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魔王になるまでの過程
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〇〇××日
わたしは恐らく、3代目魔王と同じ末路を辿るかも知れない。
なので、魔王を討伐した翌日からこの日記をつける事にする。
わたしを倒す者の助けてなれば幸いだ。
魔王を倒して10日経つが今のところ目立った変化はない。
今のところ穏やかな平穏を過ごしている。
街では魔王に破壊された街の復興が始まっている。
わたしもできれば手伝いたいが国王陛下は万が一の事を考えてわたしを軟禁している。
もどかしいがその判断は正しい。
3代目魔王も2代目を討伐した直後に次代の魔王になる可能性があるとして軟禁されていたと言う。
更に聴いた話では3代目は“理の魔眼”で2代目魔王には何かしらの呪いがかけられている事を見抜いたらしい。
これはある種の支配系の呪いらしく3代目は戦闘中に解除しようと試みたらしいが失敗したと3代目のパートナーだったわたしの師匠が言っていた。
もしかすると、わたしにもその呪いがかかっているかも知れない。
恐らく、即効性はなく遅効性なのだろう。
今のところ異変はないがわたしが気づかないレベルでじわじわと侵食している可能性もある。
ただ、もしかすると呪いにかかっていない可能性もある。
歴代の魔王討伐者の記録を整理すると彼らは至近距離で魔王を討伐している。
対してわたしは弓の射程ギリギリくらいの遠距離から魔王をその肉体と共に葬った。
仮のこの呪いが至近距離でしか効果がないモノならわたしは呪いにかかっていない事になるが……それを確かめる術がない。
あぁ、もどかしい。
それが分かるまで50年はかかるのだ。
長い……長すぎる。
気が遠くなりそうだ。
できる事なら早く判明して欲しい。
わたしが将来大切な者達の命を奪うのではないか?と言うこの焦燥感と不安から解放されたい。
◇◇◇
そこから日記は5年くらい平穏な軟禁生活を描いていた。
しかし、5年目にして変化があった。
◇◇◇
〇〇××日
最近、妙な夢を見る。
内容は同じ夢ばかりだ。
使命を果たせ……とか、奴を殺せ……殺す為にももっと力をもっと闘争を……もっと力を……。
暗闇の中で無数の手が自分をからめとりまるで怨念のように纏わりつく。
こう言うのを強迫観念と言うのかも知れない。
何故か、最近意味もなく杖を無意識に取りまるで戦いにでも出るように外に足を運ぼうとしている。
見張りの兵士に呼び止められるまでそれに気づかない。
これが魔王の呪いなのか?それとも軟禁生活が長く続いて心が病んでいるのだろうか?
後者だと自分では思いたい。
そうあって欲しい。
そうでなければ困るのだ。
◇◇◇
それからこの夢の話が更に5年ほど続き、無意識に外で出ようとする回数が増えていた。
しかし、本格的な変化が起きたのは更に15年後であり魔王討伐から20年の月日が流れたところだった。
◇◇◇
〇〇××日
あぁ……最近、わた……我は可笑しくなった気がする。
獣の疼きが止まらぬ……もっと力を……もっと闘争を……あの悪魔とその眷属達を皆殺しにする力……を
◇◇◇
ここからは半ば殴り書きになっており文字を読み取る事ができず、数日間日記が書かれない事も多くなった。
この頃になると日記を1年ごとにしかつけなくなっていた。
◇◇◇
〇×日
力……力、力、力……日記をつける間すら惜しいわ。
そんな事をしている暇なんぞあるか!
力だ!圧倒的な力!因果すら!運命すらも凌駕する力!その為にはもっと必要だ!もっと、魔力が必要だ!あの悪魔どもに復讐しないとならない。
あの眷属達を皆殺しにせねばならない!
必ず見つけ出してやる。
いつか、世界の壁を超えて奴らを!奴らを殺し尽くしてやる!
