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第五章
被害者たち
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「王家の血筋はサティナ様を見ることができるのですか、ランバート卿?」
「……さあ? 私には見えますが。ほかの方々がどうかはわかりかねます」
「でも、貴方の血筋ってそんなに濃くないでしょう? こんな辺境なんだし」
「ええ、それはそうですね。我が家が王家との血縁にあると言っても、僕は王国騎士止まりですから。アルフォンスの方が濃いでしょうね」
「アルフォンス……?」
「聖騎士ですよ、シュネイル卿」
「ああ、あれね」
「そう、あれです。従兄弟の命すら守れず、女神の側についたどうしようもない馬鹿な世代の代表格です」
ふう、とランバート卿はため息をつくと、部下に用意させたワインをグラスに注ぎ足していた。
軽い軽食がテーブルに用意されていたが、窓を開け放してじっと天空に視線をやるこの行為はなかなかに首と肩にきつい。
ソファーに深く腰掛ける彼に対して、アイリスは行儀悪く、自分で引っ張って来たベッドを壁際に押し寄せてその上にあおむけに寝そべっていた。
「その馬鹿な世代のおかげで、ここに一人。人生を翻弄された可哀想な女がおりますよ、ランバート卿?」
「可哀想なのは、貴方ではないでしょう? まあ、アズライルがあの妖艶な伯爵夫人にぞっこんだったことは否めないですが」
「あの……焼いても宜しいですか?」
左手に最近覚えたての、あの魔獣熊さんの毛皮すらこんがりと焼いた、真炎を召喚してランバート卿の顔の前に突き出して見せる。
「あちっ」
「あら、熱いのですか?」
「それ、普通の炎じゃないでしょう? 数メートル離れていてもそんな拳大の大きさで、焚火なみの火力というか、温度差を感じるなんて。普通、あり得ない……」
「そうかしら? わたしにはまったく熱くありませんわよ? ほら」
そう言い、左右の手の間で行き来させたり、片手の指先をそこにつっこんで見せたりすると、ランバート卿は脂汗のようなものを流しつつ、呆れた顔をしていた。
「脅しですか、それ? もはや聖女ヘザー様よりも偉大な魔力を扱えるのでは……」
「かも、ね。どこまで話したかしら」
「貴方がサティナ様の許可を得て、アズライルの股間を焼き、復活させた後に牢屋に閉じ込められ、そしてサティナ様に救われた。そこまでですよ」
そう、なら次はどこからだっけ。アイリスは炎を消して口元に指先を当てた。
「まあこれは後から発覚したんですけどね。アズライル様の発言で」
「ほう」
「彼は聖女様と大神官様にサティナ様の神託がくだっていないことを知り、一計を案じるわけです」
「その辺りは知っていますよ。聖騎士のあれからも聞いていますし。議会を利用して王政転覆を考えた連中と貴族院が手を取るのを見ている訳にもいかず手を下したとかどうとか」
ちょっと違う。
アイリスは指先を立てて訂正する。
「王政転覆を考えていた民衆の代表たる貴族院。その集まりの長が我が父親である議会長で古き体制である神殿と王族は放逐されるかもしれないと危機感を抱いた。そんなところですよ。実際のところ、わたしは何も知らされずにいたし、サティナ様とアズライルの行き過ぎた思惑が呼び込んだ喜劇だったわけです」
「喜劇なんて、ひどい言い方だなあ」
「だって、わたしも被害者ですから。古すぎたのですよ、あの女神様が。その常識が……。神殿の過剰な女神様への拒否感と、アズライルのあの人の、王国への我がままな愛が大きすぎただけなの」
「被害者という割に、ここでそんなにのんびりしていていいのですか? もしかしたら、私の剣先が貴方に向くかもしれないのに」
カチリ、と腕の中に立てかけているそれを鳴らして、ランバート卿は不敵に微笑む。
