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何気ないひと時
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荒廃の文明
新潟基地 APシュミレータールーム
「新型のバリアに関しては問題なさそうだな」
「想定外の負荷がかからなければ……ですけどね」
如月と阿部はシュミレーターの結果を反省していた。
彼女らが命令されたのは紅桜のシュミレーター上でのデータ収集と今後、改修予定のプランに沿った紅桜の改修機のシュミレーターテストだ。
現実の紅桜にはバリアは搭載されていない。
ノウスリスのバリアを転用して紅桜用に改修した数値上の兵装だ。
それでも最新鋭量産機ノウスリスの80GWよりも20GW高い出力を持つ紅桜に装備すれば高い防御性を発生しており、先ず先ずの成果と言えた。
「まぁ、最後のあの突然、乱入してきた敵が異常だったからな……スフィアクリーチャー相手なら問題ないだろうが……」
「結局、あの敵はなんだったんでしょうか?」
シュミレーター上に現れた仮想の敵としてスフィアクリーチャーと戦う場合もあったが最近では何故か人類側の兵器と対戦する事が多くなっていた。
それもシュミレーター内でも見た事がない型式の戦車や装甲車であり何故かその戦車は人類が開発したとも思えない性能を有しており、赤外線センサーや暗視スコープを偽装しただのレンガの家屋に偽装したり砂漠と一体化したようなスフィアクリーチャーとの戦いで不必要な装備を搭載した不可思議な戦車達だった。
「今までの兵器も特異だったが今回の兵器はかなり突出していたな……殴られたような衝撃があったから、恐らくAPだとは思うが……」
「姿を完全に消せるAPですか?」
「恐らくな……」
「でも、一体何の為にそんな敵が……アメリカとの戦争を想定するなら、まだしもそんなAPと戦う練習しても意味が……」
「まぁ、あの副指令が指示する事だからな……天才の考えは我々、凡人には理解できないと言う事だろう。我々は言われた事を忠実に行えば良い」
「それもそうですね」
ユウキ副司令は天才でありその考えは一介の兵士では計り知れないものである事は彼女らも知っていた。
だからこそ、可笑しなシュミレートではあったが特に訝しむ事はなかった。
「とにかく、また奴が現れた時の為に対策を練らないとな……」
「レーダーにも姿には映らない機体を……ですか?」
「なに、姿を見せないならやりようは幾らでもあるさ。とりあえず、今日は遅いから明日に備えよう」
「分かりました」
2人は就寝についた。
◇◇◇
「はぁぁ!」
「やぁぁ!」
リリーシャとアイカは木剣で斬り合っていた。
肉体に負荷をかけると言う黒いダイレクトスーツ姿で斬り合っていた。
前回の時と比べればスーツのお陰でかなり大人しめな戦闘になっていた。
それでも人智を超えており要塞内の模擬戦場では、木剣を振った速度で突風が起き、見物していた騎士団員の髪が靡く。
しかも、戦闘を重ねる毎に風圧も剣速も増しており化け物クラスの成長率だった。
「アイカ!今の踏み込みは良かったぞ!」
「あなたも先程よりも剣が速いわ!」
2人は木剣を打ち合う。
時たまに互いの木剣があり得ないような音を立てて互いの体にめり込むような音が聞こえるのだが、それでも2人は全然止まらない。
要塞の壁面を破壊するだけの剣を食らっても2人はピンピンしているのだ。
まさに鋼の肉体と言えるだろう。
ちなみにこの2人はスペリオル レベラー第2形態だ。
アイカはオーディンを殺した際にリリーシャは話を聞く限り自称神を騙ったスサノオと言う神を昔、殺したと言っておりその時には既に条件を満たしていた。
本来は別に第1形態を経て第2形態になる必要はない。
第1形態は第2形態(仮)のような意味合いが強く、第2形態の仮免のような立ち位置だ。
要は邪神を殺せるだけの因果力があり事実として邪神を殺せば、誰でもスペリオル レベラー第2形態になる。
それを学術的な別名としてネクシレイターとも呼ぶ。
