12 / 61
本編
ep07_side Gillialo 1
しおりを挟む
……。
…………?
あー……。
なるほど、いつの間にか寝ちまってたか。
体が重い。
なんか妙に気づかれしちまって、部屋戻って夜食くって、すぐに寝ちまったらしいが。……喉、渇いたな。水でも、飲むか。
なんて俺――ギリアロは、薄暗い部屋のなか体を起こそうとして気がついた。そういや、寝たときの記憶が定かじゃあないが、あの女がぴーぴー煩くて、風呂は……入った気がするが。…………うん?
「……」
ばっと両目を見開く。
薄暗い。まだ見慣れてない城の一角にある仮住まい。自分の荷物を取りに行く暇もなくて、問答無用で――要は宿のような感覚で使っているわけだが――布団、こんなに重かったか?
……いや。重い、……はずがねえよなあこの感触は。
嫌な予感がしてチラッと顔を横に向けて――――すぐ戻した。
心臓っ。
心臓に悪いことはたのむからやめてくれ、チセっ!!
なんで顔がこんなに近いんだ!? つか、愛し子さまの寝顔を間近で見ちまうだけで、こんなにも動揺するか? 俺も!
はーーー……。
いまだにまともに名前すら呼べない書面上の妻なわけだが、なんでこんなことになってんだ。
……つうのも、なんか、コイツ俺の胸の上に自分の腕乗っけてさ。……めちゃくちゃ、抱きついてきてるんだが。
マジかよ。陣地陣地うるさかったじゃねえかチクショー!
脚も巻きつけてんじゃねえ。俺は抱き枕じゃねえっ。
つか、さあ。
……。
…………いや?
考えるな俺。考えるな、考えるな、考えるな……えっ、でもこれ、巻きついてるの、まさかの素足じゃ、ねえ……?
つか、コイツ――チセのやつ、布団めくれて――ンッ!?
いやいやいや。
ヤメロヤメロヤメロ。
て、テメエ……何着てやがんだ!?
めくれた肩のところ、うっすい夜着が見えてんだが――それ、国に支給されたあのうっすいヤツじゃねえか!?
ん?
俺、ヤっちまったとか…… いやいやいや、ぜんぜんそんな記憶は……。
マズいぞ? 記憶が、トんでるが……アイツ、俺とならヤれるとかなんとか言ってなかったか?
ヴィリオの野郎に絡まれて、俺とヤったとか嘘ついたとかなんとか言ってたよな?
しかもそれを事実にしてもいいとかなんとか……。
え?
ヤった……?
いやいや、大丈夫だよな、俺。布団も。夜着も乱れてねえよな……?
ん? 俺、服着てる……? 着てるな。よし。大丈夫。よしっ!
はああああ。
落ち着いてきたところで、ようやく、少し記憶が戻りはじめる。
そうだった。意識朦朧としたまま風呂入って着替えて寝ちまったから、俺が自分用の夜着をきちまったわけだな。
で、残ってるのはコイツ用のヤベエやつだったから、素直にそれを着たって? ……着たのか。マジで。抵抗ねーのか、コイツ。なんて女だ恥じらいはねえのか異世界人……。
はああああ、ってため息をつきたくなったけど必死で我慢する。
いま、この状況で絶対コイツ起こしたくねえ。ぜったいめちゃくちゃからかってきやがるにちがいねえ。
こうやって女に巻きつかれて寝ることなんてとんと縁がねえもんでな。
コイツまったく自覚ねえみたいだが、めちゃくちゃ綺麗な顔してるし。あのうるさい口を開いてなければ、なおさら儚げな美人に見える。
俺とはだいぶ年が離れているみてえだが、俺だって男。
つか、若くて綺麗な嫁さん? ――ハハハ、本当に馬鹿げているが、書面上でも嫁さんになった女に抱きつかれて何も思わないわけではない。面倒だが。ああ、じつに面倒だが。
つまり。
ぐだぐだいいわけを連ねてみたがすなわち。
――――勃っていやがる。
クソ! 昨日はともかく、今日はヌいてねえからな……! まだまだ元気なんだ、ムスコが!
風呂入ったときは酒飲んで勃たなかったし。……酒に弱い自分が憎いっ。
いや、俺だって愛し子の婿っつう最高に面倒な立場は、早々に辞めさせていただきたいところなんだがな。
幼いときから晶精眼っつう面倒なモン授かっちまってたせいで、いろんな面倒ごとに巻き込まれて各地を転々としてきた。
だがまあ、かつての戦争が終わるころにはあの力は消えて――ようやく、この国に辿り着いて、少し落ち着いたんだ。
王ともエドアルド殿下とも気があったし、好きにさせてもらってるからな。
クソ。適当な地位をもらったせいで、なんだかんだエドアルド殿下にいいように使われているのも気がついていたが――今回のは完全に想定外だった。
俺ももういい歳だし、この世界にはそもそも女が少ない。30過ぎた男で嫁さんもらえるなんて、金持ちか権力者くらいだろ。
……まあ、俺も権力者の部類には入るようになっちまったし、元晶精眼の持ち主なせいで、そこそこ縁談は来る。
が、俺の場合、地位は地位でも飾りみてえなモンだしな。
そもそも独り身があってるって思ってたし、他人と同居するなんざまっぴらごめんだからな。
俺は俺の生活に、他人に介入されるのが大嫌いなんだ。
好きに生きさせてくれ――そう思うのによ。
はぁー……。
コイツ……チセのヤツは、ズカズカ俺の懐に踏み込んでくるし、ぜんっぜん遠慮する気もないらしいし、慎みはないし、ずーっとしゃべってるし、いちいち俺の反応で遊びたがるのによ……。
………………嫌じゃないんだよなあ……。
…………?
