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第1章:装備マニア、異世界に立つ

第7話:初依頼は新人さんと共に

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ライセンスを発行した後、ちょうどお昼の時間になったのでお姉ちゃんと一緒にギルド近くの広場で昼食をとりながら冒険者のライセンスの話を聞いた。
ちなみに今日はお姉ちゃん特製のサンドイッチだ。

ライセンスはこの国のどこのギルドでも有効になり、冒険者としての資格があることでどこの街にも入れるそうだ。
他にも冒険者としての特典的なものがあるらしいが、それはおいおいわかるそうだ。

「それじゃあ、この後は簡単な依頼をするといいよ。ゴブリンの討伐は常設の依頼だし、薬草採取とかなるべく安全なのでもちゃんと報酬は出るから」

盗賊を倒すところやさっきの冒険者を倒すところを見てもちゃんと女の子として見てくれている。
あの筋肉ダルマボコボコ事件で私を見てビビったりする人がいたりするのだ。
やっぱりお姉ちゃんは大切だね。

昼食を終えて私は再び冒険者ギルドへ戻ってきた。
中に入るとひそひそと私のことを話している人がいる。
「あれが例の……」とか「ボングスをやった……」とか。
ボングスって誰だろう?

私はお姉ちゃんと手を引かれて紙がたくさん貼ってあるボードの前に来た。

「これが依頼ボード。ここにある紙を受付に持ってきて、依頼を受けるの。左から順にランクの低い順になってるから。ランクは自分のランクより高いものは一つ上までなら受けられるよ。カンナちゃんならランク4までだね。ちなみにランクの上がり方はそのギルドに一任されているから、どうやったらランクが上がるかというのはギルマス次第ってところ」

リズさんはなんというか…気まぐれであげたりしそうだ。

「これなんていいんじゃないかな?」

お姉ちゃんは紙を1枚とって見せてくれた。
 
ーーーーーーーーーー
街外れのゴブリン討伐(常設依頼)

ランク:1

街外れの森にいるゴブリンの討伐。
5体討伐で1回達成とする。

報酬:4000メル


ーーーーーーーーーー

ゴブリン討伐かぁ。
5体くらいなら見つければ10秒で終わる。
ちなみに、盗賊討伐の報奨金があるのでお金にはさほど困っていない。
ざっくり言うと20万ほどもらえた。
これでもいいかなぁ。

「だーかーらー!ランク2のやつでいいじゃんか」

「でも…まだ冒険者なりたてでランク2なんて…」

「僕も無茶だと思う」

ゴブリンの依頼で決めようと思ったところで横から声が聞こえた。
右を向くと、腰に中型の剣を持ってる男と、大型の盾と中型の剣を背中に持ってる男と、杖を両手で持ってる女性が何やら口論になっているようだった。

「ウルフの討伐だろ?前はゴブリンだって倒せたんだ。いけるって」

何か、見覚えのある顔なんだけど、この世界に来てそんなに人と知り合っていないしなぁ。

「あの人達は前の冒険者の試験で受かった人達だよ。カンナちゃんが最初にゴブリンを倒した時の人達」

あーだから見覚えがあったんだ。
でも、今ウルフって聞こえた。
ウルフといえば装備作りの第一歩、毛皮が取れる代表だ。

「新人さんは最初は新人同士でパーティを組むことが多いから、あの人たちもそうなんじゃないかな」

なるほど、たしかに最初に組んだことのあるパーティーならある程度実力もわかっているだろう。
しかし、私もランク2のボードが見たい。もっというとウルフを倒したい。
剥ぎ取りはできないが毛皮がもらえるならぜひとも倒したい。

