婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。

和泉鷹央

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第二章

息苦しさ

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「この時代錯誤の駄女神!」
「何ですって!? 捨てられた男に未だに未練がましい、行き遅れが!」
「その捨てた男を暗殺したのはあんたでしょうがっ!」
「違うって言ってるでしょう!? 何度言えば理解するのよ? 少しは王太子の誇りを見習ったらどうなの?」

 そろそろ止めないと魔法が発動して周囲に迷惑が及ぶかなあ?
 傍観者ケイトが一人そう考えていると、タイミングよく、お昼前を告げる教会の鐘が鳴り響いてくれた。
 時計台も兼ねているその塔は、城塞都市のほぼ中央に位置していて市内のどの位置からも見上げることが出来た。
 城を中心に扇状に構築されたこの都市は建造からもう千年近くを生きているはず。
 サティナが古臭いなら馴染むかなとも思ったけど、どうやらそれはかないそうにない。

「サティナ様、アイリス様。そろそろ、仲良くなさらないと、追い出されますよ?」
「あっ、もうそんな時間……」
「めんどくさいわねー」

 そう言いつつも二人は矛先を一時的に治めることにしたようだ。
 ケイトの視線の先にいたのはもうすぐ出かける主たちの仕度にかかるべく出勤してきた、この家の使用人たちだった。
 人柄が悪いようです、そんな噂を王国騎士に報告されたら、人品を疑われて出て行ってくれと言われかねない。
 ここはその程度には、礼儀作法にうるさい場だった。

「まあまあ、サティナ様は絶世の美少女だし。アイリスも元国母候補程度にはきれいだし。今日、教会にご一緒する王国騎士ランバート卿は両手に華ですね」
「そんなに華やかにできるもんですか……。顔が隠れる程度のベールと、髪をどうにかしないと……誰が元国母候補程度にはよ、ケイト。あれから何か当たりがひどくない?」
「心配しなくていいわよ、アイリス。あなたのせいで、婚約者に会えないなんて思ってないから。いつかお二人揃えて庭の池にでも沈めてあげたいくらいなだけよ」

 にっこりと一人と一柱の被害者であるケイトは、使用人たちによってドレスアップされる二人に静かに嫌味を言ってやった。

「……ごめんなさい」
「いいのよ、アイリス。怒ってないし、それに髪色は心配ないわ。王国の平民の大半は赤毛だもの」
「そうなの……?」
「元々、建国王は隣の帝国の土地から流れてきた民族だし、それが王国の土地に住んでいた現国民の民族を併合したのだから、そんなものよ」
「それって、どちらがどうなの?」
「どう? 建国王の民族が赤毛に緑の瞳。王国の基礎を担った民族は黒髪黒目よ。それだけ」
「へえ……それがあの……おかげでまとまってきたわけね」
「そう、だからサティナ様は偉大なのよ。アイリス、そろそろ司祭としての仕事もすることね。さて、わたしは大体終わったし……」
「あなた、簡素なドレスに髪をまとめただけじゃないの。仮にもあの旦那様の愛人には見えないわねー」
「豪奢なのはあなたに任せるわ。わたしは静かに清楚に生きるの。派手に騒ぐ姉妹には関わりたくないから」
「……」

 ケイトの嫌味はどこまでも痛烈で、それでいて主導権を譲らない。
 これは息苦しくなるなあ、と似たもの二人はため息をつくのだった。
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