婚約者の浮気現場に踏み込んでみたら、大変なことになった。

和泉鷹央

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第三章

密談

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 東屋とサティナが揶揄したそこにトロイと彼女が消えた後。
 アイリスとケイトは少しだけ寒い中にはに通じたテラスに携行用の暖炉を用意させ、ブランケットを膝上に広げて椅子に腰かけていた。
 囲む丸テーブルの上には暖炉で温められたポットが二つに砂糖ポットが一つ。
 ミルクの入った小ぶりなやつが一つ。
 後は紅茶の葉が幾つかそろえられたガラス製の密閉式の器。ハチミツがあれば文句はないけど、季節的に手に入らないと言われたからしかたない。

「まあ、それは出せばいいだけなんだけどね」
「出せるならさっさと用意すればいいのに」
「数種の要素を入れて混ぜ合わせるのはなかなかに難しいんだよ?」

 アイリスとケイトはそえぞれに手にしたティーカップの中身をティースプーンでかき混ぜながら、アイリスがあれとこれを集めて来てこうやって炙って、更に加熱すると――なんて、適当に口で表現しながら大気中のそれら? と呼ぶものを回収してぐるぐると回転させたものが幾つかの成分に分離する。
 そのうち、黄金色のものはどう見てみハチミツだなあ、とケイトは感心しながらそれを見ていた。

「それ、抑えててくれない?」
「それ? この空ビン??」
「そうそう、これ粘り気あるし弾力性あるからなかなか、思うように落とし込めなくて。きちんと受け止めて。多分、螺旋状に落ち込むから」
「はいはい、わかったわよ。久しぶりね。貴方がこんな小技を披露するのって」
 
 懐かしいと言いながらケイトは瓶の淵を器用に回転させて中空から落ちてくるそれを受け止めていく。
 もうどれくら昔だったかしら。
 そんなことを思い出しながら。

「お、できた出来た。知ってる?」
「何が?」
「これね、サティナ様が教えて下さったのよ」
「あら、それは初耳ね」
「まだ誰にも言ってなかったから」

 一度簡単に蓋をしたそれから、一掬い、ハチミツをスプーンですくうと、アイリスはそれを自分の紅茶にゆるりと入れて混ぜてやる。
 香ばしい甘ったるい匂い、どことなくかおりだけでわかってしまう、糖度の強さ。
 そういったものが離れていてもケイトの鼻梁をくすぐっていた。

「ねえ、アイリス?」
「なあに? これなかなか美味しい」
「そうじゃなくって。その、貴方にとってのサティナ様はどんな方なの? 友人、主、母親、妹、どれ?」
「どれ……? ケイト以下、友人以上、かしら? 親でもないし、でも時々は小うるさい教師みたいな存在かな。嫌いじゃないわよ」
「ふーん。だとしたら、アイリスはどうするのがいいと思うの? これから先は」
「これから先、ねえ」

 甘く焼かれたタルトをひとかけら口に放り込みながら、アイリスはもうあれしかないでしょう、と結論を出す。

「あれって?」
「あれをここに置いて、さっさと帝国に亡命。あなたの家でメイドなり、他の私を知らない外国に行って司祭をするわよ」
「たくましいわねえ」
「へへっ。でしょう?」

 それをサティナ様が許可すればだけどね。
 ケイトはそう締めて笑っていた。
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