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第二章 番外編 等
カナタキリ は、親族から心配されている 母方編
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【カナタキリside】
父さん側の叔父さんとは、良い再会が出来た。
母さんの方はどうだろう?
父さん側の叔父さんと同様に都合を聞くために電話をかけた。
出てくれない可能性も覚悟はしていたけど、少し長めにコールしたら出てくれた。
『キリか。どうした急に』
「叔父さん、お久しぶりです。あのね、急なんだけど、久しぶりに叔父さんに会いたいなって思ったんだ。出来れば、お祖父ちゃんお祖母ちゃんにも会いたくて、ご都合はいかがですか?」
ふふっ。ここは2回目だからね。
スムーズに言えたと思う。
そして、当たり前の様に横にはサガリ君がいるよ。
返事まで、ちょっと沈黙が続いたのだけど、叔父さんは会ってくれる約束をしてくれた。
でも、お家じゃなくてお店ならいいよって言われたから、僕もそれで大丈夫って伝えた。
叔父さんは、まだ仕事をしているから土日じゃないと無理だって言ってたから、次の僕の土曜日休みの日でお願いをした。
最後に、叔父さんから
「何か困りごとか?」
って聞かれたんだけど、何も無くて、ただ久しぶりに会いたいんだって伝えたら、また少し間が空いて、
「分かった」
って言われた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
約束の日、僕は一人で叔父さんに言われたお店に向かった。
叔父さんの住んでいるところと、僕が住んでいるところの、ちょうど真ん中にある和食屋さんだった。
予約をしているから、叔父さんの名前をお店の方に伝えれば大丈夫だって言われたから、その通りにすると、お店の人に個室を案内された。
まだ叔父さんは来てなくて、僕はキョロキョロと周りを見てしまう。
うーん。ちょっとお高めな場所だぞ?現金は多めに持ってきたけど、足りなかったらクレジットカード使わせてもらおう。
なんて考えていたら、叔父さんもやって来た。
⋯⋯やっぱり前に会った時に比べると、ちょっと老けたなぁなんて考えてしまった。
「こんにちは、お久しぶりです。キリです」
挨拶をすると、叔父さんはちょっと戸惑ってるみたいに固まっていた。
「キリ、か?⋯⋯お前、本当に変わらないな⋯⋯いや、10年前からは変わってるが⋯⋯小さい頃のままだな⋯⋯」
あれ?また言われた。
父さん側の叔父さんにも似たような事言われたっけ?
今の僕って、そんなに幼いのかな?
「それ、父さんの方の叔父さんにも言われました」
フフって笑うと、叔父さんも少しぎこちなかったけど、笑って「久しぶりだな」と言ってくれた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「久しぶりの再会だからな、ここは叔父さんが持つよ。好きなものを頼みなさい」
そう言ってメニューを見せてくれた。
大変だ⋯⋯なんかお高いコース料理ばかりだ。
どうしよう?カツ丼とか親子丼とか無いのかな?なんてペラペラ捲っていると、
「こう言う店は、あまり入らないのか?」
と、叔父さんに聞かれた。
「は⋯⋯はぃ⋯⋯ごめんなさい⋯⋯何を選んだらいいか、僕よく分からなくて⋯⋯」
「そうか。キリもいい歳だからと思って良い店選んでしまったよ。俺が選ぶ。アレルギーか苦手な食材はあるか?」
「いえ、何もありません」
「そうか。じゃぁ、この辺りにしよう。酒は飲むのか?」
「いえ、飲まないです」
「まあ、昼間だしな。ソフトドリンクでいいか?」
「はい」
叔父さんは淡々とメニューを選んで、お店の人を呼んでスマートに伝えた。
うぅーん⋯⋯父さん側の叔父さんが賑やかだったから、なんか⋯⋯なんか⋯⋯どうしよう?
何から話を切り出したらいいかな?って頭の中でグルグルとしていると、叔父さんの方から話をしてくれた。
「急に電話が来たから驚いたよ。とうとうそっちの両親の訃報か何かってね」
「ふほう?」
って何だろう?って首を傾げたら、
「死んだって連絡だよ」
なんと!!
