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第七章
女神、困惑す
しおりを挟む「なっ……んなっ……!!??」
へえ、と新しい発見を一つ。
神様でも予想外の事態には驚くのだということを、アイリスは発見してしまった。
いつもは女神様ぶっていて、それでいながらどこか抜け落ちているサティナが、この時ばかりは威厳だとか荘厳だとか、神秘的だとか。
そんな形容されるものからは無縁のおまぬけな顔をしていて、どこか面白くなりクスクスと笑ってしまった。
「こんにちは、我が主」
「なっ、我が主……? はい? どういうことでしょうか」
立ち直りはさすがというべきか、遅すぎる警戒心をそこらじゅうにまき散らしながら女神はすっくと立ちあがる。
もしなにか粗相をすれば遠慮なく焼き殺されそうな雰囲気も漂いはじめたから、アイリスは分かりやすく短く正確に返事することを心掛けた。
「わたしはいまから何年……四年後かしら。そこにいる、ドナード侯爵令嬢アイリスの十六歳になった姿です。というよりは、死霊のようなものですけど」
「死霊? 確かに――あなたたちは同じ魂をしているように見えるけど。でも死んだとは思えない」
胡散臭そうに自分をじろじろとねめまわす女神は、どうなっているのかしら、とぼやきどこから来たのと質問する。
アイリスはまだ地平線に残っている赤の月を指さした。
「あの、赤の月から来ました」
「は? 人間がどうやってあの場所に……」
「何でしょう、そうそう。グレイズトークステーション? そんな場所に招かれまして。そこから来ました」
「……どうして神々の遊興地に人間が入れるのよ……」
さあ? と肩をすくめたアイリスを見てそれでもサティナはこの場所に来れた理由は信じてくれるらしい。
何の権限で制止しかけたの、と問われてアイリスはこれまで見てきたこと、経験したことをかいつまんで説明する。どこまで主は知っているのかなと反応を確かめながら。
「サティナ様がこれから四年後に降臨されます。でも力は昔、妹のアミュエラ様の代わりになって多くを失ったままで。わたしは王太子アズライルと結婚前夜にいろいろあって婚約破棄。サティナ様が降臨されて、彼を焼きました」
「えっ! 焼いたって婚約者を!?」
まあ、驚くわよねーとしれっと自分の犯行を振り返りながらアイリスは心で舌を出す。
いいではないか。浮気男のあれを少し焼いたくらい。あとから元に戻したのだから。
「まあ、それは置いておきまして。サティナ様が聖女様と大神官様にコンタクトを取らなくなってしまったから、王国の政治は大混乱に陥りまして。異国の女神神殿から聖騎士なんて存在まで呼び寄せられる始末です。アズライル王子は死に損なって生きてるみたいだけど……とにかく、サティナ様!」
「何よ!?」
ぐっと逃げ場がないように両肩をつかんで、アイリスは叫んだ。
「もうこんな回りくどいことやめませんか!」
と。
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