【R18】処刑されるはずが、目覚めたら敵国王子の推し活包囲網にとらわれていました

浅岸 久

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目覚めは、敵国王子の腕の中で(4)

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「え?」

 思いがけない言葉すぎて、すぐに頭に入ってこなかった。

 いや。
 だって。
 彼はなんと言った?

(きさ、き……?)

 馬鹿みたいに口を開けたままアーシュアルトを見つめ返すも、彼は険しい顔をさらに厳しくするばかり。
 ただ、次の瞬間。彼の影で視界が暗くなったかと思えば、唇に熱いモノが落ちてくる。

「んん……っ!?」

 ガブリと噛みつくように唇を塞がれた。
 驚きで唇を閉ざすよりも、彼が舌をねじ込む方が早かった。歯列をなぞって嬲るように舌を絡められる。

 まさに、蹂躙するという言葉がぴったりだった。息つぎをする暇もないほどにピッタリと唇を合わせたまま、彼の厚い舌が縦横無尽に暴れまわる。

「んっ、んんっ、ン――っ!!」

 息苦しくてバンバンと彼の胸を叩いたけれども、アーシュアルトの鍛えられた身体はビクともしなかった。
 むしろ抵抗する私に仕置きをせんとばかりに、ますます強く唇を吸われる。
 角度を変えたわずかな隙に息を吸おうとして、口を開く。すると溜まっていた唾液がドロリとこぼれ落ち、頬を汚していった。
 呼吸することすらできず、涙目になる。酸素が足りなくて頭がぼーっとしそうになったところで、ようやく僅かに唇が離れた。

「っ、こんな。……私、はじめて、なのに」
「奇遇だな」

 アーシュアルトは感情の読めない黒玉こくぎょくでこちらを睨みつけつつ、言葉を紡ぐ。

「俺もだ」
「は?」

 ぽかんと口を開けるのも束の間、すぐに再び唇を奪われる。
 頭がまったく回らない。
 なぜ? どうして? と疑問が浮かぶものの、それ以上の思考ができなくなっている。
 蹂躙という言葉が相応しいほどに、口腔内を隅々まで犯され、息も絶え絶えになった。

「アーシュアルト殿下、これは……」
「アーシュだ」
「なにを」

 言っているのか。目をまん丸にする私に対し、彼はごく真剣に言ってのけた。

「君の夫となる男だ。アーシュと呼べ」

 夫。そして妃。

(え? いや。いやいやいやいやいやいや……)

 待て待て待てと、首を横に振る。
 だって、私は敵国の、しかも平民出身の末端王女で。しかも、今や祖国にも切り捨てられ、娶ったところで意味なんてない。
 しかもこの首。自爆の首輪が嵌められているのだ。いつこれが発動するのかすらわからないのに、留め置く理由なんてない。
 むしろこの首輪が発動する前に殺してしまった方が無難なくらいなのに。いや、殺されたら私が困るのだけれども。それでも。

「待ってください! 意味が、よく」

 頭がまともに働かなくて躊躇していると、アーシュアルトの表情はますます険しくなった。かと思えば、ガッと顔を寄せ、額をくっつけてくる。

「危ないです! これ、自爆の首輪――」
「大事ない」
「いや、そんなわけな……あんっ」

 彼の大きな手がするすると下へ這っていく。やがて、しゅるりとネグリジェのリボンを解かれるも、すぐに反応できるはずもない。

 前をリボンで結ばれただけの脱がしやすいそれは、あっという間に剥がされてしまった。

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