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本編
ep03_ふたりの住まいはお城ですか!
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ひととおりこの世界のことについて聞いて、説明受けたら、あっという間に夕方になってた。
で、この日はもういい時間だからって、ちょっと早めの晩ご飯いただいてから住まいへ連れて行ってもらった。
あ、そうそう、ご飯ね。あんまり美味しくなかった……。
うーん、素材自体は意外となじみのあるものだったんだけど。
ジャガイモとか。ラム肉とか。玉ねぎとか。でも、ふつーにバターで焼きました、とか、塩で味付けしました、とかそれくらいでさ。めっちゃシンプルだったんだよね。
聞いたところ、それが一般的な料理だったらしく、ちょっとこれはなんとかしないと、早々に日本が恋しくなりそう。
でも一緒に出されたワインは美味しかったなあ。
あたし、味はゼンゼンわかってないんだけどね! 安いお酒しかのんだことないもん。
で。今日は疲れてるだろうから、早く休みなさいって言われた。
また正式な晩餐もあるんだって。……それはちょっと緊張する気もするけど、そのときはそのときか。
エドアルド殿下は気さくなひとで、いろいろ話もしやすかったし、そういう意味では安心してる。
あ、オッサンも悪いひとじゃなさそうだしね。
ワインざぱざぱ飲んでたら、そんなに飲むと酔うぞ、だって。ぷぷ! まじめか!
一人前の娘さんみたいに心配してもらって、悪い気がしない。
で、エドアルド殿下とはさよならして、これからあたしの部屋に連れていってくれるんだって。
なんと……このお城の中らしい。
わー、まさかのお城住まい……マジかって思ったけど、オッサンの方が衝撃大きそうだったな。
なんでもオッサンてば、この国では〈晶精技術認可省大臣〉っていうエラいひとだったらしく。大臣だって! 大臣っ!!
どーりで閣下って呼ばれてるはずだよねえ。
だからあたしを召喚したあの魔法陣を動かすための機材? 晶精機器っていうものの責任者だったとかで、あの場所にいたんだって。
それは運命ですねえっ、て茶化してみたら、めちゃくちゃ恨めしそうな顔で見られたよ。うーん、申し訳ない。
いやでも、申し訳ないなって思う気持ちはあるんだよ。これはほんと。
あたしもこの国の事情に巻き込まれたわけだけど、オッサンもオッサンであたしの偶然の行動に巻き込まれたわけだから。
迷惑はかけるかもしれないけど、オッサンにもなにかメリットみたいなものがあればいいなー、とは思う。何をしてあげられるかはさっぱりわかんないけど。
で、食事をさせてもらった部屋から出て、北へ。
先導のひとについていったらさ、すぐに城の外が見える回廊にでたんだ。
「わあ!」
街の明かりがきらきら輝いていて、すっごく綺麗な夜景だった。
「あ、おい!」
落ちるなよっ! ってうしろからオッサンが追いかけてきてくれる。――ぷぷ、ほら、めんどう見いいよね。
カンカンカンカン! って、金属音の鳴る工場っぽい床を走って――、
「すごい! きれー!」
あたしは手すりに両手をつけて、ぐるりと周囲を見渡した。
お城の外観も、ここからじゃ全部は見えないけど――ぜんぶ、ぜんぶはじめての景色。
電気の代わりに晶精エネルギーが発達しているからかな。街がすっごく明るい。
街灯きらきらだし。――車みたいなのも走っているのかな。明かりが移動していくの。
薄暗いから色はよくわからないけれど、この城自体は金というか――銅? 真鍮? それから、落ち着いた鉄と、鋼の色。ゴツゴツって厳つい感じで、なにかを動かしているのか、大きな歯車みたいなのがいっぱい動いている。
スチームパンクっていうのかな。映画とかでよく見る、少しレトロな、機械がいっぱいついた城はすごくかっこいい。
映画のセットみたいな広大な世界を、あたしはひと目見ただけで好きになった。
それに、地上だけじゃない。
空にも人工の明かりが動いてる。しかもその数がすっごく多いの。
――もしかして飛行機とかなのかな。
元の世界のこと少しだけ思いだして、胸の奥がちょっとだけチクってして――でも、やっぱりドキドキして。
ああ、ほんとうに見知らぬ世界へきちゃったんだって思う。
「すごいですね。夜なのにめちゃくちゃ明るい!」
「そりゃあ王都だ。世界で一番夜の明るい街さ」
「素敵……」
「それは、よかった」
オッサンてばちょっとびっくりしたような顔をしてる。
ふふふ、口をへの字に曲げて。でも、悪い気持ちじゃないみたい。
「キレーですね。空も。キラキラ光ってる」
「そりゃあな」
「お城からもなにかキラキラしたのがでてる? なにこの光?」
「ああ?」
そうそう、なんかチカチカきれーなの浮いてるなーって思ったんだよね。
不思議なことに、あたしが意識するかしないかで、その光の強さも変わってるみたいなんだけど。
最初に召喚された部屋もそうだったし、お城のなか移動するときもちらちら見えてたんだけどさ、いま、意識するとどんどん光が強くなってく。
歯車が動くたびに、あるいは空を飛行機が飛ぶその軌道を。きらきら。きらきら。碧かったり、黄色かったり、色とりどりの光が飛び交っている。
目を凝らしたらちっさな光の粒みたいでさ。
見よう、と思えばハッキリ見える感じ。すっごいファンタジー。
小さな生き物みたいで可愛くて、近くに漂っているふよふよに手をのばす。あはは、蛍みたい!