元々、この2人は基礎能力が高く、しかも貪欲なまでに向上心が高く、鍛錬となれば他の追従を許さない程に過酷なのだ。
ある意味、ネクシレイターになる素養が元から備わっていた。
それ故にこんな様子が最近、よく続いている。
仕事の合間でシュウとリリーシャは要塞に来てアイカと模擬戦と言う流れだ。
この2人は非常に馬が合い、一度剣を振れば止まらない事も間々あり、いつぞやにシュウが「始めてから何時間経っていると思ってるんですか?」と呆れながら質問するとアイカは「30時間くらいですよね」と正しい認識で答え、「なに!まだ、半分も経っていないではないか!」とリリーシャはまだまだやるぞと言わんばかりに意気揚々と剣を再度、構えた事があった。
この2人にとって90時間耐久レースなど普通の訓練扱いらしく寝るのも忘れて本気で打ち合っているのだ。
「今日も長いですね……」
シュウは呆然とリリーシャの戦いぷりを見ていた。
なにもしていないように見えて、実際彼女達の剣捌きや足捌きはかなり参考になっている。
シュウは魔術師よりなので遠距離戦が主体になるが接近された時の動きや対策などを彼女達の動きから学んでいる。
ハッキリ言えば、面白いのだ。
彼女達は剣を交えれば交えるほどに無限に進化して際限なく成長を繰り返し新たな発見なども多く、探究心が燻るのだ。
今のリリーシャは出会った時とは違い、全て魔王を凌駕する力を手にしていた。
「いや……リリーシャはあそこまで化けるのか!もう我でも絶対に勝てないじゃん!」
魔王は畏怖している反面、同時に自分の事のように誇らしそうに腕を組んでいた。
と言うよりは彼は最近、ギルドの女性陣の事を孫のように思い始めているのだ。
シュウやドレイクの事は普通に接するのだが、孫娘達に関しては1人1人溺愛している。
こうしてみると魔王は復讐鬼だったかも知れないがそれはこう言った本性の裏返しだったのかも知れない。
目を入れても痛くない子供を殺されたとなれば、それは復讐したくなるだろう。
それこそ、自分の全てを賭ける。
シュウもそれをルオに置き換えたら、容易にその考えに行き着いた。
支配能力のせいで性格が変成したと思われた魔王の性格は実はこっちが素の本性なのではないかと最近、思い始めた。
こうして、心の中で何度も話していく内に魔王についても少しだけ分かるようになってきた。
彼は幼女趣味の好々爺だ。
とりあえず、若い女なら全員愛でる事ができる男だ。
その射程は上はリリーシャの20歳から下はリオの14歳、更には生後間もないルオも含めてかなり射程が広い。
何故かアイカまで孫のように扱う始末であり手当たり次第だ。
「あわわ……アイカの顔面に木剣が……あぁ!今度はリリーシャの脇腹に……今、凄い音がしたぞ!大丈夫かの……大けがなどせんかの……」
「あの2人は大丈夫でしょう。寧ろ、その状況を楽しんでいるようで何よりではないですか?」
等とシュウが答えると……
「えぇ!シュウ、貴様!少しは心配したらどうだ!お前の嫁だろうが!もっとこう真摯に……」
「……いや、ちょっと待った。誰がいつ、あの2人を嫁にすると言いましたか?」
「何を言っておるんじゃ?お前は全員を嫁にするのじゃろう。カナもマナもリリーシャもアイカもリオ……はもう既成事実が出来ておるか……とにかく、お前は王だろうが全員抱え込む解消を見せたらどうだ!」
「いやいや、まず色々、ツッコミたいんですが、何で一夫多妻する事が前提でしかも、わたしがいつ、王になったんですか?わたしは王族ハーレムを造るつもりはありませんよ」
「またまた、とぼけおって……既にカナを篭絡させておると知らぬと思ったか。差し詰め、カナが正妻か?いや、まさか本命は別か?アイカが正妻と言うのも捨てがたいな……」
「はぁ……勝手に言ってなさい」
等と言うふざけた事を言うハーレム思考の老人の戯言を聴きながらアイカとリリーシャの試合を見物する。
だが、この何という事のない普通の日常と言うのがシュウにとってはそう悪いモノではなく、このひと時がずっと続けば良いと思っていた。
