地下アイドルを推してたワープアコミュ障陰キャな僕だけど気付いたら執着系ハイスペイケメンに僕が推されて(性的にも)磨かれました?

黒川

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第二章 番外編 等

カナタキリ は、親族から心配されている きっかけ編

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【カナタキリ side】


「もうスマホの番号も変えないか?あのクソ親から完全にトンズラ出来るぞ?」

サガリ君はそう言って僕の携帯番号を変える事を勧めてきた。

「うーん。別にどちらでもいいかなぁー?」

僕としては、どちらでも良かったので曖昧に返事をしたら、

「どちらでもいい、って言うことは、変えても良いって事だよな?」

って、僕的には謎な理論を言われた。
確かにどちらでもいいとは言ったけど、相変わらず強引だなぁ。
別にどちらでも良いから、サガリ君が変えるって言うならそれでも別に良いんだけどね。

「ついでに今入っている連絡先も一掃出来るし、一石二鳥だろ?」

名案だ!みたいな表情されても、ただカッコイイだけだった。
サガリ君は、どんな表情してもカッコイイ。

「連絡先かぁー」

僕のスマホに入っている連絡先は、本当に必要最低限しか無い。
実家⋯⋯の、固定電話はもう使われていないから、両親と妹、弟の携帯番号でしょ?あ!2人は電話かけただけで登録してないや。
じゃぁ、僕が登録してる番号って、サガリ君、両親、清掃会社の勤怠専用の番号、キムラさん、デイブさんの携帯番号と会社の事務所、高校生の時に卒業前に交換した友だちと⋯⋯でも彼らとも一度も連絡取ってないや⋯⋯あとはかかりつけの病院に、いくつかのお店の番号に~⋯⋯あれ?整理するほどの数でも無くない?
なんて、僕の寂しい携帯電話の連絡帳を見ていたら、一番下の方に「父方 叔父さん」「母方 叔父さん」と言う連絡先が出てきた。

「あ」

すっかり忘れていた連絡先だし、存在そのものも忘れていた。
なので思わず声が漏れてしまった。

「どうした?」

サガリ君が気にして声をかけてくれる。
こうやって細かい僕の反応を気にかけてくれるサガリ君が好き。

「父さんと母さんの親戚の連絡先が入ってて、そう言えばそんな事もあったなぁって久々に思い出したんだ」

どちらの叔父さんたちにも、ずっと会ってないし連絡もしていない。
⋯⋯元気かな⋯⋯?
なんて思いを馳せていたら、サガリ君が凄く嫌そうな顔をしていた。

うん、僕の両親の親戚だもんね。
サガリ君は、あまり良いイメージを持てないかも知れない。

けれども。
番号を変える前に、養子に入る前に、1回くらい会いたいな⋯⋯なんて、僕は考えてしまっている。


▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪


父さんの実家も、母さんの実家も、僕の実家からそこまで離れていない。どちらも車で1時間くらいで行けるし、電車でも同じくらいの時間で行ける。
小さい頃は、お正月とか夏休みとか、何かと親に連れられて、お祖父ちゃんお祖母ちゃんに会いに行って、それから近所に住んでる叔父さん家族に会いに行くのが恒例だったけど、僕が小学校3年生になると、両親に、

「後部座席に兄妹3人も乗せたら狭いでしょ。あんたは長男なんだから、留守番してなさい」

って言われて、連れて行って貰えなくなったんだよね。
それでも一人で居るのは1日だけだし、普段から僕一人が家に置いて行かれる事は、既にまぁまぁあったから、気にしていなかった。
それより何より、一人で家にいると、テレビのチャンネル権は僕だけのものだったし、読みたい漫画は独り占め出来るし、ご飯代として500円を渡されたから悪い事では無かったんだよね。
⋯⋯まぁ、帰ってくると下の2人がお祖父ちゃんお祖母ちゃんから、お小遣いをいくら貰ったとか、何を買って貰った、何をご馳走して貰った、なんて話を聞くと、良いなぁ⋯⋯なんて思った事もあったけど。
でも、僕は長男だから、そう言うのは我慢しなくちゃいけない立場だったのも知っている。
だから、仕方の無いことだと思って、一人の自由時間を楽しんでいたんだ。


▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪


じゃぁ、そんな僕が何で叔父さんの連絡先を知っているか?って話なんだけど、それは僕が高校を卒業して社会人1年目の年明けの事だった。

実家を出て、安いけどお給料を貰って一人暮らしを始めた初めてのお正月に、僕は急に大人の仲間入りをした!って気持ちになったんだよね。
社会人だし、自分のお給料だけで生活してる僕ってオトナじゃん!⋯⋯って思ったら、オトナなんだから、両親関係なくお祖父ちゃんお祖母ちゃんと親戚に挨拶しに行こう!!って思い立ったんだ。
今となっては、なんでそんな発想になったのかな?って、不思議で仕方がないけど。

そして、昔の記憶を辿って、年始の仕事が終わった1月4日に、午前中に母さんの方の実家、午後に父さんの方の実家に一人で挨拶しに行ったんだ。
まだお正月気分なのかな?どっちも叔父さん家族が居てね、ちょっとラッキーとか思っちゃった。
そしたら、どっちも凄く喜んでくれて、お祖父ちゃんお祖母ちゃんは泣き出しちゃうし、叔父さんは僕の事を凄く心配してくれた。

その時に、叔父さんと連絡先を交換したんだよね。
母さんの方の叔父さんは、
「念の為、キリの連絡先を知っておきたい」
って言ってくれて、
父さんの方の叔父さんは、
「困った事があったら、まず叔父さんを頼ってくれ」
って、熱心に言ってくれた。

ついでに、どちらも僕にお年玉を渡そうとしてきたから、そこはきちんと断ったよ。
僕は自立して働いているからね!

そんな年始の挨拶も終わって、自分の意思で親戚に新年の挨拶に行けちゃう僕ってちょっとオトナじゃーん。なーんてウキウキしてたら、その夜に母さんからショートメールが届いた。

『この乞食が。私達の実家に何を物乞いしに行ったの!?この恥さらし!』

って。
最初、何を言われているのか全く分からなかったんだけど、どうやら勝手にお祖父ちゃんお祖母ちゃんに会いに行ったのが駄目だったみたい。
そっか、勝手に行っちゃ駄目だったのか。
母さんには、お祖父ちゃんお祖母ちゃんから何も貰って無い事と、勝手な事をしてごめんなさいって謝って終わった。
以来、一度もどっちにも行ってない。


▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪


「知っていたけど、お前の両親本当にクソだな⋯⋯」

サガリ君が眉間にしわを寄せて目頭を抑えている。
そうだね、って今なら言える。
ちょっとアレは理不尽だったな。

「話を聞く限り、親戚はまともそうだが⋯⋯もう会わなくて良くないか?10年近く会って無いんだろ?」

「えー?じゃぁ、せめて番号変わる前に電話かけてもいい?」

「電話⋯⋯いや、寝た子を起こすなって言ってんだよ。あいつらと血が繋がっているんだろ?いつどこに地雷があるか分かったもんじゃねぇよ」

サガリ君は気が進まないみたい。
僕は、お祖父ちゃんお祖母ちゃんの事も、叔父さんの事も、会った事があるから、そこまで警戒しなくても良いと思ってるんだけどな。
けど、サガリ君が心配してくれるのも分かる。
だから本当にサガリ君が嫌なら、言う通りでもいいかな?
そう思って、僕はサガリ君の真意を確かめようと、ジッと目の奥を覗き込んだ。

うーん⋯⋯分からない。
まぁ、こんな事で分かったら苦労しないよね。
でも、なんだかサガリ君が居心地悪そうな表情している。

「サガリ君?」

コテって首をかしげて、サガリ君の目を再度見ると、フイッと背けられてしまった。

「サガリ君?」

もう一度呼びかける。
何か葛藤してるみたい。

「俺も⋯⋯ついて行っていいなら、会ってみたらどうだ?」

だって!!
えー?いいのー??やった!!
サガリ君も来てくれるって!
そんなの大歓迎に決まってるじゃん!!

「いいよ!いいよ!大歓迎だよ!一緒に行こう!!」

そうして、2人で叔父さんたちに会いに行く事が決まった。
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