妹に嫉妬した聖女～婚約破棄の裏側から～

帰宅 その3

「あなたはまだまだ子供なんだから……もっともっと甘えなくちゃ……ほら、こっちにおいで？」

クリスは膝まづいて、少女を手招きした。その不思議な魅力に取りつかれた少女は、吸い寄せられるように、クリスの方へ歩み寄った。

「本当にへいきなの？」

クリスは、この幼気な少女が愛おしくなってきた。自分の妹を愛でるかのように、少女をたくさん可愛がろうと思った。

「ほらっ……捕まえた！」

少女は、クリスに後ろから抱き着かれた。クリスの膝の上に、ちょこんと座った。

「いい匂いがする……」

少女は、クリスに包まれて、すっかり泣き止んだ。

「お名前はなんていうの？」

クリスは質問した。

「私はエランって言うの……」

「エラン……いい名前ね」

「お姉さんは？」

お姉さん、こう呼ばれて、クリスは嬉しくなった。

「私はね、ミズーリ・クリス。ミズーリ公爵の長女なの」

「ミズーリ公爵？それって、私のお父さんじゃないの！！！」

少女は再び驚いた。今度は、クリスも一緒に驚いた。