「しししし死んでませんよ!僕の家族はみんな生きてます!」
僕が慌てて言うと、叔父さんはフッて笑った。
「だろうな。死んでたら電話で言うもんな」
「はい。あの、そう言う事は何も無くて、僕自身は困っている事も何も無くて、あの⋯⋯その⋯⋯本当に、久しぶりに叔父さんに会いたいなって思って連絡をしました」
「あぁ、キリの態度を見たら分かったよ。他意は無さそうだって。爺さんと婆さんにも会いたいって話だったよな?それはまたの機会にしてくれ。最近2人とも体調が芳しくなくてな。少しゴタゴタしているんだ」
「はい⋯⋯」
こっちは体調あまり良さそうじゃないみたいだけど、お祖父ちゃんお祖母ちゃんもまだ生きてるんだね。
良かった。いつか会えるのかな?
「俺だけで申し訳ない」
叔父さんに深々と頭を下げられてしまった。
「い⋯⋯いえ。僕も何年も会って無いのに急に会いたいって連絡して、すみませんでした。それでも会ってくれて僕は嬉しいです」
「そうか⋯⋯」
大変だ⋯⋯なんか、母さん側の叔父さんとは、なかなか会話が弾まないっ。
助けて!!サガリくーーーん!!!
なんて言っても、助けてくれるわけもなく、僕が頑張らなくちゃいけない。
僕から会いたいって言ったんだからね。
どうしようかな?
叔父さんは、どちらかと言うと真面目な人っぽいから、最初に僕と実家の関係を話した方がいいかもしれない。
「えっとですね、僕⋯⋯最近の話なのですが、家族⋯⋯母さんなんですけど、えぇーっと、メールのやり取りで⋯⋯その、、、絶縁って言われてしまいまして⋯⋯」
「なに?」
叔父さんの顔が怖くなった。
「あっ!!でもですね!!あの!!」
「あいつら、キリに何したんだ?」
あれ?
「どうせ妹がとんでもない理屈でも言ってキリを困らせたのだろう?」
わぁ。
僕が何かやらかしたと思われると思ったのに、叔父さんは母さんの方を疑った。
「うぅーん⋯⋯ちょっと⋯⋯僕が理不尽だと感じる事があって、色々と抵抗?反抗?母さんに言われた事を拒否したら、結果そうなりました」
「あぁ、分かった分かった。だいたい想像はつく。お前は小さい頃から理不尽な扱いを受けていたからな。遅かれ早かれそうなっただろう。で?それで何か困った事でもあったか?」
叔父さんの顔が何となくスッキリしている。
「いえ、本当に何も無いです。もともと家族とは高校卒業してから、ほとんど関わりが無かったので、何も変わりは無いです」
「ははっ!!そうか!それは愉快だ!!」
叔父さんは、とても楽しそうに笑っている。
けど、ちょっと表情が意地悪に見えた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
僕が家族に絶縁宣言された話をした事をきっかけに、叔父さんとの会話は少しスムーズになった。
「俺と妹とは昔から反りが合わなくてね。大人になったら余計に関係は悪化したよ」
「けど、僕が小さい頃は良く叔父さんの家族とも会っていた記憶があります」
「あぁ、あれな。来るたびに両親と俺の家族に金の無心に来ていたんだよ。だったらアレも働いていれば良かったんだ。義弟に聞いたよ。結婚した途端、相談もなく仕事を辞めたってな」
「は⋯⋯はぁ⋯⋯あの、母さんがご迷惑をおかけしまし」
「あぁ、あぁ、謝って欲しいわけじゃない。キリには関係の無い話だよ。もうあの妹の気質みたいなものだ。自分は兄より蔑ろにされて育てたれたのだから経済的援助くらいしたっていいだろ、って言うのが妹の主張でな⋯⋯」
「えぇ~⋯⋯?」
蔑ろ⋯⋯僕みたいな扱いを受けていたのかな⋯⋯叔父さんの性格なら、そんな事しないと思うんだけど。
「俺からしたらアレはだいぶワガママ放題で育てられていたぞ?言っとくけどな?俺は長男だからと、だいぶ厳しく育てられていた。けれども、あの妹はかなり緩く育てられていたよ。腹が立つほどに。親にも妹にもな!」
あ⋯⋯叔父さんがヒートアップしてる⋯⋯うーん、なるほど?コレもなんかきょうだいあるあるな話な気がする。
「⋯⋯何処にでもある、長子と次子の扱いの差だよ。大人になって子を持ったら理解が出来るレベルの話だ。けれども、妹は理解が出来なかった。それだけの話だ」
「そうですか⋯⋯」
「そんな事より、せっかく会ったのだからキリの話を聞かせてくれないか?随分と会って無いのだから、積もる話もあるだろう?」
「はい。僕は今⋯⋯」
叔父さんには、僕の今の仕事を中心に話をした。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「ダブルワーク?そんな掛け持ちしなくてはならないくらい収入が低いのか?」
仕事の話をしたら、勘違いされてしまった。
