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本編

ep20_空とおなじ碧に包まれて。

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 ヴィリオってひとのウザ絡みがあったあと、もちろんあたしは、そのことをギリアロやエドアルド殿下にチクった。
 なんかふたりともめちゃくちゃ思いあたりあるみたいで、エドアルド殿下直々にティーガ家のほうに苦情入れてくれたっぽい。
 別に法律に咎められるようなことではないけど、ティーガ家的にはメンツ保つために、いろいろあったみたいだね。
 で、そのあと、ヴィリオってひとの顔はぜんぜん見てない。

 なんかティーガ家の方でごちゃごちゃあったっぽくって、勘当? とまではいかないけど、謹慎みたいな状態になってるとか? あたしもいうほど興味はないんだけど。
 この世界、長男さん以外にはけっこうキビシーところある側面はあたしも知ってて、かわいそうだなーって思うけど。でもまあ、あたしも怒ってるし。
 だから擁護とかはしないよ。てか、関わらなくていいって言われたので、関わりません!

 ま、そんなつまんない話題は置いておいて。
 それよりも、だよね。

 めっちゃくちゃ準備頑張って――とうとう、あたしとギリアロのウエディングの日になったの!



「はぁー……ギリアロ、かっこいい……ギリアロかっこいいよ……」
「わ、わかったから。お前さん、朝からそれしか言ってなくねえか?」
「そればっか思ってるからトーゼン」
「そうかよ……」

 ん? なんでうんざりするような顔してるのかな?

 でもさ。さっきまで国王陛下の祝福を受けてたの。
 だからめっちゃくちゃ緊張して。いま、謁見の間から出てきてようやく緊張がとけたからね。饒舌になってるってのはあるかも。

 あ、そうそう。今さらだけどさ、国王陛下はわりと年いってたんだよね。びっくりした。
 エドアルド殿下が多分30手前とかかなーって思ってたし、この世界の女のひと、みんなけっこー若くお子さん生んでるっぽいからさ。国王陛下も逆算すると50くらいかなって思ってた。けどもうちょっと上だったっぽい。

 お仕事自体は国の最高責任者って位置づけではあるけれど、主な実務はほとんどエドアルド殿下にうつってるっぽいね。あたしのことも殿下が面倒見てくれてるし。
 そんなわけで、陛下に会うことなんてなかったわけだけど、ようやくってかんじ。しかも、めちゃくちゃ改まった儀式なわけじゃん?

 はーーー。
 聞いて???
 陛下に『チセ・ラ・ノウト』って言われたよ……!
 ノウト夫人! ですよ、ノウト夫人!!
 はーーー、ちょっと感動。マジでギリアロの奥さんになったっぽい。めちゃくちゃ実感出てきた。


「ほら、チセ。ぼーっとしてねえで。転ぶぞ」
「! ごめんごめん、ありがと」

 って、さっきの儀式のこと思いだしてたら、意識トんでたわ。
 ギリアロに手を差し出されて、あたしはそれに応えるように、彼の手を握る。
 今日は手袋着用ですね。ごつごつしたお手々も好きですが、白の手袋もかっこいい。

 今日のギリアロは軍服、もちろん儀式用の正装なんだ。濃いグレーの生地に、サッシュベルト。左胸にはじゃらじゃら勲章がぶら下がってるし、落ち着いた金色の飾緒や肩章がめちゃくちゃ映える。
 ブーツがカツカツ鳴る音すらも格好良くて、何度見てもシビれるんだけど。

 一方のあたしはもちろんウエディングドレス。
 っていっても、形はやっぱり元の世界とはかなりちがう。
 あっ、定番カラーが白ってのは同じだったんだけどね。その理由は、空色に映えるから、なんだって。なるほど……。

 元とはいえ世界一の戦闘機乗りのギリアロの妻だったら、モチロン白で決まりっしょ。
 やっぱりミリタリーロリータというか、女性用の軍服って感じのデザインだった。
 あたしいつの間にか階級ももらってたっぽくて、飾緒も肩章もばっちりついてる!
 愛し子を示す勲章も揺れてるし、肌もばっちり隠れてる。
 ただ、やっぱりドレスだからね? 派手さも必要ってことで、スカートはフリルたっぷりのミモレ丈。ただ、うしろっかわにレースがついてて、それが足もとまであるかんじ。へへへ、ベールのかわりみたいでカワイイよ?

 あとは太ももまでの白い革のロングブーツ。
 サイハイ丈ははじめて履くから、ちょっと慣れない。
 紐でぎゅうぎゅうに締められてて歩きにくいけど、そのあたりはやっぱり儀式用って感じだよね。
 どうせパレードでも立ちっぱなしみたいだし、何よりもカワイイは正義だからモチロンオッケー。

 あたしがこの世界に来てもうかなりたつけど、季節は相変わらず秋の終わり……というより、春のはじめくらいの気候。
 夜は暖房あるとうれしい感じだけど、冬自体がそんなに寒くなく穏やかにすぎてさ。空気がめちゃくちゃ澄んでいるから、青空がとってもキレー。
 よく晴れた日のウエディングとか、最高じゃない?


 そんなわけで、今日はこのあと、市街地をパレードするの。
 ギリアロの戦闘機ヒコーキは、彼の希望通り特に飾ったりはしてない。そのままの、灰の死神の姿。
 敵にとっては恐ろしい機体らしいけど、味方になったら最強に心強いじゃん? だから、きっと受け入れてもらえると思うんだよね。

 で、まるで自動車代わりみたいにその戦闘機でパレードして、そのあとはギリアロのフライト!
 あの操縦席、ふたり乗るのでギリだけど、あたしドレスじゃん? かさばるじゃん?
 さすがに邪魔だし危ないから、あたしは地上で見守るつもり。のかわりに、ギリアロってば、アクロバティックな飛行見せてくれるって……!

 もー! ギリアロってば……そういうところだって! やっぱ能力隠してた……!
 もともとダメ元で聞いてみたけどさ。ギリアロってばやっぱり、アクロバティック飛行もお手の物だったんだよね!
 で、ついでに、煙とか出してヒコーキ雲つくれない??? って相談したら、乗り気になってくれてさ。めっちゃくちゃ楽しそうに愛機に装置つけてたし。
 もーっ! ノリノリじゃん! ほんっと戦闘機の改造大好きだね?

 でも、ヒコーキ雲つくって飛ぶアクロバティック飛行とか、テンションアガるでしょ?
 ギリアロの本気技術がどのレベルかわかんないけど、勝手に、めちゃくちゃスゴいんだろうなって思ってるし。
 ギリアロのことみんなに知ってもらって、あたしの旦那さんって自慢するの。
 もちろんあたしも、ギリアロのかっこいいとこ見るの超楽しみ!


 そんなわけで、まずは車で城の門のところに移動する。
 やー……ギリアロの愛機狭いからね。
 パレードはめちゃくちゃスロースピードで立った状態で行うつもりだから、街に出るギリギリまでは車移動。

 でもでも、いよいよ門の手前。
 なんだか門を開ける前から、めっちゃくちゃいろんなひとの声が届いてくる。みんなすっごく待ってくれてるんだってドキドキしながら、あたしはギリアロの操縦してたギリアロの愛機の方へ移動して――、

「気をつけろよ、チセ」
「うん」

 ギリアロが手を伸ばしてくれた。

 なんとか操縦席のところに立つと、横から腕が伸びてくる。
 ギリアロがあたしの腰に腕をまわして、ぎゅって抱き寄せてくれた。

「ったく、地上走行にはあまり向いてないから揺れるぞ? 危なくなったら、俺によっかかれよ?」
「うん!」

 なんて。
 テスト走行で乗ったから、けっこう安定してるの知ってるし、大丈夫なんだけど。

「ふふふ……」
「な、なんだよ、その目は……」
「ギリアロ、かっこいいなって」
「……まだ言ってるのかよ……」

 あきれられた。
 でもいいじゃん。事実だし。
 で、せっかくだし、めちゃくちゃギリアロの方に寄っかかっちゃう。
 運転は自動にするんでしょ? だったら、あたしのほうに集中してもらっちゃお。

「まあ――そうだな。ええと」
「?」
「お前さんも、綺麗だよ」

 ……。
 …………。

 急にそういう不意打ちするの、ずるいと思います……。
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