◇◇◇
そこから一気に50年後に飛んで日付は4代目魔王が誕生した日となった。
◇◇◇
また、ここから始めるのだ。
必ず、ルインとアシュリーの仇を……
そこで日記は終わった。
◇◇◇
「これはまるで復讐鬼の日記ですね」
そのような小説を昔、読んだ事がある。
この日記の方が簡潔な一人称で生々しくリアルに書かれている印象がある。
「差し詰め、妻子の仇かそれに類する仇討ですかね……それも初代の……」
書庫を調べる中でどの本だったか初代魔王には妻子がおり、2人は妻が子供を体内に宿した状態で謎の疫病にかかったと言われている。
それも体が黒い石のようになって死んだと言う。
そこでシュウはこの事象に思い当たる節があった。
「黒曜病ですかね……」
何となく察していたが今までの情報を累積すると確信に近いモノがあった。
ギデオンクラスターのデータベースには異世界での黒曜病発症事例もありそこには邪神によって齎されたと記されていた。
そのデータから累積するとある予想が立つ。
まず、初代魔王 タダーノンは妻子がいた。
だが、その妻子は黒曜病……つまり、量子ウイルスに感染し死亡した。
それには邪神が関与しており、初代魔王が記した“悪魔”とは“邪神”の事ではないかと推測される。
何らかの理由で“邪神”の存在を知った魔王は復讐を誓う。
しかし、邪神を強大であり容易に復讐できない。
そこで自らが率いるゴーレムを使って世界大戦を起こし世界の魔力を満たし、自らの糧にしようと目論む。
だが、その目論見は2代目に阻止される。
そこからの展開は初代が意図したのかそれとも偶発だったのか初代の意志は呪いの類となり2代目を乗っ取り支配した。
完全な支配までにはおおよそ。50年かかると推定される。
そこから3代目、4代目と討伐されたが初代の呪いは討伐した者に距離など関係なく伝播し意識を乗っ取りその力を自らのモノとして着実に力をつけている。
恐らく、そんなカラクリなのだと考えられた。
「だとすると……攻略法は1つしかありませんね」
魔王がどんな想いを抱いているのか知らないがこのままではNOの世界以外の世界も巻き込むかも知れない。
魔王を倒し、魔王の呪いの怨嗟を絶つにはこの方法以外なかった。
「どんな戦闘になったとしても最後はわたしの手で魔王の心臓を抉らねばなりませんね」
シュウはそっと日記を閉じ元の場所に戻した。
わたしは恐らく、3代目魔王と同じ末路を辿るかも知れない。
なので、魔王を討伐した翌日からこの日記をつける事にする。
わたしを倒す者の助けてなれば幸いだ。
魔王を倒して10日経つが今のところ目立った変化はない。
今のところ穏やかな平穏を過ごしている。
街では魔王に破壊された街の復興が始まっている。
わたしもできれば手伝いたいが国王陛下は万が一の事を考えてわたしを軟禁している。
もどかしいがその判断は正しい。
3代目魔王も2代目を討伐した直後に次代の魔王になる可能性があるとして軟禁されていたと言う。
更に聴いた話では3代目は“理の魔眼”で2代目魔王には何かしらの呪いがかけられている事を見抜いたらしい。
これはある種の支配系の呪いらしく3代目は戦闘中に解除しようと試みたらしいが失敗したと3代目のパートナーだったわたしの師匠が言っていた。
もしかすると、わたしにもその呪いがかかっているかも知れない。
恐らく、即効性はなく遅効性なのだろう。
今のところ異変はないがわたしが気づかないレベルでじわじわと侵食している可能性もある。
ただ、もしかすると呪いにかかっていない可能性もある。
歴代の魔王討伐者の記録を整理すると彼らは至近距離で魔王を討伐している。
対してわたしは弓の射程ギリギリくらいの遠距離から魔王をその肉体と共に葬った。
仮のこの呪いが至近距離でしか効果がないモノならわたしは呪いにかかっていない事になるが……それを確かめる術がない。
あぁ、もどかしい。
それが分かるまで50年はかかるのだ。
長い……長すぎる。
気が遠くなりそうだ。
できる事なら早く判明して欲しい。
わたしが将来大切な者達の命を奪うのではないか?と言うこの焦燥感と不安から解放されたい。
◇◇◇
そこから日記は5年くらい平穏な軟禁生活を描いていた。
しかし、5年目にして変化があった。
◇◇◇
〇〇××日
最近、妙な夢を見る。
内容は同じ夢ばかりだ。
使命を果たせ……とか、奴を殺せ……殺す為にももっと力をもっと闘争を……もっと力を……。
暗闇の中で無数の手が自分をからめとりまるで怨念のように纏わりつく。
こう言うのを強迫観念と言うのかも知れない。
何故か、最近意味もなく杖を無意識に取りまるで戦いにでも出るように外に足を運ぼうとしている。
見張りの兵士に呼び止められるまでそれに気づかない。
これが魔王の呪いなのか?それとも軟禁生活が長く続いて心が病んでいるのだろうか?