「いえっ、そう言う事ではないです。どちらの仕事も続けたいので、お互いの会社に許可を貰って、半々で働いているんです」
「ほぉ?今はそんな働き方も出来るんだな。確か高校を出た後は清掃会社で働いていたよな?」
「そうです。そっちの仕事もしつつ、外国人向けの旅行代理店でも働いています。そっちは主に海外からの観光客向けの通訳と観光案内です」
「通訳?キリ、英語話せたのか?」
配膳されたご飯を食べながら、僕の仕事の話をした。
高卒で就職したから、今の僕の通訳の仕事は意外だったみたいで、凄く驚かれた。⋯⋯僕もまさかそんな事が出来るようになるなんて思って無かったからね、叔父さんの驚きには共感するよ。
「話せるようになりました。学生の頃は英語なんてチンプンカンプンだったのに、大人になって勉強し直したら、なんか、出来るようになりました」
サガリ君が持ってきた学習教材で~とか、サガリ君が先生になって~って言うのは言わなかった。
サガリ君の話はまだ出してないからね。
「⋯⋯相当、努力したんだな。キリは偉い」
「へへ⋯⋯ありがとうございます」
清掃会社での研修だったり、現場の話だったり、通訳の方では、そもそものきっかけがラキちゃんのライブ会場での出会いだったんだよ、とか。たくさんの事を話したけど⋯⋯なんとなく、サガリ君の事は話せなかった。
なんでだろう?
本能的に、まだ話さないほうが良いって思ったんだよね。
叔父さんは、今も現役公務員で市役所の戸籍課で働いているんだって。
お堅い仕事だよって笑ってた。
奥さん⋯⋯叔母さんは、ずっと運送会社の経理事務で働いていたんだけど、数年前に急に保育士になりたいって言いだして、独学で勉強して資格を取って近所の保育園に転職したんだって。
「妻を見ていたからかな。大人になってもやりたい事があれば、いくつになってもチャレンジって出来るんだなって思ったし、キリもそう言うタイプなのだろうって。それでも、仕事をしながらの勉強は大変だっただろう?良く頑張ったな」
しみじみと言われた。
叔母さんかぁ。会いたいな。ちょっとその話、もっと詳しく聞いてみたくなっちゃった。
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食事もデザートまで終わって、少しだけ沈黙が続いた。
「今度は、俺の家においで。妻と、娘と孫にも会って欲しい。⋯⋯正直な事を言うと、キリと会うまで俺はかなり警戒していた。アレの息子だから、、、何かトンデモ要求をしてくるのでは無いかと⋯⋯だから会うのは2人きりだし家から離れた場所だし、、、気を悪くさせてしまったなら謝る」
そっか。
外で会うのは、僕が警戒されていたからなのか。
んー、でもそうだよね。何年も音信不通だった甥が会いたいだなんて、怪しさ満載か。
「いえ、僕の方こそ、ずっと連絡取って無かったのに、いきなり会いたいって連絡してごめんなさい」
「⋯⋯連絡を、取れなかったのだろう?妹に何か言われていたんじゃないのか?」
「え⋯⋯と⋯⋯」
「お前が高校卒業したばかりの正月に、一人で会いに来てくれただろ?俺たちは本当に嬉しかった。それを、後日やってきた妹家族に話したらな、妹が鬼の形相に変わっていたんだよ。何を言われた?」
「あは⋯⋯は⋯⋯勝手に⋯⋯行くんじゃないって⋯⋯」
物乞いしたとか、そこは言わなくていいよね。だって何も貰ってないし。
「そうか。これからは、事前に連絡もらえれば気にせず来て大丈夫だ。向こうの家族はこちらに来ないから、言いようもない。⋯⋯ただ、祖父母は気を付けたほうが良い。滅多に来ないとは言え、正月には妹家族も顔を出す。お前の話が出ないとも言い切れない」
「⋯⋯はい。分かりました」
こっちも、お祖父ちゃんお祖母ちゃんには会えなさそう。
仕方ないか。僕はあの家族に絶縁された身なんだし。
叔父さん家族に会えるだけでも良しとしよう。
父さん側の叔父さんみたいな、感情丸出し~な人では無かったけど、話してみると、やっぱり優しい叔父さんだった。
お店を出て、改めてお礼を言う。
「叔父さん、ごちそうさまでした。たくさん叔父さんとお話が出来て、僕は嬉しかったです」
「どういたしまして。俺も、楽しかったよ。キリは本当に変わらない、良い子のままだったな。また、会える日を楽しみにしている」
ふわっと、頭に何かが乗っかったと思ったら、叔父さんの手だった。
優しく乗った手が、髪の毛を撫でている。
「艶々の髪の毛だな⋯⋯どういう手入れしてんだ?」
「へ?」
「いや、⋯⋯最近俺の頭部が淋しくなってきてな⋯⋯ヘアケアとか、気にしているんだよ。キリは、まだ育毛とか関係なさそうだが、、、髪質が凄く良さそうだったから」
ここでまさかの髪の毛の話!?
