでうんうん頷きまくっていたけど、あたしはここでようやく、状況を理解することができた。
ひとまずルームシェアって考えたらいいよね。
この世界に詳しいひとが近くにいるルームシェア。
うん。
結婚しちゃったものはしょうがないから、それなりに仲良くしようよ、オッサン!
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