28 / 104
第二章
息苦しさ
しおりを挟む「この時代錯誤の駄女神!」
「何ですって!? 捨てられた男に未だに未練がましい、行き遅れが!」
「その捨てた男を暗殺したのはあんたでしょうがっ!」
「違うって言ってるでしょう!? 何度言えば理解するのよ? 少しは王太子の誇りを見習ったらどうなの?」
そろそろ止めないと魔法が発動して周囲に迷惑が及ぶかなあ?
傍観者ケイトが一人そう考えていると、タイミングよく、お昼前を告げる教会の鐘が鳴り響いてくれた。
時計台も兼ねているその塔は、城塞都市のほぼ中央に位置していて市内のどの位置からも見上げることが出来た。
城を中心に扇状に構築されたこの都市は建造からもう千年近くを生きているはず。
サティナが古臭いなら馴染むかなとも思ったけど、どうやらそれはかないそうにない。
「サティナ様、アイリス様。そろそろ、仲良くなさらないと、追い出されますよ?」
「あっ、もうそんな時間……」
「めんどくさいわねー」
そう言いつつも二人は矛先を一時的に治めることにしたようだ。
ケイトの視線の先にいたのはもうすぐ出かける主たちの仕度にかかるべく出勤してきた、この家の使用人たちだった。
人柄が悪いようです、そんな噂を王国騎士に報告されたら、人品を疑われて出て行ってくれと言われかねない。
ここはその程度には、礼儀作法にうるさい場だった。
「まあまあ、サティナ様は絶世の美少女だし。アイリスも元国母候補程度にはきれいだし。今日、教会にご一緒する王国騎士ランバート卿は両手に華ですね」
「そんなに華やかにできるもんですか……。顔が隠れる程度のベールと、髪をどうにかしないと……誰が元国母候補程度にはよ、ケイト。あれから何か当たりがひどくない?」
「心配しなくていいわよ、アイリス。あなたのせいで、婚約者に会えないなんて思ってないから。いつかお二人揃えて庭の池にでも沈めてあげたいくらいなだけよ」
にっこりと一人と一柱の被害者であるケイトは、使用人たちによってドレスアップされる二人に静かに嫌味を言ってやった。
「……ごめんなさい」
「いいのよ、アイリス。怒ってないし、それに髪色は心配ないわ。王国の平民の大半は赤毛だもの」
「そうなの……?」
「元々、建国王は隣の帝国の土地から流れてきた民族だし、それが王国の土地に住んでいた現国民の民族を併合したのだから、そんなものよ」
「それって、どちらがどうなの?」
「どう? 建国王の民族が赤毛に緑の瞳。王国の基礎を担った民族は黒髪黒目よ。それだけ」
「へえ……それがあの……おかげでまとまってきたわけね」
「そう、だからサティナ様は偉大なのよ。アイリス、そろそろ司祭としての仕事もすることね。さて、わたしは大体終わったし……」
「あなた、簡素なドレスに髪をまとめただけじゃないの。仮にもあの旦那様の愛人には見えないわねー」
「豪奢なのはあなたに任せるわ。わたしは静かに清楚に生きるの。派手に騒ぐ姉妹には関わりたくないから」
「……」
ケイトの嫌味はどこまでも痛烈で、それでいて主導権を譲らない。
これは息苦しくなるなあ、と似たもの二人はため息をつくのだった。
7
あなたにおすすめの小説
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
お妃候補を辞退したら、初恋の相手に溺愛されました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のフランソアは、王太子殿下でもあるジェーンの為、お妃候補に名乗りを上げ、5年もの間、親元を離れ王宮で生活してきた。同じくお妃候補の令嬢からは嫌味を言われ、厳しい王妃教育にも耐えてきた。他のお妃候補と楽しく過ごすジェーンを見て、胸を痛める事も日常茶飯事だ。
それでもフランソアは
“僕が愛しているのはフランソアただ1人だ。だからどうか今は耐えてくれ”
というジェーンの言葉を糧に、必死に日々を過ごしていた。婚約者が正式に決まれば、ジェーン様は私だけを愛してくれる!そう信じて。
そんな中、急遽一夫多妻制にするとの発表があったのだ。
聞けばジェーンの強い希望で実現されたらしい。自分だけを愛してくれていると信じていたフランソアは、その言葉に絶望し、お妃候補を辞退する事を決意。
父親に連れられ、5年ぶりに戻った懐かしい我が家。そこで待っていたのは、初恋の相手でもある侯爵令息のデイズだった。
聞けば1年ほど前に、フランソアの家の養子になったとの事。戸惑うフランソアに対し、デイズは…
幼馴染の王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。
藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。
何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。
同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。
もうやめる。
カイン様との婚約は解消する。
でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。
愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません!
一度完結したのですが、続編を書くことにしました。読んでいただけると嬉しいです。
いつもありがとうございます。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。
結婚十年目の夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。彼は「送り間違えた」というけれど、それはそれで問題なのでは?
ぽんた
恋愛
レミ・マカリスター侯爵夫人は、夫と政略結婚をして十年目。侯爵夫人として、義父母の介護や領地経営その他もろもろを完ぺきにこなしている。そんなある日、王都に住む夫から「結婚契約更新書」なるものが届いた。義弟を通じ、夫を追求するも夫は「送り間違えた。ほんとうは金を送れというメモを送りたかった」という。レミは、心から思った。「それはそれで問題なのでは?」、と。そして、彼女の夫にたいするざまぁがはじまる。
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる