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その20

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リリーの家では、慎ましやかに葬儀が行われていた。エリーナはあまり出しゃばらないほうがいいかと思った。自分のせいで死んだのだから、自分のことをよく知っているリリーのお母さんやお父さんに合わせる顔がなかった。

「お嬢様……元気を出してください。あの時だってそうだったでしょう?お嬢様が悪いわけではないのです。ですから……さあ、最後のお別れをしに行きましょう」

グラハムはエリーナにとって大切な支え人だった。

「グラハム……あなたの言っていることは正しい。でもね、こんな私が赦せないのよ。王子様と婚約できるとわかって、つい調子に乗ったものだから、そんなことを望んでも仕方がなかったのよ。私は今、本当に大切なものを失ってしまったのだから。ああっ、神様はどうして命の選別をしたのかしら?あのとき、私を助けないで、リリーを助ければよかったのよ。王家が何よ、そんなもの、へのツッパリにもならないわ!」

エリーナはやはり、感情がこもってくると、声が大きくなる習性があった。このため、リリーの両親、ツァイスの監視部隊、そして、エリーナ救護隊それぞれの耳に届いた。

「まあまあ、エリーナさん。ご足労いただき感謝しますわ……」

最初に反応したのは、リリーの母親だった。

「さあさあ、こちらにいらしてくださいな。話は全て聞いております。エリーナさん」

母親はどこか寂しそうに、エリーナを迎え入れた。

「こんな私でもよろしいのですか?」

「もちろんですよ。あなたも、私たちにとってはファミリーのようなものですからね」

しかしながら、ツァイスや他の高笑い貴族の雰囲気は、すっかりと抜けきって、エリーナは話しやすかった。

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