【R18】処刑されるはずが、目覚めたら敵国王子の推し活包囲網にとらわれていました

浅岸 久

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ギヴァリオとの面会(3)

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 ギヴァリオは挨拶だけして帰っていった。
 彼に魔法攻撃をされていたことをあとで知ったアーシュは、これでもかと言うほど激怒した。
 それこそ、今からでもリュカス領に攻めこむのでは、というくらいの勢いで。

 どうどうどう、と宥めるのは私の役目である。

「とりあえず、ギヴァリオとあなたの相性がよくないことはよくわかったわ」

 寝室のベッドを占拠しながら、私はぽつりと呟く。
 眠るには全然早い時間だけれど、私の体調を心配したアーシュによって、早々にベッドに連行されていた。

「怖いものなしって言うか。魔法をかけていたこと、あとで私がアーシュに告げ口したところで、痛くも痒くもなさそうだものね」

 物的証拠は残らないし、ギヴァリオとアーシュの仲が悪いことなど今さらだ。これ以上好感度の下がりようもない。
 あくまで私の力を量るため、嫌がらせも兼ねて手を出してきたというわけだ。

(まあでも、早い内に顔を出してくれて助かったというか、私たちも計画を立てやすいわよね)

 うーんと私は考える。

「ライラ、今日はもう無理はするな。あとは俺に任せて君は休んでくれ」
「あ、ええ。そうね。でも、その前に明日からの計画だけ立てておきたいわ」
「いや、だから……」

 戸惑うアーシュをよそに、私はユスファに地図を持ってきてもらうよう声をかける。
 戸惑いながらもユスファが地図を用意し、前と同じようにベッドの上に広げた。

「辺境領で〈命脈〉に干渉できるのは、この領城だけじゃないわよね?」

 この領地はかなり広大だ。海こそないが、大きな川が流れており、資源は豊富。
 イッジレリアとも距離が近いため、本来ならば〈火脈〉のバランスも整いやすく、肥沃な大地が広がっていた。

「3箇所だ。この領都の他に、このアストラダ山脈の麓と――ここの街」

 領地の西側と、北側2箇所。北の街は馬車で1日、西の山脈へは2日ほど走れば着くだろうか。

「一度それぞれの〈命脈〉の様子も見に行きたいわね。私の魔力の回復が、だいたい4日だと計算して――先に北の街の方かしら。だったら明後日に領都を出ればいいから、それまではこの街で出来ることをするとして」
「おい、ライラ」
「本格的にあなたの妃として役割を果たすとなったら、早めに妃教育もして貰ったほうがいいわよね。基本的なマナーは押さえているつもりだけど、この4年でノルヴェンの貴族の勢力図がどう変わったのかは頭に入れておきたいし。あとはこの領地に関することも学びたいわ。〈火脈〉を整えるに伴って、環境が変わるのだもの。産業だって色々変化があるから、根回しも必要ね」
「ライラ、ライラ」
「あなたが私を他の貴族に取られることを危惧するのだとすれば、早めに引きずり下ろされないだけの準備が必要よね。とりあえず、味方になってくれそうな貴族に根回ししましょう。国王陛下はもちろんだけど――メリル、あなたリーヴェンス家から出てきたって言ってたけど、今も連絡は取りあっている? 優先的に〈火脈〉を調整するから、アーシュの後ろ盾になってくれそうだったらいいんだけど」
「――ライラ!」

 と、そこでグイッと肩が掴まれた。
 視界がアーシュでいっぱいになり、私は目を丸くする。

「わかった。君がやりたいことが色々あるのはわかったが、具体的な計画は明日からにしよう。それから、地方の〈命脈〉は俺の配下の神子に確認させるから、君がわざわざ赴く必要はない」
「え、でも」
「いずれは頼むかもしれないが、今は君の体調優先だ。いいな?」

 ギロッと睨まれ、その凄みに私は身を引いた。
 ――でも、よく見ると目元や耳朶が赤いような気もしないでもないけれども、あ、はい。早く寝ろ。目がそう訴えてるね。

 はぁい、としょんぼり返事をしながら、私は身体を横たわらせる。
 このベッドは本当にふかふかで、疲労もあるからか、目を閉じたらすぐに眠れそうだ。

「あ! 夕食はちゃんと食べるから、魔力回復優先で魔力保有量が多い食材を中心に食べやすい物を――」
「わかってる。わかっているから、ライラ」
「あー、はい。オヤスミナサイ」

 これ以上喋るな、早く寝ろ、の目で見られている。
 ユスファもサッと地図を隠してしまったし、これ以上話し合いも出来そうにない。

「そういうことなら、私は休んで魔力回復に努めるね。明日からもちゃんと働くからよろしく。おやすみなさい」

 キリッと気持ちを切り替え、目を閉じることにした。
 そうしたら案の定、身体の方は限界だったらしい。まもなく、深い眠りに落ちて行ってしまった。

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