婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。

和泉鷹央

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第一章

アイリスの怒り 1

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「文句、でございます、か。はい、確かにそうですね……でも、それならアイリス様の御実家にまであんな命令をお出しにならなくても……」
「あれか? 仕方ないだろう。裏切り者の家系を残しておけばあとあと、必ず報復に出るからな。あれの父親は外務大臣。俺が外に出ている間に、処刑された娘の仇を討とうとするかもしれない」
「まあ、殿下はお怖い。そこまで考えておられたのですか?」
「そうだとも。だから、ちょうど良いのだ。女神様が最初に降臨されてから二千年。民の王家に対する忠誠心も薄くなるころだ。見せしめするには最高の獲物だろう?」
「……殿下は恐ろしい方ですわ。いまごろは侯爵様たちも捕縛されているかも……」
「ああ、そうだろう、そうだろう。アイリスめ、首をはねる前に、泣きわめくがいい。目の前で家族を処刑される様を見てな……」

 つまり、その残酷な心はいつかは――自分にも牙を向けるのですね、殿下。
 女伯爵ダイアナはそう未来を予見する。
 いつか。
 帝国から正妻を迎えた後に、自分は要らない女として追放されるだろう。
 老いてみにくくなったその時の自分は――どこにも行く宛てはない。
 どこかで彼に見切りをつける必要がある。
 そう思った時だった。

「あら……?」
「なんだ?」
「いえ、その――なんでしょう? あの光……」
「光っ……ッ!?」

 ダイアナの疑問の一言に、アズライルの心が反応する。
 いや、与えられた恐怖がそれを思い出したのかもしれない。
 愛人があれ、と指さす方向を見ると壁しかない場所が、明るく揺らめいていた。
 それはまるで真紅の炎のようでもあり、まるで、血の海を思わせるような――

「ダッ、ダイアナっ!? 剣だっ、剣を持てっ!!」
「えっ? 殿下、そんなもの一階にきちんと飾って……」
「何を馬鹿なことを! いいからさっさと取ってこい!! あれはあいつだ――……アイリス……ッ!?」
「嘘っ、アイリス様!? 地下牢にいたはずじゃ……」

 二人が壁に現れた人の姿を見て悲鳴を上げた。
 そこにいるのは、いままさに話にでていた元正妃候補であり――神殿の地下牢に閉じ込められているはずのアイリスだったからだ。

「ひいっ! 亡霊!? いやっ、私は関係ないです――っ!!!」

 それまで潜り込んでいたベッドから慌てて逃げ出そうとするダイアナだが、あまりの恐怖に腰が抜けたらしい。
 床を這ってその場から逃げようとするが、長い黒髪を前と同じようにアイリスに踏みつけられていた。
 アイリスは足元のそれの背中を両足で抑え込むと、アズライルに向き直った。
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