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第五章
女司祭
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「信者を、市民たちを取りまとめると言うだけなら……協力できるかもしれません。でも、そこから先は――」
「それは、貴方の主様に伺いますよ。信用が無いのはお互い様でしょうから」
「間違いないわね……それで、何をすればいいの?」
「お任せしますよ」
「適当ねー」
もし、この王国騎士が有能かと後から聞かれたら、アイリスはこの場の処理に関してはとても有能だった、と語るだろう。
館に騒ぎよる民衆のまえにアイリスを押し出しての演説は、なかなか見事なモノだった。
この城塞都市に不意に魔物が出現したこと、それをサティナ教の司祭の名に恥じない戦いぶりで巨大な角の柱に変えてしまったこと。
ましてや、天空高く上がったあの朱色の輝きの咆哮は……禁忌とされていた呪文による、女神サティナ様の降臨をその身に代えて行ったのだ!
この最後の部分に人々は熱狂した。
天空にはたしかに、揺らめく朱銀の燐光を放つ偉大なる女神が、下界を睥睨して見えていて、彼女がその身に包む青と白の神の衣は、深夜になろうとも光を失うことはない。
あの魔物のせいでいくばくかの被害がでた市民もいたが、それに対しては神殿から多くの神官や女官が市井に繰り出し、他の王国騎士を指揮するランバート卿とアイリスはこの時とばかりに指導者としての役割を果たしたのだった。
そしてバタバタとした一夜が明けた翌朝。
サティナはまだ、地上へと降りてくる様子はなかった。
幼女としてではなく、成人した絶世の美女……というか、人の身では追いつけない凄まじくも豪奢なオーラをまとっている。
ランバート卿から与えられていた屋敷の一室で、アイリスは窓を開け、ずっと降りてくる彼女を待っていた。夜空に灯るその灯りはあまねく四方を照らし出し、王国の領土を越えて魔族の土地や帝国だけでなく、この東西の大陸の隅にまで届いたのだろう。
時折、どこかの神様が遣わした眷属や精霊なんかが彼女に挨拶をしているように、アイリスの瞳には見て取れる。中にはおどろおどろしい、どう見ても魔物でしかないような異形なものまでそこにはいて、妙な呪いなんかを落としていかないかと、女司祭は気が気ではなかった。
「神をその目で見ることのできる、至福にあずかれるなんて、人類の歴史でどれくらいぶりなのですかね?」
「さあー。どうでしょうか。二千年前に一度だけ在ったとは聞いていますけど、それ以前にもあったのかもしれませんね」
「……貴方には、あれ以外にも見えているのですか?」
「……まあ。いろいろと。多くの神様が使者を送ってきているようですね。どこの誰かなんて、まったく理解できませんけど」
「驚きだ」
アイリスの隣に座り、ソファーから窓上に見えるサティナを飽きもせずに見ている彼もまた変人というべきかもしれない。
多くの市民はもう彼女のことを認識できなくなっているはずだからだ。
いまサティナの姿を見つけられるのは――人であれば特別な力に秀でた者。選ばれた者、もしくは……。
「それは、貴方の主様に伺いますよ。信用が無いのはお互い様でしょうから」
「間違いないわね……それで、何をすればいいの?」
「お任せしますよ」
「適当ねー」
もし、この王国騎士が有能かと後から聞かれたら、アイリスはこの場の処理に関してはとても有能だった、と語るだろう。
館に騒ぎよる民衆のまえにアイリスを押し出しての演説は、なかなか見事なモノだった。
この城塞都市に不意に魔物が出現したこと、それをサティナ教の司祭の名に恥じない戦いぶりで巨大な角の柱に変えてしまったこと。
ましてや、天空高く上がったあの朱色の輝きの咆哮は……禁忌とされていた呪文による、女神サティナ様の降臨をその身に代えて行ったのだ!
この最後の部分に人々は熱狂した。
天空にはたしかに、揺らめく朱銀の燐光を放つ偉大なる女神が、下界を睥睨して見えていて、彼女がその身に包む青と白の神の衣は、深夜になろうとも光を失うことはない。
あの魔物のせいでいくばくかの被害がでた市民もいたが、それに対しては神殿から多くの神官や女官が市井に繰り出し、他の王国騎士を指揮するランバート卿とアイリスはこの時とばかりに指導者としての役割を果たしたのだった。
そしてバタバタとした一夜が明けた翌朝。
サティナはまだ、地上へと降りてくる様子はなかった。
幼女としてではなく、成人した絶世の美女……というか、人の身では追いつけない凄まじくも豪奢なオーラをまとっている。
ランバート卿から与えられていた屋敷の一室で、アイリスは窓を開け、ずっと降りてくる彼女を待っていた。夜空に灯るその灯りはあまねく四方を照らし出し、王国の領土を越えて魔族の土地や帝国だけでなく、この東西の大陸の隅にまで届いたのだろう。
時折、どこかの神様が遣わした眷属や精霊なんかが彼女に挨拶をしているように、アイリスの瞳には見て取れる。中にはおどろおどろしい、どう見ても魔物でしかないような異形なものまでそこにはいて、妙な呪いなんかを落としていかないかと、女司祭は気が気ではなかった。
「神をその目で見ることのできる、至福にあずかれるなんて、人類の歴史でどれくらいぶりなのですかね?」
「さあー。どうでしょうか。二千年前に一度だけ在ったとは聞いていますけど、それ以前にもあったのかもしれませんね」
「……貴方には、あれ以外にも見えているのですか?」
「……まあ。いろいろと。多くの神様が使者を送ってきているようですね。どこの誰かなんて、まったく理解できませんけど」
「驚きだ」
アイリスの隣に座り、ソファーから窓上に見えるサティナを飽きもせずに見ている彼もまた変人というべきかもしれない。
多くの市民はもう彼女のことを認識できなくなっているはずだからだ。
いまサティナの姿を見つけられるのは――人であれば特別な力に秀でた者。選ばれた者、もしくは……。
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