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第五章
真実の一端
しおりを挟む「主、ですか。アイリス……」
「ええ? はい、主です。戻られるとなかなかに女神らしいですね、サティナ様は」
「はあ、そのサティナ様とはあの――私と共にいた、サティナですか? 幼い少女の」
「もちろん、そうなりますね」
なんだかテンションが上がって来た!
あの空を見た途端、俄然やる気を出した女司祭を見てランバート卿はどうなっているんだと空と彼女を交互に見比べてため息をつく。
どうやら、伝説が目の前に降ってきたらしい。
新しく始まる神話の立会人になりそうな気がして、心がどことなく重くなってしまった。
「アイリス。貴方が言われるサティナ様は我が王国の守護神――?」
「もちろん!」
「はあ……」
「? どうかされましたか?」
「いえ、何と言いますか。我が主君が、国王陛下から統治の委任を受けているこの城塞都市で、どうしてこの瞬間にそのような珍事が起きたのか、と。自身の不幸を呪っているところです」
「不幸? それはまた、何故?」
「不幸ですよ、アイリス。この区域の管理は私が任されているのですから。主にどう報告したものか……」
ああ、彼は王国騎士だった。
そういえば、とアイリスは再認識してすこしばかり申し訳ない気持ちになってしまう。
すべての発端は、自分がサティナを降臨させたことにあるのだから。
「すいません」
「貴方が謝ることはないと思いますが、しかし困ったな。この状況はどう解釈すればいいのか」
「ああ――それなら。本人に聞いた方が早いのではないでしょうか?」
「え? しかし、貴方がサティナ様と入れ替わりに来たことも何か関係があるのでは?」
「あ……はい。そう、ですね」
まさか、あんな近距離でいるとは思わなかったから空間の位置を入れ替えても問題はないと思っていたのに、いざ魔法を発動してみればランバート卿は自分のお尻の下にいた。
その現実を思い出し、アイリスは赤面してしまう。
男性を足下にしたことなんて、これまでなかったからだ。
関係はあるというか、それも犯人は自分。
責められたらどうしようかと思い悩む前に、ランバート卿はこれも神意ですか、とアイリスにとって都合の良い解釈を投げかけてくれた。
「え? もちろん! もちろん、そうですよ、ランバート卿。これも神意です!」
「……叔父や我が従兄弟の紹介も神意なのですか、アイリス?」
「従兄弟?」
「聖騎士のあれですよ。久しぶりに連絡が来たと思えば、叔父を通じて貴方を迎えろと言われたりしましたが。どうなっているんです? それに殿下の問題もそうですが」
「でん、か……? なぜ、それを……」
そう言えばとアイリスは思い出す。
ランバート卿はなんの前触れもなく自分を呼んだではないか。
我が女司祭どの、と。
「まあ、貴方の元婚約者も我が遠い親戚ですから」
「嘘……」
「本当です。アズライル王子と貴方の間に何があったかも、後程教えて頂きたい」
でもまずは、この目の前にある問題を解決しなくては。
そう吐露する王国騎士を見ながら、悪夢が始まったかもしれないとアイリスは後ずさりしてしまった。
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