だが、そのひと時も思わぬ形で急に幕を閉じる事などこの時はまだ、知らない。
新潟基地 APシュミレータールーム
「新型のバリアに関しては問題なさそうだな」
「想定外の負荷がかからなければ……ですけどね」
如月と阿部はシュミレーターの結果を反省していた。
彼女らが命令されたのは紅桜のシュミレーター上でのデータ収集と今後、改修予定のプランに沿った紅桜の改修機のシュミレーターテストだ。
現実の紅桜にはバリアは搭載されていない。
ノウスリスのバリアを転用して紅桜用に改修した数値上の兵装だ。
それでも最新鋭量産機ノウスリスの80GWよりも20GW高い出力を持つ紅桜に装備すれば高い防御性を発生しており、先ず先ずの成果と言えた。
「まぁ、最後のあの突然、乱入してきた敵が異常だったからな……スフィアクリーチャー相手なら問題ないだろうが……」
「結局、あの敵はなんだったんでしょうか?」
シュミレーター上に現れた仮想の敵としてスフィアクリーチャーと戦う場合もあったが最近では何故か人類側の兵器と対戦する事が多くなっていた。
それもシュミレーター内でも見た事がない型式の戦車や装甲車であり何故かその戦車は人類が開発したとも思えない性能を有しており、赤外線センサーや暗視スコープを偽装しただのレンガの家屋に偽装したり砂漠と一体化したようなスフィアクリーチャーとの戦いで不必要な装備を搭載した不可思議な戦車達だった。
「今までの兵器も特異だったが今回の兵器はかなり突出していたな……殴られたような衝撃があったから、恐らくAPだとは思うが……」
「姿を完全に消せるAPですか?」
「恐らくな……」
「でも、一体何の為にそんな敵が……アメリカとの戦争を想定するなら、まだしもそんなAPと戦う練習しても意味が……」
「まぁ、あの副指令が指示する事だからな……天才の考えは我々、凡人には理解できないと言う事だろう。我々は言われた事を忠実に行えば良い」
「それもそうですね」
ユウキ副司令は天才でありその考えは一介の兵士では計り知れないものである事は彼女らも知っていた。
だからこそ、可笑しなシュミレートではあったが特に訝しむ事はなかった。
「とにかく、また奴が現れた時の為に対策を練らないとな……」
「レーダーにも姿には映らない機体を……ですか?」
「なに、姿を見せないならやりようは幾らでもあるさ。とりあえず、今日は遅いから明日に備えよう」
「分かりました」
2人は就寝についた。
◇◇◇
「はぁぁ!」
「やぁぁ!」
リリーシャとアイカは木剣で斬り合っていた。
肉体に負荷をかけると言う黒いダイレクトスーツ姿で斬り合っていた。
前回の時と比べればスーツのお陰でかなり大人しめな戦闘になっていた。
それでも人智を超えており要塞内の模擬戦場では、木剣を振った速度で突風が起き、見物していた騎士団員の髪が靡く。
しかも、戦闘を重ねる毎に風圧も剣速も増しており化け物クラスの成長率だった。
「アイカ!今の踏み込みは良かったぞ!」
「あなたも先程よりも剣が速いわ!」
2人は木剣を打ち合う。
時たまに互いの木剣があり得ないような音を立てて互いの体にめり込むような音が聞こえるのだが、それでも2人は全然止まらない。
要塞の壁面を破壊するだけの剣を食らっても2人はピンピンしているのだ。
まさに鋼の肉体と言えるだろう。
ちなみにこの2人はスペリオル レベラー第2形態だ。
アイカはオーディンを殺した際にリリーシャは話を聞く限り自称神を騙ったスサノオと言う神を昔、殺したと言っておりその時には既に条件を満たしていた。
本来は別に第1形態を経て第2形態になる必要はない。
第1形態は第2形態(仮)のような意味合いが強く、第2形態の仮免のような立ち位置だ。
要は邪神を殺せるだけの因果力があり事実として邪神を殺せば、誰でもスペリオル レベラー第2形態になる。
それを学術的な別名としてネクシレイターとも呼ぶ。
元々、この2人は基礎能力が高く、しかも貪欲なまでに向上心が高く、鍛錬となれば他の追従を許さない程に過酷なのだ。
ある意味、ネクシレイターになる素養が元から備わっていた。