「えっと⋯⋯なんか、良い匂いのするオイル塗ってます!」
サガリ君が!とは言えなかったけど、曖昧にエヘヘって笑っておいた。
家帰ったら、オイルのメーカー調べて叔父さんに教えようっと。
そうそう、叔父さんとは携帯電話の番号とは別に、連絡用アプリのアカウントも交換した。
叔父さんはね、電話よりそっちの方が気安いんだって。
⋯⋯電話より文章の方が良いって、母さんみたいだなって思ったのは内緒。
また今度、って言って叔父さんと別れた。
こっちも会えて良かったな。
父さん側の叔父さんとは、良い再会が出来た。
母さんの方はどうだろう?
父さん側の叔父さんと同様に都合を聞くために電話をかけた。
出てくれない可能性も覚悟はしていたけど、少し長めにコールしたら出てくれた。
『キリか。どうした急に』
「叔父さん、お久しぶりです。あのね、急なんだけど、久しぶりに叔父さんに会いたいなって思ったんだ。出来れば、お祖父ちゃんお祖母ちゃんにも会いたくて、ご都合はいかがですか?」
ふふっ。ここは2回目だからね。
スムーズに言えたと思う。
そして、当たり前の様に横にはサガリ君がいるよ。
返事まで、ちょっと沈黙が続いたのだけど、叔父さんは会ってくれる約束をしてくれた。
でも、お家じゃなくてお店ならいいよって言われたから、僕もそれで大丈夫って伝えた。
叔父さんは、まだ仕事をしているから土日じゃないと無理だって言ってたから、次の僕の土曜日休みの日でお願いをした。
最後に、叔父さんから
「何か困りごとか?」
って聞かれたんだけど、何も無くて、ただ久しぶりに会いたいんだって伝えたら、また少し間が空いて、
「分かった」
って言われた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
約束の日、僕は一人で叔父さんに言われたお店に向かった。
叔父さんの住んでいるところと、僕が住んでいるところの、ちょうど真ん中にある和食屋さんだった。
予約をしているから、叔父さんの名前をお店の方に伝えれば大丈夫だって言われたから、その通りにすると、お店の人に個室を案内された。
まだ叔父さんは来てなくて、僕はキョロキョロと周りを見てしまう。
うーん。ちょっとお高めな場所だぞ?現金は多めに持ってきたけど、足りなかったらクレジットカード使わせてもらおう。
なんて考えていたら、叔父さんもやって来た。
⋯⋯やっぱり前に会った時に比べると、ちょっと老けたなぁなんて考えてしまった。
「こんにちは、お久しぶりです。キリです」
挨拶をすると、叔父さんはちょっと戸惑ってるみたいに固まっていた。
「キリ、か?⋯⋯お前、本当に変わらないな⋯⋯いや、10年前からは変わってるが⋯⋯小さい頃のままだな⋯⋯」
あれ?また言われた。
父さん側の叔父さんにも似たような事言われたっけ?
今の僕って、そんなに幼いのかな?
