【R18】処刑されるはずが、目覚めたら敵国王子の推し活包囲網にとらわれていました

浅岸 久

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目覚めは、敵国王子の腕の中で(5)*

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 部屋の中は温かくしてあったけれども、心許ない気持ちになって、宙を搔く。

 一方のアーシュアルトは私の胸に直接触れた。
 自分で言うのもなんだけど、そう褒められた大きさではない。気恥ずかしくて逃げようとするも、ガッチリと覆いかぶさられ、身体が固定されてしまえばままならない。
 指の腹で頂きを撫でられると、恐怖で背筋がゾクゾクと粟立つ。乳首を摘まれた刺激に、無意識に身体が仰け反った。

「ずいぶんと痩せているな」
「それは……っ」

 仕方がないことだと思う。
 だって、一応王女という地位ではあったけれど、後ろ盾は全くない。むしろ煙たがられていた私は、正直、慎ましい生活しかさせてもらえなかった。むしろ、他の兄姉たちに目をつけられないように、贅沢をしないようにしていたというのもある。
 アーシュアルトが力を込めたら、簡単に折れてしまいそうで怖い。

 私がビクッと震えると、アーシュアルトは不機嫌そうにギュッと眉根を寄せた。
 これから彼が何をしようとしているのか、わからないはずもない。名実ともに、妃にしようとしているらしい。つまり、強引に処女を奪おうとしているわけだ。

 イオネル王家が私を養子にして取りこもうとしたのと同じ。この赤の祝福が欲しいってことかもしれないが。

(ここまでする……!?)

 この先に待っているのは、おそらく性行為だ。
 私はいい。どうせ、死ぬはずだった身だ。それを助けたアーシュアルトがどうしようと、抗えるものではない。でも。

(こんなの、アーシュアルト殿下は望んでない、よね……!?)

 目的のために望まぬ行為をしようとしているのだ。
 今だって、脱がせてみたら肉付きの悪い魅力のない女だったから、がっかりしたのだろう。

「殿下、いい、です。そんな、無理に――」

 しなくても、いい。
 正直、殺されかけた身だ。イッジレリア国のことなど、知ったことではない。
 私はあの国に捨てられたのだ。だから、ノルヴェン王国が私を取りこもうとするのに抵抗するつもりはない。

 これでも人生21年、長いものには巻かれろの事なかれ主義でやって来たのだ。
 その長いものがイッジレリアからノルヴェンに変わったところで問題がないというか、むしろイッジレリアなんてこっちからお断りというか、とにかく、こうなった以上ノルヴェン側に鞍替えする心づもりはあります!と言いたいのに……っ!

「こんなことしなくても、あ、や……っ」

 抱く必要なんてない。
 そう伝えたいのに、言葉を紡ぎきる前に唇を塞がれる。
 彼は険しい表情のまま、その手を止めることもない。ネグリジェを全て剥ぎ取ると、私の小ぶりな胸を揉み拉いた。

「あっ、んぅ……や」

 申し訳なさに、泣きたくなる。
 感じたくないのに、身体の芯に熱が灯りはじめたのがわかった。

 アーシュアルトの唇が徐々に下へと移動していく。首にも、胸にも、彼は力いっぱい吸いつき、印を残していった。

「あ、まっ、こんな……殿下っ」

 痕をつけるなど、何の意味もないはず。なのに、どうして?という思いが強くなる。
 居たたまれなくてイヤイヤと首を振るけれど、彼が動きを止めてくれることはなかった。
 いつの間にか彼の頭が、私の腰の辺りにある。

(え、まさか、これって)

 もしかして、という気持ちが膨らむも、どうしようもなかった。次の瞬間には腿を両手でガッチリと押さえ込まれていたから。そして、股を開くように持ち上げられ、ぞくっとする。
 ひんやりとした空気が秘所に触れたのも束の間、ぬめりを帯びた生温かいなにかがそこに押し当てられた。

「っ、待って! だめ……っ」

 主張なんて、無駄だった。
 先ほどまで私の身体の至るところに押し当てられていた唇が、いよいよ私の下の口を喰んだから。

「――――ッ!?」

 にゅる、と生温かい舌が花芽を舐めとったかと思うと、ナカに差し込まれる。ベロリと入口付近を往復し、わざと音を出しながら吸い始めた。

(あっ、これ、ヤバ……っ)

 さっきまでのキスの感触とはまるで違う。
 直接的な刺激に、つい私の腰が逃げようとした。けれどもガッチリと掴まれて、容赦なく吸い上げられてしまう。下半身から一気に快楽が駆け上がり、身体がぶるぶると震えた。

「あ、ぁ……っ!」

 快感とともに魔力がブワッとこみ上げてくる。
 あ、駄目だ、と思う。
 この感覚、絶対に駄目。だって、今の私は自爆の首輪を嵌めているのだ。自爆の首輪は、嵌められた者の魔力に反応する仕組みになっているはず。
 つまり、うっかり私が魔力を放出しちゃったが最後、大爆発を引き起こすはず。

(まずい……っ)

 このままでは、アーシュアルトもろともあの世行きだ。
 いや、被害が私とアーシュアルトだけで済んだら御の字。私の魔力が根こそぎ注がれたら、この建物自体を破壊してしまってもおかしくない。

「やぁん…………殿下、殿下ぁっ。やめ」
「アーシュだ」
「っ、殿下……首輪が……っ!」

 嘘でしょ、と思う。
 アーシュアルトは私の首輪が何なのかわかっていないのだろうか。

(ううん、殿下は優秀な王族。知らないはずがないのに!)

 自分はいい。もう死んだような身だから。でも、絶対にアーシュアルトを巻き込みたくない。
 快楽から逃げようと身体を強張らせるものの、下ではアーシュアルトが容赦ない愛撫を続けてきて、いよいよ御しきれなくなった。

「駄目です。魔力が、首輪に反応して……このままじゃ、爆発……っ」
「気にするな」
「しますっ!」

 どうして冷静でいられるのか。イヤイヤと首を横に振るも、彼は止まるつもりはないらしい。
 口で愛されるのと同時に指で花芽を摘まれると、今まで我慢していたモノが一気に決壊した。

「ああああ――――っ!」

 ぶわあっ、と、身体の奥から一気に魔力が吹き出す。
 首輪の作用か、強引に魔力を外に放出させられる。押さえ込んでいた努力も虚しく、制御できないほどのそれが噴き出した。

(駄目――――!)

 どれだけ止めようと踏ん張っても、首輪を媒体にズルズルと引き出されていく赤の祝福。どうしようもなく、絶望が意識を塗りつぶしていく。

 でも、せめて。
 アーシュアルトだけでも助かってくれたら。
 そんな一縷の望みをかけて、私は彼を突き放そうとした。
 でも、彼にガッチリ腰を掴まれてしまっては、離れることなど敵わない。
 魔力と共に快楽が駆け巡り、ぐるんと胎内をひと巡り。もうだめだ――と身体を強張らせる。



 でも。
 私が恐れているような事態にはならなかった。
 ふわりと身体が軽くなって、私は目を見開く。

(あれ……?)

 おかしい。
 どういうことだかちっともわからない。
 でも、放出されたはずの私の魔力が綺麗さっぱり消えてしまった。

「アーシュアルト、殿下……?」

 どういう理屈なのかはわからない。
 でも、放たれた私の魔力は、全部丸っとどこかに霧散してしまったらしい。
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