あー……。
なるほど、いつの間にか寝ちまってたか。
体が重い。
なんか妙に気づかれしちまって、部屋戻って夜食くって、すぐに寝ちまったらしいが。……喉、渇いたな。水でも、飲むか。
なんて俺――ギリアロは、薄暗い部屋のなか体を起こそうとして気がついた。そういや、寝たときの記憶が定かじゃあないが、あの女がぴーぴー煩くて、風呂は……入った気がするが。…………うん?
「……」
ばっと両目を見開く。
薄暗い。まだ見慣れてない城の一角にある仮住まい。自分の荷物を取りに行く暇もなくて、問答無用で――要は宿のような感覚で使っているわけだが――布団、こんなに重かったか?
……いや。重い、……はずがねえよなあこの感触は。
嫌な予感がしてチラッと顔を横に向けて――――すぐ戻した。
心臓っ。
心臓に悪いことはたのむからやめてくれ、チセっ!!
なんで顔がこんなに近いんだ!? つか、愛し子さまの寝顔を間近で見ちまうだけで、こんなにも動揺するか? 俺も!
はーーー……。
いまだにまともに名前すら呼べない書面上の妻なわけだが、なんでこんなことになってんだ。
……つうのも、なんか、コイツ俺の胸の上に自分の腕乗っけてさ。……めちゃくちゃ、抱きついてきてるんだが。
マジかよ。陣地陣地うるさかったじゃねえかチクショー!
脚も巻きつけてんじゃねえ。俺は抱き枕じゃねえっ。
つか、さあ。
……。
…………いや?
考えるな俺。考えるな、考えるな、考えるな……えっ、でもこれ、巻きついてるの、まさかの素足じゃ、ねえ……?
つか、コイツ――チセのやつ、布団めくれて――ンッ!?
いやいやいや。
ヤメロヤメロヤメロ。
て、テメエ……何着てやがんだ!?
めくれた肩のところ、うっすい夜着が見えてんだが――それ、国に支給されたあのうっすいヤツじゃねえか!?
ん?
俺、ヤっちまったとか…… いやいやいや、ぜんぜんそんな記憶は……。
マズいぞ? 記憶が、トんでるが……アイツ、俺とならヤれるとかなんとか言ってなかったか?
ヴィリオの野郎に絡まれて、俺とヤったとか嘘ついたとかなんとか言ってたよな?
しかもそれを事実にしてもいいとかなんとか……。
え?
ヤった……?
いやいや、大丈夫だよな、俺。布団も。夜着も乱れてねえよな……?
ん? 俺、服着てる……? 着てるな。よし。大丈夫。よしっ!
はああああ。
落ち着いてきたところで、ようやく、少し記憶が戻りはじめる。
そうだった。意識朦朧としたまま風呂入って着替えて寝ちまったから、俺が自分用の夜着をきちまったわけだな。
で、残ってるのはコイツ用のヤベエやつだったから、素直にそれを着たって? ……着たのか。マジで。抵抗ねーのか、コイツ。なんて女だ恥じらいはねえのか異世界人……。
はああああ、ってため息をつきたくなったけど必死で我慢する。
いま、この状況で絶対コイツ起こしたくねえ。ぜったいめちゃくちゃからかってきやがるにちがいねえ。
こうやって女に巻きつかれて寝ることなんてとんと縁がねえもんでな。
コイツまったく自覚ねえみたいだが、めちゃくちゃ綺麗な顔してるし。あのうるさい口を開いてなければ、なおさら儚げな美人に見える。
俺とはだいぶ年が離れているみてえだが、俺だって男。
つか、若くて綺麗な嫁さん? ――ハハハ、本当に馬鹿げているが、書面上でも嫁さんになった女に抱きつかれて何も思わないわけではない。面倒だが。ああ、じつに面倒だが。
つまり。
ぐだぐだいいわけを連ねてみたがすなわち。
――――勃っていやがる。
クソ! 昨日はともかく、今日はヌいてねえからな……! まだまだ元気なんだ、ムスコが!
風呂入ったときは酒飲んで勃たなかったし。……酒に弱い自分が憎いっ。
いや、俺だって愛し子の婿っつう最高に面倒な立場は、早々に辞めさせていただきたいところなんだがな。
幼いときから晶精眼っつう面倒なモン授かっちまってたせいで、いろんな面倒ごとに巻き込まれて各地を転々としてきた。
だがまあ、かつての戦争が終わるころにはあの力は消えて――ようやく、この国に辿り着いて、少し落ち着いたんだ。
王ともエドアルド殿下とも気があったし、好きにさせてもらってるからな。
クソ。適当な地位をもらったせいで、なんだかんだエドアルド殿下にいいように使われているのも気がついていたが――今回のは完全に想定外だった。
俺ももういい歳だし、この世界にはそもそも女が少ない。30過ぎた男で嫁さんもらえるなんて、金持ちか権力者くらいだろ。
……まあ、俺も権力者の部類には入るようになっちまったし、元晶精眼の持ち主なせいで、そこそこ縁談は来る。
が、俺の場合、地位は地位でも飾りみてえなモンだしな。
そもそも独り身があってるって思ってたし、他人と同居するなんざまっぴらごめんだからな。
俺は俺の生活に、他人に介入されるのが大嫌いなんだ。
好きに生きさせてくれ――そう思うのによ。
はぁー……。
コイツ……チセのヤツは、ズカズカ俺の懐に踏み込んでくるし、ぜんっぜん遠慮する気もないらしいし、慎みはないし、ずーっとしゃべってるし、いちいち俺の反応で遊びたがるのによ……。
………………嫌じゃないんだよなあ……。
応援ありがとうございます!
23
お気に入りに追加
1,137
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる