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70 冒険者は、サポートする。
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母さんとのやり取りもあって、俺は割と気軽にタットさんの家に泊まれるようになった。
だからと言って入り浸る事は無く、お互いの都合を確認して、泊まりに行く感じ。
イロトリのバイトが再開した後も、バイト終わりに泊まりに行ったり、タットさんの家からバイトに行ったりもしている。
「一緒に住んじゃえばいいのに」
イロトリの営業が再開した9月も後半、休みの間、どう過ごしていたかをユネさんとお客さまを交えて話していた時に、言われたセリフだ。
「それは、俺が大学卒業したあとに考えてます」
「んま…………!」
お客さま、主に俺が小さかった頃を知ってる古参組が目をキラキラ輝かせていた。
タットさんは、どう考えているか分からないけど、もしこの関係が俺の大学卒業後も続いたら、同棲する選択肢があってもいいなと思っている。
……タットさんはどう考えるだろ?
それとも、一人暮らしの経験は積んでおいた方が良いだろうか……そもそも、卒業後の進路も決まってないのに、こんな事を考えるのも時期尚早だろうか?
1人で考えるより、今度タットさんに聞いてみよう。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
そんな事を考えていた時期もありました。
それどころでは、ありませんでした。
「ゆん君……俺……死んじゃう……お腹空いた……」
「死にません。生きてください。ゴミまとめてあります。おかず、いくつか作り置きしました。ご飯も炊いて小分けして冷凍してます。具沢山系の即席味噌汁買っておきました。ご飯とおかずはレンチン、お湯沸かせば味噌汁、食事面はサポートします」
10月も中頃、事件は起きた。
タットさんの職場で。
どうもタットさんの部署が関与しているシステムで障害が起きたらしい。その復旧作業のため部署全体でデスマーチが行われているとの事。
俺も今月に試験があるので、その勉強の追い込みやら、大学後期が始まって講義の選択やらレクリエーションやらなにやらでバタバタしてた。
順調に交際が続いている俺たちだが、お互いだったり、どちらかが忙しければ、数日連絡を取り合わない事もそれなりにある。今回もいつもの事だと思って、俺が落ち着いた頃に電話をしたら、そんな話を聞いた。
それから、俺はすぐさまタットさんの家に向かった。
詳しく聞けば、10月の始め頃から小さな障害は起こっており、修正したと思えば別の所に不具合の報告が上がり、修正すれば、不具合が出て……と言ったイタチごっこが続いていたらしい。そして、とうとう収拾つかない大きなバグが発生したのだそうな。
「俺……入社して初めてだよ……こんなに眠れない日が続くの……ねむぅぅうい……」
体に物凄く悪そうなカフェイン飲料をクピクピ飲んでる姿が痛ましい。
「在宅だから終電も関係無いしね!」
こんなヤケになってるタットさんは初めて見た。部屋は雑然としてるし、ゴミ箱はコンビニ弁当とカップ麺の空箱が重なっている。
「タットさん、俺、今から妖精になりますので、俺の事は気にせずにお仕事してください」
「妖精?こんな可愛い妖精?気にしないなんて無理だよぅ」
俺に抱き着いて胸元に顔を埋めてグリグリ擦り付けてくるので、少しくすぐったい。
なんとか宥めて、散らかってた部屋を片付け、ゴミをまとめ、ご飯を炊いて何品か作り置きのおかずを作った。
「ゆん君……ありがとう……これ、落ち着いたらキチンとお礼するからね?」
「お礼とか、考えなくて大丈夫です。お仕事に集中してください。俺がしたくてやってる事なので」
「うぅ……ありがとう……ゆん君だって今月試験があるんでしょ?そんな大事な時期なのに……」
「気にしないでください。タットさんのサポートしただけで試験落ちるんだったら、最初から俺の努力が足りなかったって話です」
「ゆん君がカッコイイ……俺もこのトラブルきちんと片付けられるように頑張るからね」
「はい」
心配ではあるけれど、家に居ても邪魔だろうと思って、少しだけ長めの大人のキスをして抱き締めてから、自宅に帰った。
タットさんの事も心配ではあるけれど、俺も俺で学生の本分をまっとうしなくてはならないからな。
✂ーーーーーーーーーーーーーーーーーー✂
タットさんのお仕事トラブルは、ふんわりと受け止めてください。あー、なんか大変なことが起こったのね、くらいでお願いします。
だからと言って入り浸る事は無く、お互いの都合を確認して、泊まりに行く感じ。
イロトリのバイトが再開した後も、バイト終わりに泊まりに行ったり、タットさんの家からバイトに行ったりもしている。
「一緒に住んじゃえばいいのに」
イロトリの営業が再開した9月も後半、休みの間、どう過ごしていたかをユネさんとお客さまを交えて話していた時に、言われたセリフだ。
「それは、俺が大学卒業したあとに考えてます」
「んま…………!」
お客さま、主に俺が小さかった頃を知ってる古参組が目をキラキラ輝かせていた。
タットさんは、どう考えているか分からないけど、もしこの関係が俺の大学卒業後も続いたら、同棲する選択肢があってもいいなと思っている。
……タットさんはどう考えるだろ?