あたしの手の甲に乗って、白っぽかった光がピンク色に変わったりして。
「あー……なるほど」
オッサンてばそんなあたしを、納得したように見てさ。
おつきのひとに言ってた。晶精眼だって。エドアルド殿下に報告しとけって。
ん? 晶精眼ってあれだよね? オッサンがもともともってたらしいやつ。すごいね、愛し子って感じだ。
「ほんっときれー! 晶精? も、景色も。明るいときにまた見たいな」
「いくらでも時間あるだろ」
「案内してくれます?」
「……他をあたれ。俺は暇じゃない」
「俺?」
「あっ」
あー、こっちが素か。なるほど。
エドアルド殿下の前だときちんとした言葉づかいしてるのね、りょーかいした。
「でも、あたしの護衛、してくれるんでしょう?」
「護衛はちゃんとつけるさ」
「そっちの意味かー」
自分でついてきてくれるわけでもないのね。そっちもりょーかいした!
なんて素直に頷いたら、またオッサンてば妙な顔をしてる。
うーん、ちょっと馴れ馴れしすぎたかな? でも、怒ってはいないし。ラインの見定め難しいけど、多分大丈夫な気がする。
夫婦だしね。冗談がすぎて、笑っちゃうけど!
で、この日はもういい時間だからって、ちょっと早めの晩ご飯いただいてから住まいへ連れて行ってもらった。
あ、そうそう、ご飯ね。あんまり美味しくなかった……。
うーん、素材自体は意外となじみのあるものだったんだけど。
ジャガイモとか。ラム肉とか。玉ねぎとか。でも、ふつーにバターで焼きました、とか、塩で味付けしました、とかそれくらいでさ。めっちゃシンプルだったんだよね。
聞いたところ、それが一般的な料理だったらしく、ちょっとこれはなんとかしないと、早々に日本が恋しくなりそう。
でも一緒に出されたワインは美味しかったなあ。
あたし、味はゼンゼンわかってないんだけどね! 安いお酒しかのんだことないもん。
で。今日は疲れてるだろうから、早く休みなさいって言われた。
また正式な晩餐もあるんだって。……それはちょっと緊張する気もするけど、そのときはそのときか。
エドアルド殿下は気さくなひとで、いろいろ話もしやすかったし、そういう意味では安心してる。
あ、オッサンも悪いひとじゃなさそうだしね。
ワインざぱざぱ飲んでたら、そんなに飲むと酔うぞ、だって。ぷぷ! まじめか!
一人前の娘さんみたいに心配してもらって、悪い気がしない。
で、エドアルド殿下とはさよならして、これからあたしの部屋に連れていってくれるんだって。
なんと……このお城の中らしい。
わー、まさかのお城住まい……マジかって思ったけど、オッサンの方が衝撃大きそうだったな。
なんでもオッサンてば、この国では〈晶精技術認可省大臣〉っていうエラいひとだったらしく。大臣だって! 大臣っ!!
