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本編
ep07_2
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んだよこれは、ったく!
相手はガキだぞ! しかも、聞いたところ21になったばかり、だと?
……俺、正気か?
16も年の離れた娘に散々振り回されて、しかも世話を焼かれて嫌じゃないだと!?
だが、さすが異世界人というべきか、コイツはこの世界の女とは全然ちがう。
女ってのは、父親や旦那の顔色うかがって、何を考えてるかよくわからない生き物だと思っていたが。
……いや、コイツもコイツで、めちゃくちゃ俺の顔色をうかがってるのはわかるんだがよ。
なんつうか。マジで怒らないギリギリを狙ってきてるっつうかだな。どこまで自分を出して大丈夫なのか、見定めてるって感じなんだよな。
つまり、本心を隠さない。
慎みはご覧の通りゼロだが、頭の回転は早いし、悪いヤツじゃねえ。
クソ。
愛し子の護人とか、面倒ごとしかないに決まってる。
なのに、たった2日で、コイツのペースにすっかり巻き込まれてるぞ、俺。
責任ある仕事なんか絶対ごめんで、だからこそ、名前ばかり立派で実は業務はたいしたことねえ今の肩書きにおさまって満足してたってのに!
たまーに、エドアルド殿下に面倒ごとを持ってこられるけど、それ以外は適当にやってりゃいい最高の部署なのに……。
クソ。コイツ、俺がいままで苦労に苦労を重ねてようやく手に入れた地位を、あっさりと崩れさせようとしてくるぞ!?
なにが悲しくて職場になんか住まなきゃならねえんだよ……。
工業地区の自宅だって気に入ってたのに、あそこに愛し子を住ませるわけにはいかんだの警備がどうだの散々言われてよ。自分ちすら帰れない。
今日だって、もし一軒家に住むなら城の近くの中央区にするように言い渡されて、絶望したもんな。
中央区なんてオキレイな地に住んだって、何も面白くねえじゃねえか……!
夜にふらっと酒場に行くこともできねえ。……まあ、べろんべろんになって、そこら辺で寝ちまって財布スられることもなくなるんだろうが。ついでにいうと、コイツの作ったツマミめちゃくちゃ美味かったんだが。……それはさておき、だ!
あーーー!
つまんねえ人生だ!! まったく!!
「……すぅ……すぅ……」
……。
クソ、呑気に寝やがって。
まったく、とんだとばっちりだぜ。
……まあ、コイツもコイツでかわいそうだとは思うぜ?
元の世界に戻る方法なんざねえからな。
でも、コイツ、その話聞いたときも、ちょっとだけ悲しそうな顔を見せただけで、すぐに笑ってた。
俺だって、人を見る目はそこそこあるんだ。
コイツもコイツで、ワケアリっつーか、けっこう苦労してるヤツなのかも、とは思った。……つまり、同類のニオイだ。
……はぁー……。
なんだよ。ますます……。
女の身で、若くして連れ去られて。あんな笑ってられるとか、異常だろ。クソ。
ほんと、厄介なヤツにつかまったぜ。
って、思ったら、チセの野郎、ぎゅーって強くしがみついてきやがった!
ヤメロ! 陣地とはなにか、問いただしてやりてえ!
真面目なこと考えててようやく萎えたっつーのに、またちんこ勃つじゃねーか、くそ!
ヤベ。起きてないよな!? そこ脚ひっかけんな……うおっ!!
……って、思ったんだけどな。
「おとうさん……」
「!」
寝てるよな?
目ぇ、とじてるな?
…………寝言か。
「…ずっ……おとう、さん……」
……父親の夢でも見てるのか。
俺の前で泣くんじゃねえ。面倒だ。バーカ。
「……」
ったく。そんな薄着で寝やがって。
クソ。夜着のことは早々に殿下に文句いわねえと。チクショウ。
俺はチセを起こさないように、ゆっくりと体を起こす。布団がはだけるけど、深く寝入ってるのかチセが起きる様子はない。
俺は自分のを脱いで、ゆっくり、ゆっくり彼女の背中から羽織らせる。
起きるなよ……マジで起きるなよ……。
ちと俺の匂いついてるけど、気にするなよ。たのむぞ。
できるだけチセの胸の方は見ないように、袖に腕を通して、また寝かせて――はあああ、これでちっとは落ち着いたか。おら、陣地戻れよ……まったく……。
せっかく引き剥がしたと思うのに、またくっついてきやがるし……。
あーあー。やっぱ家がさみしいんじゃねえか?
21で旦那がいないのは、コイツの世界だと普通らしいが、だったらまだ父親が恋しい年頃なんだろう。
強がりやがって……まったく。
旦那っつーか、俺のこと父親代わりとかに見てねえよな? …………ありうるな……。
はあああ。
まあいいさ。どうせ、別の――もっとコイツに釣りあった男見つけるまでだ。それまでは、お前さんの父親代わり、つとめてやるよ。
……面倒くせえ。
相手はガキだぞ! しかも、聞いたところ21になったばかり、だと?