それとも、一人暮らしの経験は積んでおいた方が良いだろうか……そもそも、卒業後の進路も決まってないのに、こんな事を考えるのも時期尚早だろうか?
1人で考えるより、今度タットさんに聞いてみよう。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
そんな事を考えていた時期もありました。
それどころでは、ありませんでした。
「ゆん君……俺……死んじゃう……お腹空いた……」
「死にません。生きてください。ゴミまとめてあります。おかず、いくつか作り置きしました。ご飯も炊いて小分けして冷凍してます。具沢山系の即席味噌汁買っておきました。ご飯とおかずはレンチン、お湯沸かせば味噌汁、食事面はサポートします」
10月も中頃、事件は起きた。
タットさんの職場で。
どうもタットさんの部署が関与しているシステムで障害が起きたらしい。その復旧作業のため部署全体でデスマーチが行われているとの事。
俺も今月に試験があるので、その勉強の追い込みやら、大学後期が始まって講義の選択やらレクリエーションやらなにやらでバタバタしてた。
順調に交際が続いている俺たちだが、お互いだったり、どちらかが忙しければ、数日連絡を取り合わない事もそれなりにある。今回もいつもの事だと思って、俺が落ち着いた頃に電話をしたら、そんな話を聞いた。
それから、俺はすぐさまタットさんの家に向かった。
詳しく聞けば、10月の始め頃から小さな障害は起こっており、修正したと思えば別の所に不具合の報告が上がり、修正すれば、不具合が出て……と言ったイタチごっこが続いていたらしい。そして、とうとう収拾つかない大きなバグが発生したのだそうな。
「俺……入社して初めてだよ……こんなに眠れない日が続くの……ねむぅぅうい……」
体に物凄く悪そうなカフェイン飲料をクピクピ飲んでる姿が痛ましい。
「在宅だから終電も関係無いしね!」
こんなヤケになってるタットさんは初めて見た。部屋は雑然としてるし、ゴミ箱はコンビニ弁当とカップ麺の空箱が重なっている。
「タットさん、俺、今から妖精になりますので、俺の事は気にせずにお仕事してください」
「妖精?こんな可愛い妖精?気にしないなんて無理だよぅ」
俺に抱き着いて胸元に顔を埋めてグリグリ擦り付けてくるので、少しくすぐったい。
なんとか宥めて、散らかってた部屋を片付け、ゴミをまとめ、ご飯を炊いて何品か作り置きのおかずを作った。
「ゆん君……ありがとう……これ、落ち着いたらキチンとお礼するからね?」
「お礼とか、考えなくて大丈夫です。お仕事に集中してください。俺がしたくてやってる事なので」
「うぅ……ありがとう……ゆん君だって今月試験があるんでしょ?そんな大事な時期なのに……」
「気にしないでください。タットさんのサポートしただけで試験落ちるんだったら、最初から俺の努力が足りなかったって話です」
「ゆん君がカッコイイ……俺もこのトラブルきちんと片付けられるように頑張るからね」
「はい」
心配ではあるけれど、家に居ても邪魔だろうと思って、少しだけ長めの大人のキスをして抱き締めてから、自宅に帰った。
タットさんの事も心配ではあるけれど、俺も俺で学生の本分をまっとうしなくてはならないからな。
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タットさんのお仕事トラブルは、ふんわりと受け止めてください。あー、なんか大変なことが起こったのね、くらいでお願いします。
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