後者だと自分では思いたい。
そうあって欲しい。
そうでなければ困るのだ。
◇◇◇
それからこの夢の話が更に5年ほど続き、無意識に外で出ようとする回数が増えていた。
しかし、本格的な変化が起きたのは更に15年後であり魔王討伐から20年の月日が流れたところだった。
◇◇◇
〇〇××日
あぁ……最近、わた……我は可笑しくなった気がする。
獣の疼きが止まらぬ……もっと力を……もっと闘争を……あの悪魔とその眷属達を皆殺しにする力……を
◇◇◇
ここからは半ば殴り書きになっており文字を読み取る事ができず、数日間日記が書かれない事も多くなった。
この頃になると日記を1年ごとにしかつけなくなっていた。
◇◇◇
〇×日
力……力、力、力……日記をつける間すら惜しいわ。
そんな事をしている暇なんぞあるか!
力だ!圧倒的な力!因果すら!運命すらも凌駕する力!その為にはもっと必要だ!もっと、魔力が必要だ!あの悪魔どもに復讐しないとならない。
あの眷属達を皆殺しにせねばならない!
必ず見つけ出してやる。
いつか、世界の壁を超えて奴らを!奴らを殺し尽くしてやる!
◇◇◇
そこから一気に50年後に飛んで日付は4代目魔王が誕生した日となった。
◇◇◇
また、ここから始めるのだ。
必ず、ルインとアシュリーの仇を……
そこで日記は終わった。
◇◇◇
「これはまるで復讐鬼の日記ですね」
そのような小説を昔、読んだ事がある。
この日記の方が簡潔な一人称で生々しくリアルに書かれている印象がある。
「差し詰め、妻子の仇かそれに類する仇討ですかね……それも初代の……」
書庫を調べる中でどの本だったか初代魔王には妻子がおり、2人は妻が子供を体内に宿した状態で謎の疫病にかかったと言われている。
それも体が黒い石のようになって死んだと言う。
そこでシュウはこの事象に思い当たる節があった。
「黒曜病ですかね……」
何となく察していたが今までの情報を累積すると確信に近いモノがあった。
ギデオンクラスターのデータベースには異世界での黒曜病発症事例もありそこには邪神によって齎されたと記されていた。
そのデータから累積するとある予想が立つ。
まず、初代魔王 タダーノンは妻子がいた。
だが、その妻子は黒曜病……つまり、量子ウイルスに感染し死亡した。
それには邪神が関与しており、初代魔王が記した“悪魔”とは“邪神”の事ではないかと推測される。
何らかの理由で“邪神”の存在を知った魔王は復讐を誓う。
しかし、邪神を強大であり容易に復讐できない。
そこで自らが率いるゴーレムを使って世界大戦を起こし世界の魔力を満たし、自らの糧にしようと目論む。
だが、その目論見は2代目に阻止される。
そこからの展開は初代が意図したのかそれとも偶発だったのか初代の意志は呪いの類となり2代目を乗っ取り支配した。
完全な支配までにはおおよそ。50年かかると推定される。
そこから3代目、4代目と討伐されたが初代の呪いは討伐した者に距離など関係なく伝播し意識を乗っ取りその力を自らのモノとして着実に力をつけている。
恐らく、そんなカラクリなのだと考えられた。
「だとすると……攻略法は1つしかありませんね」
魔王がどんな想いを抱いているのか知らないがこのままではNOの世界以外の世界も巻き込むかも知れない。
魔王を倒し、魔王の呪いの怨嗟を絶つにはこの方法以外なかった。
「どんな戦闘になったとしても最後はわたしの手で魔王の心臓を抉らねばなりませんね」
シュウはそっと日記を閉じ元の場所に戻した。
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