それ故にこんな様子が最近、よく続いている。
仕事の合間でシュウとリリーシャは要塞に来てアイカと模擬戦と言う流れだ。
この2人は非常に馬が合い、一度剣を振れば止まらない事も間々あり、いつぞやにシュウが「始めてから何時間経っていると思ってるんですか?」と呆れながら質問するとアイカは「30時間くらいですよね」と正しい認識で答え、「なに!まだ、半分も経っていないではないか!」とリリーシャはまだまだやるぞと言わんばかりに意気揚々と剣を再度、構えた事があった。
この2人にとって90時間耐久レースなど普通の訓練扱いらしく寝るのも忘れて本気で打ち合っているのだ。
「今日も長いですね……」
シュウは呆然とリリーシャの戦いぷりを見ていた。
なにもしていないように見えて、実際彼女達の剣捌きや足捌きはかなり参考になっている。
シュウは魔術師よりなので遠距離戦が主体になるが接近された時の動きや対策などを彼女達の動きから学んでいる。
ハッキリ言えば、面白いのだ。
彼女達は剣を交えれば交えるほどに無限に進化して際限なく成長を繰り返し新たな発見なども多く、探究心が燻るのだ。
今のリリーシャは出会った時とは違い、全て魔王を凌駕する力を手にしていた。
「いや……リリーシャはあそこまで化けるのか!もう我でも絶対に勝てないじゃん!」
魔王は畏怖している反面、同時に自分の事のように誇らしそうに腕を組んでいた。
と言うよりは彼は最近、ギルドの女性陣の事を孫のように思い始めているのだ。
シュウやドレイクの事は普通に接するのだが、孫娘達に関しては1人1人溺愛している。
こうしてみると魔王は復讐鬼だったかも知れないがそれはこう言った本性の裏返しだったのかも知れない。
目を入れても痛くない子供を殺されたとなれば、それは復讐したくなるだろう。
それこそ、自分の全てを賭ける。
シュウもそれをルオに置き換えたら、容易にその考えに行き着いた。
支配能力のせいで性格が変成したと思われた魔王の性格は実はこっちが素の本性なのではないかと最近、思い始めた。
こうして、心の中で何度も話していく内に魔王についても少しだけ分かるようになってきた。
彼は幼女趣味の好々爺だ。
とりあえず、若い女なら全員愛でる事ができる男だ。
その射程は上はリリーシャの20歳から下はリオの14歳、更には生後間もないルオも含めてかなり射程が広い。
何故かアイカまで孫のように扱う始末であり手当たり次第だ。
「あわわ……アイカの顔面に木剣が……あぁ!今度はリリーシャの脇腹に……今、凄い音がしたぞ!大丈夫かの……大けがなどせんかの……」
「あの2人は大丈夫でしょう。寧ろ、その状況を楽しんでいるようで何よりではないですか?」
等とシュウが答えると……
「えぇ!シュウ、貴様!少しは心配したらどうだ!お前の嫁だろうが!もっとこう真摯に……」
「……いや、ちょっと待った。誰がいつ、あの2人を嫁にすると言いましたか?」
「何を言っておるんじゃ?お前は全員を嫁にするのじゃろう。カナもマナもリリーシャもアイカもリオ……はもう既成事実が出来ておるか……とにかく、お前は王だろうが全員抱え込む解消を見せたらどうだ!」
「いやいや、まず色々、ツッコミたいんですが、何で一夫多妻する事が前提でしかも、わたしがいつ、王になったんですか?わたしは王族ハーレムを造るつもりはありませんよ」
「またまた、とぼけおって……既にカナを篭絡させておると知らぬと思ったか。差し詰め、カナが正妻か?いや、まさか本命は別か?アイカが正妻と言うのも捨てがたいな……」
「はぁ……勝手に言ってなさい」
等と言うふざけた事を言うハーレム思考の老人の戯言を聴きながらアイカとリリーシャの試合を見物する。
だが、この何という事のない普通の日常と言うのがシュウにとってはそう悪いモノではなく、このひと時がずっと続けば良いと思っていた。
だが、そのひと時も思わぬ形で急に幕を閉じる事などこの時はまだ、知らない。
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