「それ、父さんの方の叔父さんにも言われました」
フフって笑うと、叔父さんも少しぎこちなかったけど、笑って「久しぶりだな」と言ってくれた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「久しぶりの再会だからな、ここは叔父さんが持つよ。好きなものを頼みなさい」
そう言ってメニューを見せてくれた。
大変だ⋯⋯なんかお高いコース料理ばかりだ。
どうしよう?カツ丼とか親子丼とか無いのかな?なんてペラペラ捲っていると、
「こう言う店は、あまり入らないのか?」
と、叔父さんに聞かれた。
「は⋯⋯はぃ⋯⋯ごめんなさい⋯⋯何を選んだらいいか、僕よく分からなくて⋯⋯」
「そうか。キリもいい歳だからと思って良い店選んでしまったよ。俺が選ぶ。アレルギーか苦手な食材はあるか?」
「いえ、何もありません」
「そうか。じゃぁ、この辺りにしよう。酒は飲むのか?」
「いえ、飲まないです」
「まあ、昼間だしな。ソフトドリンクでいいか?」
「はい」
叔父さんは淡々とメニューを選んで、お店の人を呼んでスマートに伝えた。
うぅーん⋯⋯父さん側の叔父さんが賑やかだったから、なんか⋯⋯なんか⋯⋯どうしよう?
何から話を切り出したらいいかな?って頭の中でグルグルとしていると、叔父さんの方から話をしてくれた。
「急に電話が来たから驚いたよ。とうとうそっちの両親の訃報か何かってね」
「ふほう?」
って何だろう?って首を傾げたら、
「死んだって連絡だよ」
なんと!!
「しししし死んでませんよ!僕の家族はみんな生きてます!」
僕が慌てて言うと、叔父さんはフッて笑った。
「だろうな。死んでたら電話で言うもんな」
「はい。あの、そう言う事は何も無くて、僕自身は困っている事も何も無くて、あの⋯⋯その⋯⋯本当に、久しぶりに叔父さんに会いたいなって思って連絡をしました」
「あぁ、キリの態度を見たら分かったよ。他意は無さそうだって。爺さんと婆さんにも会いたいって話だったよな?それはまたの機会にしてくれ。最近2人とも体調が芳しくなくてな。少しゴタゴタしているんだ」
「はい⋯⋯」
こっちは体調あまり良さそうじゃないみたいだけど、お祖父ちゃんお祖母ちゃんもまだ生きてるんだね。
良かった。いつか会えるのかな?
「俺だけで申し訳ない」
叔父さんに深々と頭を下げられてしまった。
「い⋯⋯いえ。僕も何年も会って無いのに急に会いたいって連絡して、すみませんでした。それでも会ってくれて僕は嬉しいです」
「そうか⋯⋯」
大変だ⋯⋯なんか、母さん側の叔父さんとは、なかなか会話が弾まないっ。
助けて!!サガリくーーーん!!!
なんて言っても、助けてくれるわけもなく、僕が頑張らなくちゃいけない。
僕から会いたいって言ったんだからね。
どうしようかな?
叔父さんは、どちらかと言うと真面目な人っぽいから、最初に僕と実家の関係を話した方がいいかもしれない。
「えっとですね、僕⋯⋯最近の話なのですが、家族⋯⋯母さんなんですけど、えぇーっと、メールのやり取りで⋯⋯その、、、絶縁って言われてしまいまして⋯⋯」
「なに?」
叔父さんの顔が怖くなった。
「あっ!!でもですね!!あの!!」
「あいつら、キリに何したんだ?」
あれ?
