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緊急イベント 終焉の女神討伐
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その日は偶々、シュウに予定がありそれに同行する形でリリーシャとアイカの模擬戦が延期され、ブレイバーへの遠出だった事もありギルドを仲間に預け、1ヶ月ほどゴスペルを無視したまさにそんな時だった。
突如、大地を揺らす程の地響きが鳴った。
「じ、地震か!」
「馬鹿な……予報もなくいきなり地震があるはずが……」
現代人であるシュウだから分かる。
この世界でも地震は存在し予報も確かに存在する。
しかし、妙だったのはブレイバーは大陸全土に渡って、地震を起こすような断層は少ないので殆ど地震は起きない事だ。
起きるのはハリケーンくらいだ。
だが、近くには地震観測所もあり端末に警報が発令されるようになっている。
本来、ここでは起きない地震が警報無しで起きた。
これだけでも異常と言えるだろう。
「とりあえず、窓から距離を……ッ!」
突然、シュウの頭に鈍痛が奔った。
シュウも呻き声をあげながらその場に蹲る。
「シュウ!大丈夫か!シュウ!」
リリーシャの声が遠のきそうになりながらシュウはゴスペルの方角から感じる静謐でどこか禍々しいさすら感じる馴染みの神力を感じていた。
(これは……アイカの神力?しかし、何ですかこれは……この膨大な力は!)
静謐な気配は遥か遠方からでもその存在を神力感知で感知できるほど強大なアイカの力だった。
だが、その力と対を為すようなオドロオドロしい力がゴスペルの方角から重くヒシヒシと伝わる。
まるで脳みそに紙やすりを当てて、それを重い石の荷重を使って擦るような痛みだ。
「シュウ!シュウ!」
「だ、大丈夫です……」
シュウは歯を軋ませながら立ち上がった。
正直、頭痛が酷いが感知する神力の感度を下げれば対応できる範囲だった。
だが、この事態は明らかに異常だった。
「アイカの身に何かあったかも知れません」
「あのアイカが、か?」
「えぇ、わたしも状況が把握できませんがとりあえず、マナに連絡を……」
シュウは端末でマナに連絡しようとした。
しかし、すぐにその必要がなくなった。
ブレイバーの海岸線を見渡すと地平線の彼方に蒼と黒の螺旋を描く光の柱が立ったかと思うとその遥か上空に1機の機体の反応があり神力感知の応用で誰の機体かすぐにわかった。
「アレは……アイカのライン ロスヴァイセ!」
純白を基調としたアイカ専用の指揮官機仕様のネクシルタイプだ。
その開発にはシュウも携わっており、ギデオンクラスターの技術とゴスペルの技術の粋を集め、ハイスペックなアイカに追従できるようにシュウ、マナ、カナが最大限チューンした傑作機の1つだ。
そのライン ロスヴァイセを中心に膨大な神力で構成された光の柱から十全な力が注がれた。
それにより遠方からも機体が僅かに脈動しているのが分かった。
「一体、何が……」
迸る程の力を受けるライン ロスヴァイセに力が集約される。
まるで全ての糧にせんばかりのアイカの向上心が発露したように機体は光の柱からエネルギーを吸収する。
そして、光の柱が弾けたと共に機体はまた、姿を現した。
「なんですか……あの姿は」
遥か彼方に見えるそれは純白に漆黒のラインを奔らせ、そのラインが血脈するように胎動したまるで生き物を彷彿とさせ、禍々しいシルエットに変わっていた。
機体はそのまま予備動作無しに上空に跳ね上がり大気圏を離脱した。
「シュウ!これは一体!」
「分かりませんね……わたしも何が何だか……」
途方にくれるシュウ達の元に突如、端末にイベント告知が入った。
その告知の右端には小さく「300」のマークが記されていた。
これはギデオンクラスターのメンバーにしか分からないメッセージだ。
