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NO世界会議

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 ギルド 医務室

 シュウはそっと目を覚ます。
 見慣れた天井がそこにはあった。
 既に自分がギルドに運ばれている事だけは理解する事ができた。
 上体を起こし辺りを見ると自分の真横の椅子に座っているリリーシャと目が合った。



「シュウ。目覚めたか……」

「えぇ……かなり爆睡した気がしますが……アレからどのくらい経ちましたか?」

「20分くらいだ。あの後、お前とアイカを回収してアサルトでギルドに転移した。」

「そうですか……他のみんなは」

「全員無事だ。今は戦後の事後処理に追われている。」

「なるほど……なら丁度、良いのかも知れないですね」



 シュウはリリーシャにタブレットを出すように要求した。
 リリーシャは近くにあったタブレットを差し出すとシュウは何かを記入し始めた。
 数分ほど記入するとそれをリリーシャに差し出し、こう告げた。



「このメッセージをギルドメンバーと共有して下さい」



 リリーシャはそこに書かれた内容に注視した。



「シュウ……これは……」

「わたしの我儘であり、覚悟ですよ……付き合って貰えますか?」



 そこには簡潔にこう記されていた。

 “存在”及びその眷属に報復する。

 これはわたし……シュウの私怨である。

 そのように書かれた指令書をメンバーに送られた。



 ◇◇◇



 メンバーにはこの事が伝えられた。
 だが、会議は行われない。
 その理由として指令書には以下の事が記載されていた。

 ・時空トンネルが生まれた件と終焉の女神復活、更に魔王が世界侵攻を行った事は全て“存在”には大きな関りがあると判明した。
 ならびに“存在”は9年前にわたしに害意を向けた。
 故にわたしは“存在”とその眷属に復讐する事をここに宣言する。
 メンバー諸君にも協力して欲しい。
 無理強いはしません。
 ただ、もし協力するなら最後までわたしを信じて下さい。
 これを同意するなら次の項目を閲覧して下さい。

 ・今回の作戦は機密漏洩を完全に絶つ必要性がある為、わたし以外のメンバーにはその概要は伝えません。必要物資の調達などの指示は出しますが作戦に関しては全てわたしに一任するモノとしその概要は当日まで全て伏せます。
 非常識的な作戦ですが、それでも



 それだけが書かれていた。
 もし、これがただの軍隊だったな上手くいかなかっただろう。
 命令を聴くのが当たり前程度に考える……部下を管理する気がない指揮官が言った言葉なら誰も同意はしないだろう。

 だが、皆は知っているのだ。
 シュウと言う男は常に部隊を引っ張り、その命令が如何に荒唐無稽だろうと聴くに能うと証明して来た指揮官だと知っている。
 だからこそ、全員はこの作戦に同意した。

 会議のようなモノはなかったが皆が1つの目標に向かって躍動する時が来たのだ。



 ◇◇◇




 現実



 世界に衝撃的な事実を告発しその原因となった“存在”の撃退に成功したと同時にNOは緊急メンテナンスに入った。
 初の“存在”の再封印措置の影響がどのように出ているのか、念入りに調べる必要があった為だ。

 その為にギデオンクラスターのメンバーは全員ログアウトされた。
 そこにはアイカとリリーシャの姿もあった。
 アイカとリリーシャはログアウトと言うよりは転移する形でこちらの世界に来た。
 リリーシャはシュウの護衛として今後も行動を共にする。
 アイカを今回、こちらに連れて来たのは未だ昏睡状態のアイカを1人でNO世界に残すのは危険であり、騎士団に任せるよりもシュウ達の近くに置いておく方が良いと言う判断の元だ。
 それに封印の要であるアイカに何かあった場合、すぐに対応できるシュウがいた方が良いからだ。
 シュウはあの戦いで反理の魔眼を使えるようになった。
 これによりアイカが仮に再び“存在”に束縛されても反理の魔眼で“存在”の束縛を解除できるからだ。
 “存在”がアイカを乗っ取るのも一種の魔術なので反理の魔眼はその有効打となるのだ。

 そんな彼らはログアウト後にアーリア社の車で出迎えられ、そのまま東京都内になるアーリア社本社に向かった。
 そこで一同は会議室に集められた。
 そこにはマナ達が既におり、見慣れた(?)顔もいた。
 尤も現実では初対面ではあるが……。



「一応、確認しますが、あなた達がドレイクとラッシュですか?」



 すると、ゲーム内とそう大差ない顔立ちのドレイクが「あぁ、そうだよ」と答え、ラッシュも「お前がシュウか!グラサン取ってるんだな」と答えた。



「一応、リアルネームを言っておくか……鴻上 ザキだ」

「オレは的場 亮介だ」

「白井 修也です」



 すると、アイカをお姫様だったしたままのリリーシャも流れ的に自己紹介した。



「リリーシャ デフトだ」

「あぁ、知ってるよ」

「お前達はこっちにいるって言うのはなんか、感慨深いものがあるな……」




 ラッシュこと亮介はらしくもなく「感慨深い」など口にした。
 それも分かる気がした。
 実際、アイカはこの世界ではNOを代表する人気キャラになっている。
 多くの人にとって2次元キャラと言っても良い。
 実際は違うとラッシュも理解していたがこうして同じ世界にいると改めて同じ人間なのだと再認識してしまう。
 だからこそ「感慨深い」と言う単語が出たのだと思う。



「わたしはかなり刺激的だ。NOはまだ、わたしが知る世界のモノが多かったがこの世界にはかなり独創的だ。本当に別の世界に来たと言う実感があるよ」



 リリーシャからすれば、この世界のコンクリートジャングルや車と言った物が大きな刺激だった。
 このありふれた現代日本を見て「独創的」と言えるのはやはり、リリーシャが異世界の人間だからこそ言える感性に思えた。



「盛り上がっているところ悪いが……そろそろ、時間だ。席についてくれないか?」



 すると、席についていた黄燐が促す。
 そう、ここにメンバーが呼ばれたのは今、ここでオンラインの非公式世界会議が行われるからだ。
 シュウ達が席に着き、リリーシャはアイカを近くのソファーに寝かせて一緒に座り込む。
 すると、照明が暗くなり、ホログラムが起動しそれぞれの世界の首脳の顔が写し出された。



「それでは第1回。NO世界会議を始めさせて貰います」



 議長である黄燐が司会進行を始める形で世界会議が始まった。
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