食べたい2人の気散事

黒川

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65 心配、される、俺(無用)

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「裕也、今まで……そのー、古川さんの所に行ってたんだよな?」

そう聞いてきたのは兄ちゃん。

「うん。2人とも休みを合わせられたから、泊まりに行ってた。きちんと母さんと父さんには許可貰って泊まったよ」

「……うん、そうだな。裕也は成人したとは言え、まだ親の保護下に居るし、当然だ」

姉ちゃんも神妙な顔付きでウンウンと頷いている。

「その……体調とか……」

兄ちゃんが言いにくそうに聞いてきたので、

「元気だよ?てか、その話は、ひーちゃんに聞かれても大丈夫な話?そうでなければ、別の時にして欲しい」

おそらく、タットさんとの関係を聞かれてるのだろう。ひーちゃんが理解出来ない話であったとしても、大人な話を幼子の前でするのは良くないと思って牽制する。子どもの前でする話ではない。
ひーちゃんは、ご機嫌に俺の膝の上で立ち上がってダンシングしてる。地味に太ももが痛い。
2人とも、黙ってしまったので勝手にタットさんとの関係を聞かれたと俺は判断した。

「特に困った事は何もなかったよ。ずっと楽しかった。1週間泊まりに行ったんだけど、凄く自然に過ごせた。家族以外と過ごして、あんなにリラックス出来たの、初めてかも知れない。あ、そうだ。俺、ひーちゃんに渡したいものがあるんだった。ちょっと待ってて」

ひーちゃんを膝から降ろして、荷物の入ったカバンを漁る。取り出したのはおどろおどろしい妖怪が描かれたカード。ひーちゃんは興味津々でそのカードを眺めていた。

「こわいねぇ。これ、おばけ?こわいねぇ」

怖い怖いと言いつつも、カードをガン見する姿がかわいい。カードをペロッとめくり、間に挟まれているベタベタを人差し指で掬って親指と擦り合わせる。すると、フワフワと指先から煙のようなものが現れた。
ひーちゃんは目を真ん丸にさせて、俺の手を掴んだ。

「白いの!!もくもくしてる!ゆーちゃん熱い?手って熱い?」

指先にフーフーと息を吹きかけてくれる。優しい子だ。

「なんだろ?おもちゃ、でいいのかな?偽物のけむりだよ。手は熱くない。冷ましてくれてありがとう」

ベタベタしてない方の手で、ひーちゃんの頭を撫でると、興味を持ったのか、自分もやってみたいとカードに指を突っ込んでいた。

「懐かしいな。そのカード。俺も小さい頃遊んだ」
「私は無いけど知ってる。男子ってこう言うの好きよね。同級生が遊んでるのを見たことあるわ。まだ売ってるのね。何処で買ったの?」
「菓子屋通りの駄菓子屋さん」

「「あぁ~!」」

2人の声が重なった。

「見てー!!ママ!!見てー!!ひーちゃん上手?ねえ見ーーてーーーー!!!」

小さい子どもが居ると、どうしても子どもの会話を中心にさせなくてはならない。
俺ら大人組3人は、ひーちゃんと煙が出るカードでしばらく遊んだ。


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


「ひーちゃん、おじさんと公園に遊びに行こうか?帰りに好きなお菓子も買ってあげるよ?」

そう切り出したのは兄ちゃん。

「えぇーー???ひー、いいなぁ!羨ましい!!ママもお菓子たーべーたーいー!!」

便乗したのは姉ちゃん。
ひーちゃんは、最初キョトン?とした顔をしていたが、お菓子を買ってくれると聞き、体が揺れ始めた。

「こうえん?おかし?ママも行く?ゆーちゃんも行く?」

「ママはダメよ。これからお昼ご飯作るんだもの。ゆう兄ちゃんはママのお手伝い。ひーはおじさんのお世話してあげて」

「おせわ!」

「おじさん、ひーちゃんとあそびたーい!公園で一緒にあそびたーい!」

兄ちゃんが手足をバタバタさせてる。
イケメンの幼児化、視界の暴力が酷い。

帽子と水筒、タオル、砂場遊びセットを抱えて2人は公園に出かけた。
玄関で見送って、残された姉ちゃんと俺。

「さて、詳しく聞こうじゃないの」

姉ちゃんは俺の方を向いて、仁王立ちをした。
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