どーりで閣下って呼ばれてるはずだよねえ。
だからあたしを召喚したあの魔法陣を動かすための機材? 晶精機器っていうものの責任者だったとかで、あの場所にいたんだって。
それは運命ですねえっ、て茶化してみたら、めちゃくちゃ恨めしそうな顔で見られたよ。うーん、申し訳ない。
いやでも、申し訳ないなって思う気持ちはあるんだよ。これはほんと。
あたしもこの国の事情に巻き込まれたわけだけど、オッサンもオッサンであたしの偶然の行動に巻き込まれたわけだから。
迷惑はかけるかもしれないけど、オッサンにもなにかメリットみたいなものがあればいいなー、とは思う。何をしてあげられるかはさっぱりわかんないけど。
で、食事をさせてもらった部屋から出て、北へ。
先導のひとについていったらさ、すぐに城の外が見える回廊にでたんだ。
「わあ!」
街の明かりがきらきら輝いていて、すっごく綺麗な夜景だった。
「あ、おい!」
落ちるなよっ! ってうしろからオッサンが追いかけてきてくれる。――ぷぷ、ほら、めんどう見いいよね。
カンカンカンカン! って、金属音の鳴る工場っぽい床を走って――、
「すごい! きれー!」
あたしは手すりに両手をつけて、ぐるりと周囲を見渡した。
お城の外観も、ここからじゃ全部は見えないけど――ぜんぶ、ぜんぶはじめての景色。
電気の代わりに晶精エネルギーが発達しているからかな。街がすっごく明るい。
街灯きらきらだし。――車みたいなのも走っているのかな。明かりが移動していくの。
薄暗いから色はよくわからないけれど、この城自体は金というか――銅? 真鍮? それから、落ち着いた鉄と、鋼の色。ゴツゴツって厳つい感じで、なにかを動かしているのか、大きな歯車みたいなのがいっぱい動いている。
スチームパンクっていうのかな。映画とかでよく見る、少しレトロな、機械がいっぱいついた城はすごくかっこいい。
映画のセットみたいな広大な世界を、あたしはひと目見ただけで好きになった。
それに、地上だけじゃない。
空にも人工の明かりが動いてる。しかもその数がすっごく多いの。
――もしかして飛行機とかなのかな。
元の世界のこと少しだけ思いだして、胸の奥がちょっとだけチクってして――でも、やっぱりドキドキして。
ああ、ほんとうに見知らぬ世界へきちゃったんだって思う。
「すごいですね。夜なのにめちゃくちゃ明るい!」
「そりゃあ王都だ。世界で一番夜の明るい街さ」
「素敵……」
「それは、よかった」
オッサンてばちょっとびっくりしたような顔をしてる。
ふふふ、口をへの字に曲げて。でも、悪い気持ちじゃないみたい。
「キレーですね。空も。キラキラ光ってる」
「そりゃあな」
「お城からもなにかキラキラしたのがでてる? なにこの光?」
「ああ?」
そうそう、なんかチカチカきれーなの浮いてるなーって思ったんだよね。
不思議なことに、あたしが意識するかしないかで、その光の強さも変わってるみたいなんだけど。
最初に召喚された部屋もそうだったし、お城のなか移動するときもちらちら見えてたんだけどさ、いま、意識するとどんどん光が強くなってく。
歯車が動くたびに、あるいは空を飛行機が飛ぶその軌道を。きらきら。きらきら。碧かったり、黄色かったり、色とりどりの光が飛び交っている。
目を凝らしたらちっさな光の粒みたいでさ。
見よう、と思えばハッキリ見える感じ。すっごいファンタジー。
小さな生き物みたいで可愛くて、近くに漂っているふよふよに手をのばす。あはは、蛍みたい!
あたしの手の甲に乗って、白っぽかった光がピンク色に変わったりして。
「あー……なるほど」
オッサンてばそんなあたしを、納得したように見てさ。
おつきのひとに言ってた。晶精眼だって。エドアルド殿下に報告しとけって。
ん? 晶精眼ってあれだよね? オッサンがもともともってたらしいやつ。すごいね、愛し子って感じだ。
「ほんっときれー! 晶精? も、景色も。明るいときにまた見たいな」
「いくらでも時間あるだろ」
「案内してくれます?」
「……他をあたれ。俺は暇じゃない」
「俺?」
「あっ」
あー、こっちが素か。なるほど。
エドアルド殿下の前だときちんとした言葉づかいしてるのね、りょーかいした。
「でも、あたしの護衛、してくれるんでしょう?」
「護衛はちゃんとつけるさ」
「そっちの意味かー」
自分でついてきてくれるわけでもないのね。そっちもりょーかいした!
なんて素直に頷いたら、またオッサンてば妙な顔をしてる。
うーん、ちょっと馴れ馴れしすぎたかな? でも、怒ってはいないし。ラインの見定め難しいけど、多分大丈夫な気がする。
夫婦だしね。冗談がすぎて、笑っちゃうけど!
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