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第五章
童話
しおりを挟む昔々あるところに、大きな湖の周りに五つの国がありました。
東の帝国の神様と、南の王国の女神様は兄妹でしたがとても仲が悪く、いつもいつも喧嘩ばかりをしていました。
もう一人、北の王国の女神様がいて、三柱の神様は仲が悪いと、北の国の女神様はいつも泣いていました。
そんなある時です。
南の国の王様とその臣下たちは、いつまでも続く神様の喧嘩に嫌気がさしました。
王国どころか湖そのものをぐるりと囲む、大きな魔法をかけたのです。
それは、恐ろしい魔法でした。
なんと、神様の力を無くしてしまう魔法だったのです。
南の国の女神様は炎の女神様。
東の帝国の神様は空の神様。
困ったことに、北の王国の女神様は長女で、それでいて、南の国の女神様と同じ炎の女神様だったのです。
ある時、たまたま南の国の妹の神殿を、姉の女神様は訪れていました。
国民が困っているじゃない、そろそろお兄様との喧嘩を止めなさい。
姉は妹の女神様をそう、諭しに来たのです。
妹の女神様は、ふん。あんなお兄様なんて知らないわ。お姉様も大っ嫌い、と言い神殿の奥へと姿を消してしまいました。
それから南の国はしばらくの間、神様がいなくなることになりました。
これでは国民が可哀想だと思った姉の女神様は、北の国を離れて南の国へと引っ越しをすることにしました。
しかし、それを知らない南の国の国民は、女神様の力を無くす魔法を使い、女神様を湖へと沈めてしまったのです。
可哀想な姉の女神様は力を失い、人間の魔女の手によって何度も何度も湖へと沈められました。
こいつめ、悪いやつだ。国民がこんなにも困っているのに、まだ仲直りしないなんてどうにかしている。
そう言い、魔女は女神様が大人から子供へと姿を小さくするまで溺れさせました。
姉の女神様は言い訳をするひまもなく、天界へと地上を追放されてしまったのです。
しばらくして妹の女神様が神殿へと姿を現した時、国民はもう女神様は要らないといい、神殿を打ちこわそうとしました。
それを止めたのは兄の神様でした。
これからは妹に改心させるから許してやってくれ。そう言い、国民も許すことにしましたが、妹の女神様は懲りません。
また数百年すると、兄の帝国の神様と喧嘩を始めたのでした。
そして、あの魔法は忘れられてしまったのです。
姉の女神さまをサティナ様。
妹の女神様をアミュエラ様。
兄の神様をヌアザ様といいました……。
「あ、そうだった」
アイリスは熊の咆哮を聞きながら、真空の刃を避けるべく数メートル前に一つの感知器の役割を果たす結界を数十ほど展開しながら、そんな過去の記憶を思い出していた。
いまは亡くなった母親が読んでくれた可哀想な女神様という題名の童話のそれを聞いて、あの時に誓ったのだ。
「お母様、アイリスはこの可哀想な女神様を助けてあげたいです」
その一言が自分にサティナの司祭への道を歩ませたのだ。
(私は太陽や星の光などに属する炎、妹のアミュエラは精霊界に属する炎の精霊の象徴なの)
サティナの馬車での一言が思い起こされる。
太陽や星の光などに属する炎。
ふうん、ならまだまだもっと――強い魔力が必要かな?
それを召喚すればあの熊だって……現実か幻影か神様か理解できないけど倒せるかもしれない。
でもその為には巨大な魔素がいる。さすがに自分は人間でそんなものはないし……。
どうしようかと頭を捻ると丁度いいものを思い出した。
それはもちろん――現世に降臨した本物の女神サティナから力を借りることだった。
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