地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました?

黒川

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第二章:本編

14-マチナカサガリ の、決意

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「サガリ君、今日はありがとう」
「どういたしまして」

キリに以前に仕込んだ約束。
俺がデート代を持つ、キリは可愛く俺に礼を言う。
割り勘しようと財布出されるより、建設的な関係だ。
蛇足ではあるが、ラキのライブやらイベントチケットは別。
いつだったか、凄い必死な顔で懇願されたのが面白くて思わず爆笑してしまったのも良い思い出だ。
キリは今でも自分の稼ぎの殆どをラキの為に使っている。
まぁ、最近は俺が出納管理しているので貯蓄額も増えていってるけど。

キリとのやり取りをしながら、過去を振り返っていると、今日の博物館の催事についてキリが話し始めた。

「室町時代の水墨画がね、原画で見れたのが一番嬉しかった!」
「あー、展示期間が限られてるからな。イベントとか無ぇと中々お目にかかれねぇよな」

今日はキリが好きだと言っていた国宝の原画を見に行くのが一番の目的だった。
所蔵はされているのだが、あまり表には出てこない作品なので、催事の告知を知ったキリは、ソワソワとしていた。
そんな事もあって、今日のデートコースだ。
キリも念願叶って嬉しいのだろう。
ずっと今日見た古典絵画について喋っている。
特に水墨画に関しては、ラキの話しをする時みたいな、全肯定脳内お花畑オタクの様な語りでは無かった。
水墨画そのものの画風、描かれた景色や、当時の時代背景・文化等をひっくるめて己の解釈を語り続けている。
室町後期の特徴と言えば、武家社会の安定と禅宗文化の隆盛だろう。作者も禅僧であった事実を加味し独自の見解を熱弁する姿は、知的溢れ魅力的だ。

キリと出会った当初、頭の弱い人種だと思っていたが、学ぶ機会が無かっただけだった。
きっかけがあれば、コイツは意欲的に学んでいる。
なので俺はこの2年間で、キリが少しでも興味を持ったものがあれば、それとなく学べるよう促した。
学びを与えないのは勿体ない。
キリの両親は、こんな素晴らしい逸材を無碍にしていただなんて、あのクソみたいな2人に金かけるよりこっちだろと憤りすら覚える。
……まぁ、キリは気にしてなさそうだけどな。
キリはマンションに着くまでずっと喋り続けていた。
本人も自覚があったみたいで、部屋に入るなり少し恥ずかしそうにしていた。
そんな姿を愛でながら、外出先ではずっと我慢していたキリの卒アルを取り上げた。
紙袋に入っていたのは3冊。
タイトルで、幼稚園、小学校、中学校の名前を確認した。高校が無い。

「高校は?」
「無いよ。購入制だったからね」

買ってもらえなかったか、本人が不要と思ったのか……俺の家では有り得ない事ばかりで、身勝手な感情と思いつつも胸が苦しくなった。

「これからさ、俺とたくさん写真撮ろうな?」

卒アルの入った袋を床に投げ捨て、キリを抱き締めた。
過去はどうにもならない分、これからを大切にすればいい。写真がなければこれから沢山撮ればいい。
家族に大切にされてなかったなら、俺がこれからずっと大切にすればいい。
そんな決意表明も込めて。
俺が真剣にキリを思っているのに、「人肌あったかーい」としか考えてない様な呑気な顔をしていた。
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