「どうせ妹がとんでもない理屈でも言ってキリを困らせたのだろう?」
わぁ。
僕が何かやらかしたと思われると思ったのに、叔父さんは母さんの方を疑った。
「うぅーん⋯⋯ちょっと⋯⋯僕が理不尽だと感じる事があって、色々と抵抗?反抗?母さんに言われた事を拒否したら、結果そうなりました」
「あぁ、分かった分かった。だいたい想像はつく。お前は小さい頃から理不尽な扱いを受けていたからな。遅かれ早かれそうなっただろう。で?それで何か困った事でもあったか?」
叔父さんの顔が何となくスッキリしている。
「いえ、本当に何も無いです。もともと家族とは高校卒業してから、ほとんど関わりが無かったので、何も変わりは無いです」
「ははっ!!そうか!それは愉快だ!!」
叔父さんは、とても楽しそうに笑っている。
けど、ちょっと表情が意地悪に見えた。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
僕が家族に絶縁宣言された話をした事をきっかけに、叔父さんとの会話は少しスムーズになった。
「俺と妹とは昔から反りが合わなくてね。大人になったら余計に関係は悪化したよ」
「けど、僕が小さい頃は良く叔父さんの家族とも会っていた記憶があります」
「あぁ、あれな。来るたびに両親と俺の家族に金の無心に来ていたんだよ。だったらアレも働いていれば良かったんだ。義弟に聞いたよ。結婚した途端、相談もなく仕事を辞めたってな」
「は⋯⋯はぁ⋯⋯あの、母さんがご迷惑をおかけしまし」
「あぁ、あぁ、謝って欲しいわけじゃない。キリには関係の無い話だよ。もうあの妹の気質みたいなものだ。自分は兄より蔑ろにされて育てたれたのだから経済的援助くらいしたっていいだろ、って言うのが妹の主張でな⋯⋯」
「えぇ~⋯⋯?」
蔑ろ⋯⋯僕みたいな扱いを受けていたのかな⋯⋯叔父さんの性格なら、そんな事しないと思うんだけど。
「俺からしたらアレはだいぶワガママ放題で育てられていたぞ?言っとくけどな?俺は長男だからと、だいぶ厳しく育てられていた。けれども、あの妹はかなり緩く育てられていたよ。腹が立つほどに。親にも妹にもな!」
あ⋯⋯叔父さんがヒートアップしてる⋯⋯うーん、なるほど?コレもなんかきょうだいあるあるな話な気がする。
「⋯⋯何処にでもある、長子と次子の扱いの差だよ。大人になって子を持ったら理解が出来るレベルの話だ。けれども、妹は理解が出来なかった。それだけの話だ」
「そうですか⋯⋯」
「そんな事より、せっかく会ったのだからキリの話を聞かせてくれないか?随分と会って無いのだから、積もる話もあるだろう?」
「はい。僕は今⋯⋯」
叔父さんには、僕の今の仕事を中心に話をした。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
「ダブルワーク?そんな掛け持ちしなくてはならないくらい収入が低いのか?」
仕事の話をしたら、勘違いされてしまった。
「いえっ、そう言う事ではないです。どちらの仕事も続けたいので、お互いの会社に許可を貰って、半々で働いているんです」
「ほぉ?今はそんな働き方も出来るんだな。確か高校を出た後は清掃会社で働いていたよな?」
「そうです。そっちの仕事もしつつ、外国人向けの旅行代理店でも働いています。そっちは主に海外からの観光客向けの通訳と観光案内です」
「通訳?キリ、英語話せたのか?」
配膳されたご飯を食べながら、僕の仕事の話をした。
高卒で就職したから、今の僕の通訳の仕事は意外だったみたいで、凄く驚かれた。⋯⋯僕もまさかそんな事が出来るようになるなんて思って無かったからね、叔父さんの驚きには共感するよ。
「話せるようになりました。学生の頃は英語なんてチンプンカンプンだったのに、大人になって勉強し直したら、なんか、出来るようになりました」
サガリ君が持ってきた学習教材で~とか、サガリ君が先生になって~って言うのは言わなかった。
サガリ君の話はまだ出してないからね。
「⋯⋯相当、努力したんだな。キリは偉い」
「へへ⋯⋯ありがとうございます」
清掃会社での研修だったり、現場の話だったり、通訳の方では、そもそものきっかけがラキちゃんのライブ会場での出会いだったんだよ、とか。たくさんの事を話したけど⋯⋯なんとなく、サガリ君の事は話せなかった。
なんでだろう?
