せっかく婚約破棄されたので一度昇天しました

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後編

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「皆の者!!!どうしたんだ!私の命令が聞けないと言うのか!!!そんなはずないだろう!!!私を誰だと思っているんだ!!!王子エバンスだぞ!!!皇位継承者だぞ!!!」

人間世界に降り立つと、エバンス様が随分と変わり果てた御姿で、民衆に取り囲まれていました。

「おおっ、エリーゼではないか!!!」

エバンス様はいち早く私のことを見つけました。そして、自分のところに来るように手招きしました。

「うわー……めんどくさいわ……」

私は独り言を言いました。すると、民衆たちがざわざわとしだして、私が通るための道ができました。

「やっと気が付いたか……」

エバンス様はまだ勘違いしているようでした。民衆は、私に対する敬意から道を空けたのです。それなのに、エバンス様は我が物顔でズカズカと歩いてきました。

「ほら、この者たちに説明してくれよ。私は王子エバンスで……」

「あなた、誰に口をきいているの?」

私は一言だけ、エバンス様に呟きました。

「なんだと?」

エバンス様は怒り出しそうでした。誰に口をきいているのか、それはこっちのセリフだ、と言わんばかりに。

「そんな反抗的な態度をとると、民衆が怒るわよ……」

「貴様!何を言って……」

すると、民衆たちが立ち上がって、

「エリーゼ様の敵は叛逆者だ!征伐するぞ!」

と言って、エバンス様の周囲を取り囲みました。

「貴様たち!何をやっているんだ!!!」

エバンス様は当然納得できなかったのでしょう。仕方がありません。

「見てわかるでしょう。これからこの世界を統治するのは私なんですよ……」

「そんなはずないだろう!!!」

エバンス様は精一杯反抗しました。

「これ以上逆らうと、あなた様の命を奪わなくてはいけませんね。民衆の怒りを買った者には、この世界にいる資格がないのですから……」

民衆たちは適度に武装していました。ですから、エバンス様の出方によっては、民衆に命令して、殺害することも可能でした。お父様は用意周到でした。でも、私は……。

「エバンス様。もう諦めてください。私はあなたと戦うつもりなど、最初からないのです。分かりましたね?」

エバンス様が納得するまで、私は丁寧に説明しました。

「仕方がない……認めるしかないのか……」

こうして、エバンス様を表舞台から消すことに成功しました。


月日が流れて、お父様のご加護の元、新たな人間世界が完成しました。私が生き続ける限り、お父様のご加護が続く限り、歴史上類を見ないほど、人間として落ち着いた世界になりました。

「私は民と共にあります。そして、全て等しく神様のご加護を受け、自らの命を全うしてください」

私は国王として、最初の演説を行いました。集まった数多の民衆の活気と笑顔を確認して、作戦が全て成功したことを確認しました。

めでたしめでたし。

「あのね…………」




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