しかし、アイリスは天にあれがいるのに無理でしょう? と言ってのけた。
「……さあ? 私には見えますが。ほかの方々がどうかはわかりかねます」
「でも、貴方の血筋ってそんなに濃くないでしょう? こんな辺境なんだし」
「ええ、それはそうですね。我が家が王家との血縁にあると言っても、僕は王国騎士止まりですから。アルフォンスの方が濃いでしょうね」
「アルフォンス……?」
「聖騎士ですよ、シュネイル卿」
「ああ、あれね」
「そう、あれです。従兄弟の命すら守れず、女神の側についたどうしようもない馬鹿な世代の代表格です」
ふう、とランバート卿はため息をつくと、部下に用意させたワインをグラスに注ぎ足していた。
軽い軽食がテーブルに用意されていたが、窓を開け放してじっと天空に視線をやるこの行為はなかなかに首と肩にきつい。
ソファーに深く腰掛ける彼に対して、アイリスは行儀悪く、自分で引っ張って来たベッドを壁際に押し寄せてその上にあおむけに寝そべっていた。
「その馬鹿な世代のおかげで、ここに一人。人生を翻弄された可哀想な女がおりますよ、ランバート卿?」
「可哀想なのは、貴方ではないでしょう? まあ、アズライルがあの妖艶な伯爵夫人にぞっこんだったことは否めないですが」
「あの……焼いても宜しいですか?」
左手に最近覚えたての、あの魔獣熊さんの毛皮すらこんがりと焼いた、真炎を召喚してランバート卿の顔の前に突き出して見せる。
「あちっ」
「あら、熱いのですか?」
「それ、普通の炎じゃないでしょう? 数メートル離れていてもそんな拳大の大きさで、焚火なみの火力というか、温度差を感じるなんて。普通、あり得ない……」
「そうかしら? わたしにはまったく熱くありませんわよ? ほら」
そう言い、左右の手の間で行き来させたり、片手の指先をそこにつっこんで見せたりすると、ランバート卿は脂汗のようなものを流しつつ、呆れた顔をしていた。
「脅しですか、それ? もはや聖女ヘザー様よりも偉大な魔力を扱えるのでは……」
「かも、ね。どこまで話したかしら」
「貴方がサティナ様の許可を得て、アズライルの股間を焼き、復活させた後に牢屋に閉じ込められ、そしてサティナ様に救われた。そこまでですよ」
そう、なら次はどこからだっけ。アイリスは炎を消して口元に指先を当てた。
「まあこれは後から発覚したんですけどね。アズライル様の発言で」
「ほう」
「彼は聖女様と大神官様にサティナ様の神託がくだっていないことを知り、一計を案じるわけです」
「その辺りは知っていますよ。聖騎士のあれからも聞いていますし。議会を利用して王政転覆を考えた連中と貴族院が手を取るのを見ている訳にもいかず手を下したとかどうとか」
ちょっと違う。
アイリスは指先を立てて訂正する。
「王政転覆を考えていた民衆の代表たる貴族院。その集まりの長が我が父親である議会長で古き体制である神殿と王族は放逐されるかもしれないと危機感を抱いた。そんなところですよ。実際のところ、わたしは何も知らされずにいたし、サティナ様とアズライルの行き過ぎた思惑が呼び込んだ喜劇だったわけです」
「喜劇なんて、ひどい言い方だなあ」
「だって、わたしも被害者ですから。古すぎたのですよ、あの女神様が。その常識が……。神殿の過剰な女神様への拒否感と、アズライルのあの人の、王国への我がままな愛が大きすぎただけなの」
「被害者という割に、ここでそんなにのんびりしていていいのですか? もしかしたら、私の剣先が貴方に向くかもしれないのに」
カチリ、と腕の中に立てかけているそれを鳴らして、ランバート卿は不敵に微笑む。
しかし、アイリスは天にあれがいるのに無理でしょう? と言ってのけた。
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