婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。

和泉鷹央

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第一章

人間の思惑

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 ふうん。
 女神サティナは緑色の猫を思わせる輪郭の目を細めて不満そうな声を出した。
 人の法律、ねえ?
 それもわたしの恩恵あっての王国のはずなんだけど。
 いつからこの国の神殿関係者は、王族は神に対する畏敬の念を失ったのかしら。
 そんなことを考えながら、さめざめと泣くアイリスの言葉に耳を傾けていた。

「サティナ様は神様だからお分かりにならないんです。私はこれでも、アズライルのことを愛していたの。あの人が
裏では側妃と呼ばれているダイアナよりも私を一番だって言ってくれたらそれでよかったの」
「……いいわけないでしょ?」
「えっ」
「それだけで満足するようなかわいらしい女なら、あんな爆風で扉を破ったりしないわよ。ずっと溜まりに溜まっていたものが心から一気にでただけでしょ? わたしも経験あるからわかるわ」
「御経験……おありですか……」
「まあね、女神だって恋愛もするし、結婚だってするわよ? あなたたちが知らないだけで、初代国王なんてもうー放っておけないようなまるでリスかそんな感じのかわいらしい小動物、って感じだったもの」
「はあ……小動物? 建国王様が……」
「それでも、彼の心は英雄のそれだった。国民を守り、国を建て、みんなを幸せにしたいと願って戦っていた。あなたの愛したアズライルとは雲泥の差ね、アイリス」
「それは――そうかも、しれません。建国王様にかなう男性なんて……そうそうはいないと思います」

 かもね、と女神は自慢げにうなづいた。
 同時に、あなたにも問題があったのよ? 
 そう、アイリスに告げる。

「ねえ、わたしと同じ髪に瞳を持つあなた。アイリス。見た目だけで言えば、あなたのほうが姉に見えるわね。旅行の時は妹役でいいかなー。それはさておき、恋愛だけで言えばアイリス。あなたにも責任はあるのよ?」
「私がですか?!」
「あなたにも、よ。相手は殿下で、年上で男性だけど。それでもこれまで言うべきことはあったと思わない?」
「そんなあー……それはひどいですよ、サティナ様。私、さんざん我慢してきたんですよ!? お母様の言いつけに従って、淑女であろうと頑張ってきたのに。あんまりです!」
「女神にむかってそれだけ口答えできるなら、あの男だって制御できたでしょ?」

 それを言われたらアイリスはうっ、と言葉に詰まってしまう。
 女神官、いや司祭としての魔法。
 学院内での自分の地位もそうだし、実家は王族以外では最高位の侯爵位。
 父親は――やり手だけど王家には逆らわない。
 そんな男だったことを思い出す。

「そんなっ! だって女神様はお優しいじゃないですか。殿下なんて、ダイアナにかける言葉はいつも愛情に満ちていたのに、私には子供のそれだったし……」
「でも、やり返した。そうでしょ? それはなぜ?」
「だって、我慢できなかったんですもの……」

 あれから数時間。
 アイリスはケイトと自分の実家と、ついてきてくれた神殿騎士たちが無事なのかが初めて気になってきた。

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