ギデオンクラスター製のイベントが急遽発生した場合にこのマークを付けるのだ。
つまり、このイベント=緊急性と言う意味を暗示しているのだ。
シュウはすぐにイベントの詳細を開いた。
「こ、これは……」
「一体、どうした?」
内容を見て、呆然となったシュウにリリーシャが端末を覗き込むように見た。
そして、リリーシャも絶句した。
「こ、これは……何かの冗談か……」
ある意味、この内容はリリーシャにとってはショックな内容だっただろう。
そこに書かれていたのはこうだ。
緊急クエスト開始
終焉の女神を討伐せよ。
※アイカ リスパルダーに封じられた封印が解かれた!邪悪なる邪神が復活し世界を終焉に導こうとしている。プレイヤーが急ぎ、アイカ リスパルダーを討伐し邪神を殲滅して下さい。(最悪、撃退まで追い込むが必須。条件を満たさない場合、プレイヤー側の敗北とする)
アイカの討伐……それ以上でも以下でもない分かり易い事実に2人は茫然とした。
◇◇◇
この異変が起きる少し前
シュウがブレイバーに所要で出かけている間、マナを筆頭に騎士団との間引き作戦を当番制で行っていた。
今回はいつもと取り合わせが違い、マナ、ラッシュ、リオの3人で騎士団との合同作戦に当たっていた。
「喰らいなさい!」
マナのフレイムバズーカが奔る。
「オラオラオラ!」
ラッシュの拳がエネミーの頭蓋を砕く。
「そーれっと!」
リオのアカシックタブレットから無数の火炎の槍が発射され、全てが敵の心臓を抉った。
討伐は順調だった。
いつも通り、快調と言えるだろう。
ただ、唯一、いつもと違うところがあった。
本当に微細で戦闘上では何の支障もない範囲のほんの僅かな差だと思っていたので誰もあまり気には留めていなかったが薄々、それには全員が共通認識として気づいていた。
アイカの様子が変だ
そのような様子は垣間見るのだ。
普段のアイカなら余裕で捌く動きも最近では、少し危なげな場面も見られる。
要塞内での会議でも偶に無表情のままにどことなく苦しそうに胸を押さえている姿も最近、見受けられていた。
マナが「大丈夫なの?」と尋ねたが「大丈夫です。少し気分が悪いだけです」と答えるだけで戦闘も概ね大丈夫だったので支障はないと判断して特に何も言わなかった。
だが、流石に今回の戦闘を見ているとそうとも言えない。
一見するとちゃんと敵に対応しているが騙し騙し対応しているように見えておりヒヤリハットが目立つのだ。
さっきもエネミーに背後を取られかけた場面がありそれを咄嗟の斬撃で対応していたがやはり、危なげな感じでありマナも咄嗟にフォローを入れようと思ったほどだった。
戦闘が一通り終了したところでマナは決意する。
「アイカには休むように言いつけた方が良さそうね。よくよく考えるとあの娘、毎日のようにハードな訓練して、毎日のように実戦出てるじゃない。休まないと体壊すわよ」
アイカは良くも悪くも勤勉で騎士の鑑のような人間だ。
最近、家にも殆ど帰らず、妹にすら会っていないはずだ。
そんな状況が続いたらストレスの1つ2つ抱えるだろう。
ここは騎士団長と相談して休暇でも与えるべきだとマナは思い、アイカにまさに通信を送ろうとした。
その時だった。
突如、レーダーに高エネルギーの神力の反応を検知した。
「一体なに!」
マナ達の前方に紫色の靄がかかったような神力の球体が現れた。
それと共にアイカが苦しみ出した。
「うぅぅぅ……一体、何が……わたしの中に何かが……」
「アイカ、どうしたの?しっかりして……」
顔が青ざめているアイカの意識を繋ぎ止めようとマナは声を張り上げた。
だが、事態は更に進展する。
突然、紫色の靄がまるで触手のように無数に伸び、アイカに迫ったのだ。
アイカは咄嗟に避けようとしたが動きが鈍っており複数本伸びる触手を全て回避しきれずその内の1本がコックピットに直撃した。
「かぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」
それと共に聴こえるのはアイカの悲鳴と断末魔だった。
突如、大地を揺らす程の地響きが鳴った。
「じ、地震か!」
「馬鹿な……予報もなくいきなり地震があるはずが……」
現代人であるシュウだから分かる。
この世界でも地震は存在し予報も確かに存在する。
しかし、妙だったのはブレイバーは大陸全土に渡って、地震を起こすような断層は少ないので殆ど地震は起きない事だ。
起きるのはハリケーンくらいだ。
だが、近くには地震観測所もあり端末に警報が発令されるようになっている。
本来、ここでは起きない地震が警報無しで起きた。
これだけでも異常と言えるだろう。
「とりあえず、窓から距離を……ッ!」
突然、シュウの頭に鈍痛が奔った。
シュウも呻き声をあげながらその場に蹲る。
「シュウ!大丈夫か!シュウ!」
リリーシャの声が遠のきそうになりながらシュウはゴスペルの方角から感じる静謐でどこか禍々しいさすら感じる馴染みの神力を感じていた。
(これは……アイカの神力?しかし、何ですかこれは……この膨大な力は!)
静謐な気配は遥か遠方からでもその存在を神力感知で感知できるほど強大なアイカの力だった。
だが、その力と対を為すようなオドロオドロしい力がゴスペルの方角から重くヒシヒシと伝わる。
まるで脳みそに紙やすりを当てて、それを重い石の荷重を使って擦るような痛みだ。
「シュウ!シュウ!」
「だ、大丈夫です……」
シュウは歯を軋ませながら立ち上がった。
正直、頭痛が酷いが感知する神力の感度を下げれば対応できる範囲だった。
だが、この事態は明らかに異常だった。
「アイカの身に何かあったかも知れません」
「あのアイカが、か?」
「えぇ、わたしも状況が把握できませんがとりあえず、マナに連絡を……」
シュウは端末でマナに連絡しようとした。
しかし、すぐにその必要がなくなった。
ブレイバーの海岸線を見渡すと地平線の彼方に蒼と黒の螺旋を描く光の柱が立ったかと思うとその遥か上空に1機の機体の反応があり神力感知の応用で誰の機体かすぐにわかった。
「アレは……アイカのライン ロスヴァイセ!」
純白を基調としたアイカ専用の指揮官機仕様のネクシルタイプだ。
その開発にはシュウも携わっており、ギデオンクラスターの技術とゴスペルの技術の粋を集め、ハイスペックなアイカに追従できるようにシュウ、マナ、カナが最大限チューンした傑作機の1つだ。
そのライン ロスヴァイセを中心に膨大な神力で構成された光の柱から十全な力が注がれた。
それにより遠方からも機体が僅かに脈動しているのが分かった。
「一体、何が……」
迸る程の力を受けるライン ロスヴァイセに力が集約される。
まるで全ての糧にせんばかりのアイカの向上心が発露したように機体は光の柱からエネルギーを吸収する。
そして、光の柱が弾けたと共に機体はまた、姿を現した。
「なんですか……あの姿は」
遥か彼方に見えるそれは純白に漆黒のラインを奔らせ、そのラインが血脈するように胎動したまるで生き物を彷彿とさせ、禍々しいシルエットに変わっていた。
機体はそのまま予備動作無しに上空に跳ね上がり大気圏を離脱した。
「シュウ!これは一体!」
「分かりませんね……わたしも何が何だか……」
途方にくれるシュウ達の元に突如、端末にイベント告知が入った。
その告知の右端には小さく「300」のマークが記されていた。
これはギデオンクラスターのメンバーにしか分からないメッセージだ。
ギデオンクラスター製のイベントが急遽発生した場合にこのマークを付けるのだ。
つまり、このイベント=緊急性と言う意味を暗示しているのだ。
シュウはすぐにイベントの詳細を開いた。
「こ、これは……」
「一体、どうした?」
