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その5

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赤ん坊の夢は安らか……大半はそうなのですが、時にはへんてこりんな夢を見ることだってあるのです。

例えば……このゲームのキーパーソンである主人公に対峙する人間、つまり、悪役令嬢です。彼女が出しゃばってくると、結構大変なことになるのです。

一種のペナルティーとでも言えばいいのでしょうか?選択肢をミスリードしすぎると、一定の割合で虫のように湧いてくるのです。ああ、怖い怖い。でも実際、私も悪役令嬢の被害にあったことがあります。

まず、私は勉強もできず素行不良な令嬢として描かれます。すると、悪役令嬢というのはその逆で、成績優秀かつ品行方正(仮)に描かれるのです。ただ、悪役と名のつく通り、その知略を用いて人を利用したり、時には騙したりするわけでありまして、必ずしも品行方正とは言えないのでございます。

私に言わせると、確かに悪役令嬢は美しく、誰もが羨むスクールカーストのトップに君臨する令嬢なのですが、だからといって、カルディオ公爵様とお似合いか、と言われますと、そうではないと思うのです。やはり、カルディオ公爵様のお隣は、成績優秀で品行方正で気品あふれる令嬢様がいらっしゃるのがよいかと思うわけでございます。もちろん、私がそんなことを口にする権利なんてございませんけれども。


こんな私にせめてものチャンスがあるとするならば、それは、カルディオ公爵様が学院を卒業なさって、すぐさま王宮に配属されることになりますので、そこで出会う道を探すしかありません。そのためには、私が女官となって、王宮に仕えることが可能であれば、手っ取り早いのですが、この赤ん坊の状態ではもちろんできませんし、どうすればいいのやら……困りましたね。

ちなみに、カルディオ公爵様の力の源は、何も卓越した武術能力だけによるものではございません。科学と魔法が同時並行で発達した世界でございますから、当然、魔法の習いも重要になってくるのでございます。私が魔法を使うことはできませんので、やっぱり科学を勉強するしか、方法はないようですね。

勉強嫌いの私が、全てはカルディオ公爵様のために。そう考えれば、何も苦労なんてありませんでした。早く大きくなって、勉強できる年頃になりたい……とにかく、赤ん坊の時期を早く過ごさなきゃと思いました。



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