……俺、正気か?
16も年の離れた娘に散々振り回されて、しかも世話を焼かれて嫌じゃないだと!?
だが、さすが異世界人というべきか、コイツはこの世界の女とは全然ちがう。
女ってのは、父親や旦那の顔色うかがって、何を考えてるかよくわからない生き物だと思っていたが。
……いや、コイツもコイツで、めちゃくちゃ俺の顔色をうかがってるのはわかるんだがよ。
なんつうか。マジで怒らないギリギリを狙ってきてるっつうかだな。どこまで自分を出して大丈夫なのか、見定めてるって感じなんだよな。
つまり、本心を隠さない。
慎みはご覧の通りゼロだが、頭の回転は早いし、悪いヤツじゃねえ。
クソ。
愛し子の護人とか、面倒ごとしかないに決まってる。
なのに、たった2日で、コイツのペースにすっかり巻き込まれてるぞ、俺。
責任ある仕事なんか絶対ごめんで、だからこそ、名前ばかり立派で実は業務はたいしたことねえ今の肩書きにおさまって満足してたってのに!
たまーに、エドアルド殿下に面倒ごとを持ってこられるけど、それ以外は適当にやってりゃいい最高の部署なのに……。
クソ。コイツ、俺がいままで苦労に苦労を重ねてようやく手に入れた地位を、あっさりと崩れさせようとしてくるぞ!?
なにが悲しくて職場になんか住まなきゃならねえんだよ……。
工業地区の自宅だって気に入ってたのに、あそこに愛し子を住ませるわけにはいかんだの警備がどうだの散々言われてよ。自分ちすら帰れない。
今日だって、もし一軒家に住むなら城の近くの中央区にするように言い渡されて、絶望したもんな。
中央区なんてオキレイな地に住んだって、何も面白くねえじゃねえか……!
夜にふらっと酒場に行くこともできねえ。……まあ、べろんべろんになって、そこら辺で寝ちまって財布スられることもなくなるんだろうが。ついでにいうと、コイツの作ったツマミめちゃくちゃ美味かったんだが。……それはさておき、だ!
あーーー!
つまんねえ人生だ!! まったく!!
「……すぅ……すぅ……」
……。
クソ、呑気に寝やがって。
まったく、とんだとばっちりだぜ。
……まあ、コイツもコイツでかわいそうだとは思うぜ?
元の世界に戻る方法なんざねえからな。
でも、コイツ、その話聞いたときも、ちょっとだけ悲しそうな顔を見せただけで、すぐに笑ってた。
俺だって、人を見る目はそこそこあるんだ。
コイツもコイツで、ワケアリっつーか、けっこう苦労してるヤツなのかも、とは思った。……つまり、同類のニオイだ。
……はぁー……。
なんだよ。ますます……。
女の身で、若くして連れ去られて。あんな笑ってられるとか、異常だろ。クソ。
ほんと、厄介なヤツにつかまったぜ。
って、思ったら、チセの野郎、ぎゅーって強くしがみついてきやがった!
ヤメロ! 陣地とはなにか、問いただしてやりてえ!
真面目なこと考えててようやく萎えたっつーのに、またちんこ勃つじゃねーか、くそ!
ヤベ。起きてないよな!? そこ脚ひっかけんな……うおっ!!
……って、思ったんだけどな。
「おとうさん……」
「!」
寝てるよな?
目ぇ、とじてるな?
…………寝言か。
「…ずっ……おとう、さん……」
……父親の夢でも見てるのか。
俺の前で泣くんじゃねえ。面倒だ。バーカ。
「……」
ったく。そんな薄着で寝やがって。
クソ。夜着のことは早々に殿下に文句いわねえと。チクショウ。
俺はチセを起こさないように、ゆっくりと体を起こす。布団がはだけるけど、深く寝入ってるのかチセが起きる様子はない。
俺は自分のを脱いで、ゆっくり、ゆっくり彼女の背中から羽織らせる。
起きるなよ……マジで起きるなよ……。
ちと俺の匂いついてるけど、気にするなよ。たのむぞ。
できるだけチセの胸の方は見ないように、袖に腕を通して、また寝かせて――はあああ、これでちっとは落ち着いたか。おら、陣地戻れよ……まったく……。
せっかく引き剥がしたと思うのに、またくっついてきやがるし……。
あーあー。やっぱ家がさみしいんじゃねえか?
21で旦那がいないのは、コイツの世界だと普通らしいが、だったらまだ父親が恋しい年頃なんだろう。
強がりやがって……まったく。
旦那っつーか、俺のこと父親代わりとかに見てねえよな? …………ありうるな……。
はあああ。
まあいいさ。どうせ、別の――もっとコイツに釣りあった男見つけるまでだ。それまでは、お前さんの父親代わり、つとめてやるよ。
……面倒くせえ。
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