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本編

39 いざ扉の向こうへ

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 扉を開けるとそこには、物語に出てくるような妖精の羽を持つ美しい女性がいた。
 そして聖職者のような真っ白い法衣を身に纏い、その女性にひれ伏して居る者達の姿があった。

 ここは集会所から何かで今現在集会が行われているのだろう。

 敵を探す手間が省けたというか、蜂の巣にされに着てしまったというか。
 魔が悪いのは確かだった。

 しかし何故だろう、綺麗な見た目とは裏腹に、以前感じた様な不快感を覚える。

 
 「なっ、誰ですか、何処から現れたのですか!・・・お前は・・・ゲルトルーデ・ハイル・フェーブス・・・」


 綺麗な女の人は私を視界に入れた途端に、その美しい顔を歪め、憎々しげにこちらを睨む。


 「ウェルテクスさん、あの人ってもしかして精霊なのですか?」

 「確かに光精霊には羽が生えてはいるが、あんなに歪な、混ざった様なものが精霊なはずはないぞ・・・」


 歪?混ざった様なもの?うーん、綺麗な女性にしか見えないんだけど。
 もしかしたらウェルテクスさんには何か別のものに見えているのかもしれない。
 よくは分からないが、取り敢えず精霊に似ているけれど精霊ではないということか。
 いや、それよりも・・・


 「誘拐した子を何処へやったのッ!」

 「教えるはずがないでしょう。それに貴方はここで終わりなのよ!」


 その女性は何か呪文の様なものを唱えると、私めがけて撃ち出してくる。

 カリーン先生に鍛えられた反射神経なめんなよと思いつつ、撃ち出されたものの軌道を読み避ける。
 しかしソレは避けると急に軌道を変え私へと向かってきた。
 慌てて魔弾を撃ち、その上で無効化を試みたがそれらをすり抜けソレは私へと吸い込まれていったのだ。


 「きゃああああ!・・・あれ、なんともない?」

 「クッ、まだ早過ぎたか。・・・皆さん、わたくしはこれまでの様です。悪しき力に毒されてしまい、暫し療養が必要となってしまいました。それまで皆様に精霊の御加護があらん事を」

 「ラウラ様・・・」

 「ラウラ様!私もお供を!」


 私に向けていた憎悪とも取れる様な表情を、慈愛に満ちた聖母の様な表情へと変え信者達へと呼びかけると、その女性は勢いよく飛び立つ。


 「待てっ、逃すか!」


 カリーン先生は素早く跳躍し、女性の後を追いつつ魔弾を撃ち込む。
 天井に向けて放たれた幾多の魔弾は命中したのだろうか、硝煙をあげ2人は煙に包まれる。
 

 「逃げられました。深手は負わせられたかもしれませんが、急に光に包まれて消えてしまいました。うぅ、一生の不覚・・・」


 カリーン先生はシュタッと私の前に着地すると心底悲しそうな顔をして報告した。


 「取り敢えず、ここに残された信者達を確保です。あのラウラという女性についても、後でその者達に聞き出すことにしましょう」

 「了解しました!縛りあげておきますのでトルーデ様は早くユーディット様を!」

 「わかった、そっちの事はお願いね!」


 私はわかばとともに集会所から飛び出しユディの捜索に取り掛かる。しまった、ユディの場所を吐かせる前に出てきてしまった!
 まあわかばがリードを引っ張ってこっちだと主張しているし、付いて行こう。

 
 暫く進んでいると突然わかばが立ち止まり、脇にある扉をガリガリとひっかき始めた。


 「ここにいるの?」

 「わんっ!わんわん!」


 わかばは元気よく答える。
 私は短刀を創造し片手に構え、ゆっくりと扉を開く。


 「どなたですか・・・?」


 ただ捕らえるという事だけを目的とした、とても簡素で粗末な牢の中に、その中には到底相応しくない少女が座り込んでいた。
 憔悴しきった様子で顔色が酷く悪い。


 「ユディ、助けに来たよ!」

 「トルーデ!どうしてここへ・・・まさかトルーデも捕まってしまったの!?」

 「捕まってるならこんなに自由に動き回ってないよ。信者達はカリーン先生たちに任せたし、早くこんなところ出よう」


 私は牢に向かい魔弾を放つ。しかし牢が傷つく事はなくさらに放った魔弾が反射し私へと勢いを増して迫って来た。
 避け・・・いやもう避けられない、む、無効化!
 私は無属性魔法を詠唱し放った魔弾を消滅させる。


 「無属性魔法だけ反射するのかと思いましたが、まさか他の属性まで駄目だなんて・・・そうですわ、鍵!鍵は持っていらっしゃらないのですか!?」

 「持ってるなら攻撃しないよ・・・鍵、そうか!錠前の部分なら壊せるかも!光よリヒト


 錠前は破壊・・・される事なく、魔弾を私に向かって反射させて来た。
 私はまたこれを無効化する。これはもしかしなくとも鍵を貰いに行った方が良い・・・?


 『マスター、どうなさいましタ?開かないのデスか?』


 後方から私を追いかけて来たのか、エルムが私へと問いかける。


 「どうやら魔法での攻撃が効かないみたい。錠前にも試してみたんだけど全然ダメで・・・仕方ないから鍵か何かないか探しに行こうと思ってたんだよね」

 『そうだったのデスか。ここを壊してでも開けられれば良いのデスね?・・・攻撃形態アタックフォルム起動。エーテル循環完了。出力完了。』


 エルムの手首の宝玉のようなものが煌き、腕全体にカリーン先生が破壊してしまったロボットのような装甲が現れる。
 エルムは牢の鉄格子を鷲掴みにすると、いとも簡単に人ひとりが通れる空間を作り出す。


 「どうやら物理耐性は無かったようデス。後で解析を行いたいので、一部持ち帰ることは可能でしょうカ?」

 「良いけど・・・すごいね、エルム!」

 「あのう、この方はどなたなのですか?何か親しげなのですが。それとこの可愛いふわふわの子!抱っこしていっても良いですか?」

 「あはは、そこらへんは後で説明するよ・・・とりあえずカリーン先生のとこに戻ろう!行こうユディ!」


 私はユディの手を取り、カリーン先生の元へと駆け出すのであった。
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