「お姉ちゃん、ウルフって強い?」

「え?うーん、ゴブリンと同じくらい?私は戦ったことがないからよくわからないけど、あそこに貼ってあるのはこっちのよりも討伐数が多いからランクが高いの」

私はランク2のボードに向かって、ウルフの依頼の紙を持った。

ーーーーーーーーーー
ルーミン村周辺のウルフ討伐

ランク2

ルーミン村に向かいウルフの群れの討伐を行うこと。
群れの為、数は不明だが村人の報告によれば10匹ほどではとの報告あり。

報酬:20000メル
追加報酬:ウルフの数による

ーーーーーーーーーー

ウルフがいっぱい!よし、これにしよう。
私は紙を持ってお姉ちゃんのところに戻ろうとした。

「あ!それは俺たちが狙ってた依頼だぞ!」

もめていた中型剣を携えている男が私に文句を言う。
そういうものなのだろうか。まだボードに貼ってあったし、私が先にとってもいいのではないだろうか。

「……だから?」

「だからじゃねーよ。何勝手に持ってこうとしてんだよ」

「だってまだボードに貼ってあったし」

「今から取ろうとしてたんだよ」

「でも私が先に取ったし、これは私の依頼じゃない?」

私と男が睨み合っているとお姉ちゃんが会話に入ってきた。

「カンナちゃん、どうしたの?」

「まだボードに貼ってあった依頼を先に取ったら、先に狙ってたってもんく言われた」

「ボードに貼ってあったなら依頼は早い者勝ちよ。ライセンス発行時の説明で言われてるでしょう?」

流石に受付嬢に言われれば言い返せないのか黙る男。

「ほら、ルーク。今回は諦めよ?」

「いい加減ゴブリンとか薬草とか飽きたんだよ」

「それも大事な下積みだ」

「だいたいこの子供がランク2のウルフ討伐を受けてんのに悔しくねーのかよ」

男は私を指差して二人に言う。
人に指をさしちゃいけません。

「この子はこう見えてギルマス推薦であなた達と同期でもランク3よ」

「はぁ!?ランク3?こんな子供が?」

もういいわ、その反応。

「でもカンナちゃん、この依頼を1人でできる?ちゃんと村までいける?」

お姉ちゃんがそんなことを聞いてくる。
たしかに道には迷いそうだ。
リルさんもさすがに道までわからないだろう。

「わかんないけど、なんとかなる」

「えー…心配だなぁ。そうだ、あなた達カンナちゃんと一緒にこの依頼行ってくれないかしら?」

何言ってるんだ、このお姉ちゃんは。
この前のゴブリン戦を見ていてもあきらかに私のほうが実力は上だし、弱い人がいても邪魔なだけだ。

「子供を守りながら戦えってのかよ」

この男さっきの話聞いてなかったのか。
私のほうがランクは上だって言ってるのに。

「舐めないで。自分の身くらい自分で守れるわ」

「こーら、そんな言い方しないの」

「……ごめんなさい」

お姉ちゃんに言われてしぶしぶ謝る。

「この子、この街に来たばかりだからいろいろ教えてあげてほしいの。報酬は話し合えばいいし、実力は私が保証するわ」

「お前ら、どうする?」

「不安だけど、ルークがどうしても受けたいなら…」

「僕も。最悪この子は僕が近くで守ってあげればいいし」

この人も私が弱いと思っているのか。
まぁ、もうなんでもいいや。
ウルフの素材さえ手に入れば。

「わかった。それで手を打ってやる」

なんで上からなのよ。
まぁ、もういいや。
私は紙をその男に渡して、お姉ちゃんに抱きつく。

「依頼はあなたが出してきて。私はしばらくお姉ちゃんといるから」

「やっぱり子供じゃねーか。わかったよ。出発は明日の朝だ。いいな」

私がうなづくと3人は受付に歩いて行った。

「お姉ちゃん、私のこと弱いと思ってる?」

一応お姉ちゃんに聞いてみる。

「すごく強いと思ってるけど…村と反対方向にリルさんで全力疾走とかしちゃうと迷子になりそうだし…」

あぁ…なるほど。お姉ちゃんはすごい。なんでもお見通しだ。
その後はお姉ちゃんの受付の横に座って待っていた。
周りの受付嬢さん達に頭を撫でられたり、お菓子をもらったりした。

お姉ちゃんの仕事が終わったら一緒に家に帰って、お姉ちゃんの美味しいご飯を食べた後一緒にベットに着く。
うん。幸せだった。このままずっと寝ていたい。

そして、翌日。
朝早くにお姉ちゃんに起こされて、街の門に向かう。
すでに3人は準備をして待っていた。
私の姿を見て、ルークはため息をついた。

「やっときたか。早くいくぞ」

「それじゃあこの子のことお願いね」

お姉ちゃんが頭を軽く下げて私の背中を押す。
なんか保育園でお見送りされる園児の気分だ。
私は今だにルークと睨み合いながら街を出発した。
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