悪役令嬢のフレンチ・キス~早くあなたを食べたいです~

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朝の憂鬱

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朝からドルベツコイさんに罵倒されてショック……なんてのも、100回繰り返しているので、別に平気なのですが、やっぱりどうにかしたいな、とは思いますね。何かいい方法はないのかな……最悪、あの手段を使うか?いや、それは極端すぎる!でもほかに手段はあるの?はあっ……とりあえず、机に突っ伏します。

「これはこれは、のジュリア様じゃないですか!」

このむかつく言い方……私はもう一度大きなため息をつきました。

「今日も、あのに罵倒されたの?」

私の幼馴染で子爵令嬢のカーチャが私の肩をポンポンと叩きました。

「元気だしなって。あなた、顔はいいんだから、他にも結婚できそうな男、それなりにいるでしょう?」

「……この前は公爵の令息が家に来た……」

「公爵ですって?」

カーチャは驚きのあまり、ひっくりかえりました。

「あなた……それでも不満なの?」

「だって……クラーギン様がいいんだもん」

私は駄々をこねる子供と同じでした。

「別に王子様である必要はないでしょう?公爵の令息なら、あなたのお家にとっては大きな出世じゃない!」

カーチャは私のことを羨んでいました。まあ、確かに、自慢ではありませんが、顔立ちでは、ドルベツコイさんに負ける気がしません。

「私は爵位なんかどうでもいいの……」

「おおっ、これはまた大胆な発言を……」

大胆……確かに大胆だったかもしれません。私は古典的な令嬢観をすっかり見失っていました。

カーチャは続いて、令嬢かくあるべき説教を始めました。自分の家を発展させるために、より身分の高い家に嫁ぐというのが、令嬢としてのサクセスストーリーでした。私の家は男爵と最下層なので、どの爵位の家に嫁いでも問題ないのですがね。

でもね、そんな考えはもう古い!

私は声を大にしてそう叫びたいのです。

「あなたはクラーギン様の爵位が目当てなのではなくて、クラーギン様自体が目当てなの?」

「ええっ、そうよ」

「じゃあ、クラーギン様が農民だったとしても、あなたはクラーギン様の家に嫁ごうと思うわけ?」

「………………それは……」

「ほらっ、やっぱりね。綺麗ごとを言ったって、ダメよ」

違う、私が愛しているのはクラーギン様なのだ、と言いたくなりました。でも、これ以上そんなことを言っても、なんだか虚しくなりそうだったので、止めました。

朝の始業を告げる鐘が学院全体に鳴り響きました。今日も憂鬱な学院生活がスタートするんだ、と思いました。
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