本能的に、まだ話さないほうが良いって思ったんだよね。
叔父さんは、今も現役公務員で市役所の戸籍課で働いているんだって。
お堅い仕事だよって笑ってた。
奥さん⋯⋯叔母さんは、ずっと運送会社の経理事務で働いていたんだけど、数年前に急に保育士になりたいって言いだして、独学で勉強して資格を取って近所の保育園に転職したんだって。
「妻を見ていたからかな。大人になってもやりたい事があれば、いくつになってもチャレンジって出来るんだなって思ったし、キリもそう言うタイプなのだろうって。それでも、仕事をしながらの勉強は大変だっただろう?良く頑張ったな」
しみじみと言われた。
叔母さんかぁ。会いたいな。ちょっとその話、もっと詳しく聞いてみたくなっちゃった。
▪▫❑⧉◻︎□◻︎□◻︎⧉❑▫▪
食事もデザートまで終わって、少しだけ沈黙が続いた。
「今度は、俺の家においで。妻と、娘と孫にも会って欲しい。⋯⋯正直な事を言うと、キリと会うまで俺はかなり警戒していた。アレの息子だから、、、何かトンデモ要求をしてくるのでは無いかと⋯⋯だから会うのは2人きりだし家から離れた場所だし、、、気を悪くさせてしまったなら謝る」
そっか。
外で会うのは、僕が警戒されていたからなのか。
んー、でもそうだよね。何年も音信不通だった甥が会いたいだなんて、怪しさ満載か。
「いえ、僕の方こそ、ずっと連絡取って無かったのに、いきなり会いたいって連絡してごめんなさい」
「⋯⋯連絡を、取れなかったのだろう?妹に何か言われていたんじゃないのか?」
「え⋯⋯と⋯⋯」
「お前が高校卒業したばかりの正月に、一人で会いに来てくれただろ?俺たちは本当に嬉しかった。それを、後日やってきた妹家族に話したらな、妹が鬼の形相に変わっていたんだよ。何を言われた?」
「あは⋯⋯は⋯⋯勝手に⋯⋯行くんじゃないって⋯⋯」
物乞いしたとか、そこは言わなくていいよね。だって何も貰ってないし。
「そうか。これからは、事前に連絡もらえれば気にせず来て大丈夫だ。向こうの家族はこちらに来ないから、言いようもない。⋯⋯ただ、祖父母は気を付けたほうが良い。滅多に来ないとは言え、正月には妹家族も顔を出す。お前の話が出ないとも言い切れない」
「⋯⋯はい。分かりました」
こっちも、お祖父ちゃんお祖母ちゃんには会えなさそう。
仕方ないか。僕はあの家族に絶縁された身なんだし。
叔父さん家族に会えるだけでも良しとしよう。
父さん側の叔父さんみたいな、感情丸出し~な人では無かったけど、話してみると、やっぱり優しい叔父さんだった。
お店を出て、改めてお礼を言う。
「叔父さん、ごちそうさまでした。たくさん叔父さんとお話が出来て、僕は嬉しかったです」
「どういたしまして。俺も、楽しかったよ。キリは本当に変わらない、良い子のままだったな。また、会える日を楽しみにしている」
ふわっと、頭に何かが乗っかったと思ったら、叔父さんの手だった。
優しく乗った手が、髪の毛を撫でている。
「艶々の髪の毛だな⋯⋯どういう手入れしてんだ?」
「へ?」
「いや、⋯⋯最近俺の頭部が淋しくなってきてな⋯⋯ヘアケアとか、気にしているんだよ。キリは、まだ育毛とか関係なさそうだが、、、髪質が凄く良さそうだったから」
ここでまさかの髪の毛の話!?
「えっと⋯⋯なんか、良い匂いのするオイル塗ってます!」
サガリ君が!とは言えなかったけど、曖昧にエヘヘって笑っておいた。
家帰ったら、オイルのメーカー調べて叔父さんに教えようっと。
そうそう、叔父さんとは携帯電話の番号とは別に、連絡用アプリのアカウントも交換した。
叔父さんはね、電話よりそっちの方が気安いんだって。
⋯⋯電話より文章の方が良いって、母さんみたいだなって思ったのは内緒。
また今度、って言って叔父さんと別れた。
こっちも会えて良かったな。
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かつて一線で活躍した元探索者・レイジ(42)は、今や東京の片隅で地味な初心者向け配信を続ける"おじさん配信者"。安物機材、スポンサーゼロ、視聴者数も控えめ。華やかな人気配信者とは対照的だが、その真摯な解説は密かに「信頼できる初心者向け動画」として評価されていた。
そんな平穏な日常が一変する。ダンジョン中層に災厄級モンスターが突如出現、人気配信パーティが全滅の危機に!迷わず単身で救助に向かうレイジ。絶体絶命のピンチを救ったのは、国家直属のS級騎士・ソウマだった。
冷静沈着、美形かつ最強。誰もが憧れる騎士の青年は、なぜかレイジを見た瞬間に顔を赤らめて……?
若き美貌の騎士×地味なおじさん配信者のバディが織りなす、年の差、立場の差、すべてを越えて始まる予想外の恋の物語。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―
無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」
卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。
一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。
選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。
本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。
愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。
※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。
※本作は織理受けのハーレム形式です。
※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください
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