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第二章
女神の恋
しおりを挟む自分とそう年齢の変わらない彼は騎士と呼ぶには幼いようにも見えた。
そう、彼――死んだ王太子よりはまだ幼く見えたのだ。
アイリスが若い、とそうつぶやくとケイトもまたそうねえ、と小さくうなづいて見せた。
ケイトの恋人であるヴィクターは二歳年上だしすでに爵位を継いで二年。眼前の彼よりはもうすこし大人びていたからだ。
「どう思う?」
「さあ……サティナが幼い憧れでも持ったのかしら。ほら、行きましょう? あなたたち姉妹揃って人を待たせるのだけは得意な様だから」
「嫌味だけしか戻ってこないのね……」
「早く行きなさいよ、アイリスが挨拶しなきゃ始まらないじゃない。あの方、王国騎士トロイ・ランバート様に」
「はいはい、わかったわよ。サティナ、ご挨拶しましょう、こちらの旦那様に」
「ええ、お姉様」
「何か元気ないわね、どうしたのよ。炎の女神に春でも来た?」
「……」
「ちょっと……??」
「何でもないわ」
ふうん?
その割には微妙に反応が悪いような?
王国騎士とはいえ、自分と同年代。幼く見える彼にアイリスは何も感じるところがない。
銀色の髪、青い瞳の彼は騎士という身分の割には文官にも見えた。
まあ、王宮だと軍務も政務もどちらも司る騎士がいるから、どちらとも言えないな。この城塞都市の管理の一部だけを任されているのかもしれないし……。
そう思いながら三人は案内されるままに教会へと足を運ぶ。
アイリス、ケイト、サティナの順で彼にお定まりの挨拶を一通り済ませると、トロイは自分を目線の変わらない、顔を黒いベールで覆い隠したアイリスに興味を持ったようだった。
教会はやはりサティナの神殿の下部組織であり、いまだ司祭であるアイリスとその本尊ともいえるべきサティナの立ち居振る舞いはこんな田舎にしては見事なもの。トロイは二人のそんな仕草をじっと横目で見物しながら満足したように微笑んでいた。
「お若いのにとても礼儀作法にすぐれていらっしゃる。アイリス殿は特に」
「そうでしょうか? これも旦那様の教育の賜物ですから」
「叔父の? そんなに昔から側にいたのですか、アイリス殿」
「あ、いえ――そう長くはありません。でも、礼儀作法は厳しく……ええ」
「まだ生まれなどの仔細をうかがっていませんでしたね。叔父のロディアムからいきなり預かって欲しいと言われた時は驚きましたが、まさか、御夫人がお二人。その妹御までいらっしゃるとは思わなかった。失礼ながら、よい仲とも聞いてはいますよ」
「旦那様は寡黙がお好きな方ですから……」
遠慮がちに催促してくれるなとアイリスが顔を他所にやりそう伝えると、王国騎士トロイは困ったような顔をしていた。
会話をしたいのか、内情を探りたいのか、それとも単に興味があるだけなのか。
何となく彼の視線が見た目でいえば十二歳前後のサティナの方に向いているようで、アイリスは蚊帳の外に置かれた気分になっていた。
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