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妹マリア
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聖女クリスの妹マリアは、クリスよりも容姿端麗だった。両親も絶大なる期待を寄せて、マリアを育てることにした。しかしながら、例の一件の後に、クリスが聖女であることが判明すると、両親の期待は、瞬く間に、クリスへ傾けられた。
皇帝陛下を含み、王家の人々がみな、多少は不細工でも聖女であるクリスを慕うようになった。このことについて、マリアは不満だった。クリスに命を助けられたことは感謝したが、その結果、自分が世の貴族たちから見向きもされなくなったことが嫌だった。
そこで、マリアは自分よりもはるかに格下の貴族たちの相手をするようになった。上位貴族相手で無ければ、公爵令嬢マリアという名分が功を奏した。その美貌をふんだんに用いて、男たちを虜にした。
そんな日々を何年も重ねていくにつれて、マリアは多くを占める下級貴族たちの間で人気者になった。そうすると、欲が膨らむ。この男たちよりももっともっと身分の高い貴族の相手をすることはできないだろうか、そう考えた。
クリスが第一王子であるハマーと婚約することを知って、マリアはなんとかして、ハマーに近づく方法はないものだろうか、と考えるようになった。築き上げた下級貴族たちのネットワークを用いて、上位貴族の何人かに口利きを頼むことはできた。しかしながら、それを王家の人間にまで広げることは、難しかった。
こうなったら直談判するしかない、と思ったマリアは、王家主催のパーティーに参加して、人一倍目立つドレスに身を包み、多くの男たちの目を引き付けることに成功した。それは、他ならぬ王子ハマーも例外ではなかった。
ハマーの横には、婚約内定者の聖女クリスが座っていた。クリスは、自分よりも華やいで見えるマリアが羨ましかった。しかしながら、自分が聖女として生まれてきたことを自覚し、物語のような恋を全て放棄して、国の安泰のために働くことをより一層決意した。
「恐れながら……あちらのご令嬢は聖女様の親戚の方なのですか?」
ハマーが、クリスに突如質問した。
「ええっ。そうですけれど。私の妹マリアです。でもどうして?」
クリスが聞き返すと、ハマーは納得したように答えた。
「いえ、先程からこちらの方を頻繁に見ていましたので。もしかしたらお知り合いかと思いましてね」
マリアが熱い視線を送っていた相手は、王子ハマーだった。ハマーは、自分がクリスと婚約する運命について、時には疑問を感じることがあった。父である皇帝陛下が、
「これで国は永劫に繁栄する!!!」
と毎日毎日喜んでいたが、そんなことは、若者にとって大した話ではなかった。それよりも、自由恋愛の末の婚約を、どこかで思い描いていた。
その相手として、マリアは非常に有望だった。一目惚れだったのだ。
パーティーが終わり、マリアはハマーに急接近した。ハマーは、公衆の面前で会うことを避けようと思い、城の中へ続く廊下へ、それとなく招き入れた。クリスは、既に帰宅していた。
「お初にお目にかかります。クリスでございます」
「ああ、話は全て聖女様から聞いたよ……」
「どうですか?この格好は?」
「……少し派手なんじゃないかな?とは言うものの、お似合いだけど」
「そうですか?良かったです!王子様に似合ってる、と言って頂けて嬉しいです!」
「そうか……それはどうも……」
マリアは様々な誘惑を試みた。そして気がついた。ハマーは女に慣れていない。色気を使えば堕とすのは簡単だと。
「私がこんな格好をしているのは、本当は全部あなた様に見てもらいたかったからなんですよ?ねえ、触ってみたくないですか?私はいつでも準備オッケーですよ?」
「そんなことを言われても、困ってしまうな……」
「ひょっとして、お姉様のことを気にかけていらっしゃるのですか?大丈夫ですよ。それよりも……この出会いを祝して今晩ご一緒してくださいませんか?」
マリアの仕掛けた策略は、思いのほかヒットした。これにより、聖女クリスとの婚約について、ハマーはより一層疑問を抱くようになった。そして、クリス、ハマー、マリアが一堂に会したとき、事件は起きた。
皇帝陛下を含み、王家の人々がみな、多少は不細工でも聖女であるクリスを慕うようになった。このことについて、マリアは不満だった。クリスに命を助けられたことは感謝したが、その結果、自分が世の貴族たちから見向きもされなくなったことが嫌だった。
そこで、マリアは自分よりもはるかに格下の貴族たちの相手をするようになった。上位貴族相手で無ければ、公爵令嬢マリアという名分が功を奏した。その美貌をふんだんに用いて、男たちを虜にした。
そんな日々を何年も重ねていくにつれて、マリアは多くを占める下級貴族たちの間で人気者になった。そうすると、欲が膨らむ。この男たちよりももっともっと身分の高い貴族の相手をすることはできないだろうか、そう考えた。
クリスが第一王子であるハマーと婚約することを知って、マリアはなんとかして、ハマーに近づく方法はないものだろうか、と考えるようになった。築き上げた下級貴族たちのネットワークを用いて、上位貴族の何人かに口利きを頼むことはできた。しかしながら、それを王家の人間にまで広げることは、難しかった。
こうなったら直談判するしかない、と思ったマリアは、王家主催のパーティーに参加して、人一倍目立つドレスに身を包み、多くの男たちの目を引き付けることに成功した。それは、他ならぬ王子ハマーも例外ではなかった。
ハマーの横には、婚約内定者の聖女クリスが座っていた。クリスは、自分よりも華やいで見えるマリアが羨ましかった。しかしながら、自分が聖女として生まれてきたことを自覚し、物語のような恋を全て放棄して、国の安泰のために働くことをより一層決意した。
「恐れながら……あちらのご令嬢は聖女様の親戚の方なのですか?」
ハマーが、クリスに突如質問した。
「ええっ。そうですけれど。私の妹マリアです。でもどうして?」
クリスが聞き返すと、ハマーは納得したように答えた。
「いえ、先程からこちらの方を頻繁に見ていましたので。もしかしたらお知り合いかと思いましてね」
マリアが熱い視線を送っていた相手は、王子ハマーだった。ハマーは、自分がクリスと婚約する運命について、時には疑問を感じることがあった。父である皇帝陛下が、
「これで国は永劫に繁栄する!!!」
と毎日毎日喜んでいたが、そんなことは、若者にとって大した話ではなかった。それよりも、自由恋愛の末の婚約を、どこかで思い描いていた。
その相手として、マリアは非常に有望だった。一目惚れだったのだ。
パーティーが終わり、マリアはハマーに急接近した。ハマーは、公衆の面前で会うことを避けようと思い、城の中へ続く廊下へ、それとなく招き入れた。クリスは、既に帰宅していた。
「お初にお目にかかります。クリスでございます」
「ああ、話は全て聖女様から聞いたよ……」
「どうですか?この格好は?」
「……少し派手なんじゃないかな?とは言うものの、お似合いだけど」
「そうですか?良かったです!王子様に似合ってる、と言って頂けて嬉しいです!」
「そうか……それはどうも……」
マリアは様々な誘惑を試みた。そして気がついた。ハマーは女に慣れていない。色気を使えば堕とすのは簡単だと。
「私がこんな格好をしているのは、本当は全部あなた様に見てもらいたかったからなんですよ?ねえ、触ってみたくないですか?私はいつでも準備オッケーですよ?」
「そんなことを言われても、困ってしまうな……」
「ひょっとして、お姉様のことを気にかけていらっしゃるのですか?大丈夫ですよ。それよりも……この出会いを祝して今晩ご一緒してくださいませんか?」
マリアの仕掛けた策略は、思いのほかヒットした。これにより、聖女クリスとの婚約について、ハマーはより一層疑問を抱くようになった。そして、クリス、ハマー、マリアが一堂に会したとき、事件は起きた。
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