魔法の数字

初昔 茶ノ介

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2章:学園生活

放課後の特訓

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次の日、私は一日の授業を終えて手早く荷物をまとめた。

「リン、今日の放課後は何する?」

「あ…ハナちゃん…私…用がある…から。バイバイ」

「え?リン?」

私は足速に教室を出て2組へ向かった。
教室の前につくとなんて言って中へ入るか考えてなかったことに気がついた。

失礼します…?でも同学年だし…何も言わずに入る?さすがに失礼だよね…。

「ねぇ~そこのひとぉ~」

「ひゃっひゃい!」

私がうんうんと考えているところに急に話しかけられて驚きから変な声を出してしまった。

「こんなところでぇ~何してるのぉ~?迷子ぉ~?」

「えっと…人を…探してて…」

私に話しかけてくれた人はなんだかすごくのんびりした話し方で、見た目は金色の髪に大きなリボンがお嬢様のような雰囲気を感じさせた。

「あぁ~人探しかぁ~。なんてお名前の人ぉ~?」

「ヴェル・グラスくん…」

「あぁ…ヴェルくんかぁ~…ヴェルくん!?」

「は…はい…」

私は急に肩をガシッと捕まれびっくりしてしまった。

「え、えっとぉ…あなたヴェルくんとはどういう…」

「リンさん!」

話をしてる途中でヴェルくんが教室から出てきた。

「あ、ヴェルくん…」

「すみません…ちょっと資料をまとめていたら遅れてしまって…って何してるんです…?」

ヴェルくんから見たら私は知らない女の子に肩を捕まれて壁に追いやられる形になっていた。

「ヴェルくぅん…この人とは…」

「あぁ、1組のリン・セルフィアさん。昨日助けてもらったんだ。リンさん、その子は僕の幼なじみの…」

「自己紹介くらいぃ~できますよぉ~」

そう言って女の子は私の肩を離してヴェルくんの横に立った。

「ヴェルくんの幼なじみのリリス・ライト・クリステアですぅ~」

私はリリスさんの名前を聞いておばあちゃんの『九花の一族は名前と家名の間に王様から賜った勲名を入れる』という話を思い出した。

「九花の…一族…?」

「あ~はい~。私の家はぁ~代々光魔法を司ってますぅ~」

九花の一族の人が同学年にいるとは…。

「もしかしてぇ~あなたもぉ~九花の一族ですかぁ~?」

「えと…名前は…違いますけど…風魔法を…」

「風魔法ですかぁ~ということは~エアの家ですねぇ~。リリー様はぁ~ご健在であられますかぁ~?」

「おばあちゃんを…知ってる…の?」

「はい~1度~お屋敷のほうに~招待されたことがぁ~あるんです~」

「そうなんだ…おばあちゃんは…元気です…」

「それは~何よりです~。それで~」

さっきまでにこやかに話していたリリスさんの目が鋭くなった。

「ヴェルくんにぃ~なんの御用だったんですかぁ~?」

「ちょっとリリス、リンさんは僕に協力してくれるって言ってわざわざ来てくれてるんだから」

「協力ぅ~?」

そう言ってリリスさんは私をジーと見つめた。

「次の…昇組試験の…お手伝い…」

私はあまり人に見られるのが好きじゃないので、ついつい目をそらしてしまった。

「ふぅ~ん…それでぇ~あなたはぁ~ヴェルくんに何をやらせる気ですかぁ~?」

「え?えと…それは…」

リリスさん…笑ってるけど…目が笑ってない…。

「リ、リリス!もういいでしょ?行こう、リンさん」

ヴェルくんは私の手をとってやや駆け足気味に歩いていく。

「あ、ヴェルくぅーん!」

後ろからリリスさんの声が聞こえたけど、さっきの目を見た後では戻る気にもなれなかったのでそのままヴェルくんについて行った。

「ここまでくればいいでしょう…大丈夫ですか?リンさん」

「はぁ…はぁ…大…丈夫…ちょっと…疲れただけ…」

私達はとりあえず訓練室に入ったが、予想よりも体力のあるヴェルくんにびっくりした。
膝に手をついていた私は、とりあえず息を整えてちゃんと立ってヴェルくんの方を向いた。

「じゃあ…特訓…しよ…」

「そ、そうだね…」

私がそう言うと、ヴェルくんがなぜか顔を赤くして横を向きながら返事をした。

「ヴェルくんは…氷の彫刻作り…どのくらい…できた?」

「そうだね…一応イメージ通りに作るのは得意だよ?でもあんまり多くは作れないし、魔力量的にもそこまで速くは作れないかな」

「ん…じゃあ…まずは…そこから」

「そこ?」

「土魔法…で、金属の剣を…最低4本…20秒…以内…」

「に、20秒!?」

ヴェルくんが20秒と聞いて驚いていたが、それができないと始まらない。

昇組試験は最初の組み分け試験と違って、試験に種類がある。
治癒部門、戦闘部門、補助部門の3つがあり、最も昇組しやすいのは戦闘部門だ。
昨日ママに聞いたが、試験内容は先生が決めた相手との模擬戦闘をして、勝敗は問わず、昇組する担任教師が見込みありとすれば合格というシステムらしい。

ただし、武器の持ち込みはなし、魔法で作成したものなら使用してもいいというルールがある。

「大丈夫…私も手伝う…あと3ヵ月…試験まである…1ヵ月は…この練習…」

「で、でも…」

「ヴェルくん…1組…なりたいん…でしょ?」

私の言葉にヴェルくんがハッとして顔が引き締まった。

「うん…僕、やってみるよ」

「じゃあ…まず、4本…」

「うん!」

ヴェルくんが魔筆を取り出して式を書き始めた。
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