内容を見て、呆然となったシュウにリリーシャが端末を覗き込むように見た。
そして、リリーシャも絶句した。
「こ、これは……何かの冗談か……」
ある意味、この内容はリリーシャにとってはショックな内容だっただろう。
そこに書かれていたのはこうだ。
緊急クエスト開始
終焉の女神を討伐せよ。
※アイカ リスパルダーに封じられた封印が解かれた!邪悪なる邪神が復活し世界を終焉に導こうとしている。プレイヤーが急ぎ、アイカ リスパルダーを討伐し邪神を殲滅して下さい。(最悪、撃退まで追い込むが必須。条件を満たさない場合、プレイヤー側の敗北とする)
アイカの討伐……それ以上でも以下でもない分かり易い事実に2人は茫然とした。
◇◇◇
この異変が起きる少し前
シュウがブレイバーに所要で出かけている間、マナを筆頭に騎士団との間引き作戦を当番制で行っていた。
今回はいつもと取り合わせが違い、マナ、ラッシュ、リオの3人で騎士団との合同作戦に当たっていた。
「喰らいなさい!」
マナのフレイムバズーカが奔る。
「オラオラオラ!」
ラッシュの拳がエネミーの頭蓋を砕く。
「そーれっと!」
リオのアカシックタブレットから無数の火炎の槍が発射され、全てが敵の心臓を抉った。
討伐は順調だった。
いつも通り、快調と言えるだろう。
ただ、唯一、いつもと違うところがあった。
本当に微細で戦闘上では何の支障もない範囲のほんの僅かな差だと思っていたので誰もあまり気には留めていなかったが薄々、それには全員が共通認識として気づいていた。
アイカの様子が変だ
そのような様子は垣間見るのだ。
普段のアイカなら余裕で捌く動きも最近では、少し危なげな場面も見られる。
要塞内での会議でも偶に無表情のままにどことなく苦しそうに胸を押さえている姿も最近、見受けられていた。
マナが「大丈夫なの?」と尋ねたが「大丈夫です。少し気分が悪いだけです」と答えるだけで戦闘も概ね大丈夫だったので支障はないと判断して特に何も言わなかった。
だが、流石に今回の戦闘を見ているとそうとも言えない。
一見するとちゃんと敵に対応しているが騙し騙し対応しているように見えておりヒヤリハットが目立つのだ。
さっきもエネミーに背後を取られかけた場面がありそれを咄嗟の斬撃で対応していたがやはり、危なげな感じでありマナも咄嗟にフォローを入れようと思ったほどだった。
戦闘が一通り終了したところでマナは決意する。
「アイカには休むように言いつけた方が良さそうね。よくよく考えるとあの娘、毎日のようにハードな訓練して、毎日のように実戦出てるじゃない。休まないと体壊すわよ」
アイカは良くも悪くも勤勉で騎士の鑑のような人間だ。
最近、家にも殆ど帰らず、妹にすら会っていないはずだ。
そんな状況が続いたらストレスの1つ2つ抱えるだろう。
ここは騎士団長と相談して休暇でも与えるべきだとマナは思い、アイカにまさに通信を送ろうとした。
その時だった。
突如、レーダーに高エネルギーの神力の反応を検知した。
「一体なに!」
マナ達の前方に紫色の靄がかかったような神力の球体が現れた。
それと共にアイカが苦しみ出した。
「うぅぅぅ……一体、何が……わたしの中に何かが……」
「アイカ、どうしたの?しっかりして……」
顔が青ざめているアイカの意識を繋ぎ止めようとマナは声を張り上げた。
だが、事態は更に進展する。
突然、紫色の靄がまるで触手のように無数に伸び、アイカに迫ったのだ。
アイカは咄嗟に避けようとしたが動きが鈍っており複数本伸びる触手を全て回避しきれずその内の1本がコックピットに直撃した。
「かぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」
それと共に聴こえるのはアイカの悲鳴と断末魔だった。
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