彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

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第三話 香油と侍女と貴族の紋章

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「結界を発動したことと、このなかなか解けてくれない寝癖と、お嬢様の機嫌の元はすべて繋がっているようですね。ということは、あの二人の衣類や持ち物はまだ屋敷内にあるということですか」
「……そうね。ラルクとエリダの服はもちろん。彼の魔法剣もベッドのそばにあったし、エリダが普段身につけていた宝石なんかも多分まだ残ってると思う。 あの二人どうやってそれぞれの意識に戻ったのかしら」
「 戻った? そう言えるということは、最後まで確認をされたということですかお嬢様」

 そう問われ私は首を振った。
 最後まで確認する余裕なんてなかった。
 ただ、あの二人はもし河の中に放り出されたとしても、しぶとく生き残っているように思えて仕方がなかった。

「なるほど。わかりました、ではまずやるべきことからやりましょう」

 そう言うと、膝をついてわたしの髪を解きほぐしていた彼女はすっくと立ち上がり部屋を出て行こうとした。

「え、ちょっと待ってよ、レイ。何をするつもりなの!?」

 わたしは彼女の行動に驚き、質問と同時にほっていかないでと声を上げる。
 レイは扉を開けたまま、こちらに振り返りにっこりと笑って見せた。

「私の可愛いアルフリーダが泣くような目に遭わされたのです。おまけにその犯人たち二人は裸でこの屋敷を出て行くような恥知らず。そんな連中を、何もせずに放っておくなんてこんな馬鹿な事はありませんよ」
「でも…… どうするつもり?」
「決まっています」

 レイはもう一度微笑むと、これからするべきことを数えて教えてくれた。

「決まっているって……」
「まずは他の歌人たちに本日は屋敷に入れないということを伝えます。ラルクの私物は早く戻した方がいいでしょう。最も彼がこの屋敷の中で何をしていたかということの証拠に残しておくのも一つの方策ですが、お嬢様が盗み取ったなんて噂でも流されたら、それこそ大変なことになりますから。彼の大事なものだけは頂いておくとしましょう」
「大事な物って……あの魔法剣とか?」

 しかし侍女はそっと首を振った。
 どうやらそれよりもよ良い物があると言いたそうな彼女はとてもとても悪い笑みを浮かべて提案する。

「あの二人は貴族の令息や令嬢なのですから、それこそ身分を証明する何か常に身につけているはずです。例えば家紋の入った指輪とか宝石とかネックレスとかそういったもの。もしかしたら残っているかもしれませんよ」
「レイ、あなたって……。本当にただの侍女?」
「はいお嬢様。お嬢様のただの侍女です」
「どうか全てが良い方向で終わることを祈っているわ」
「もちろんです、お嬢様」

 レイが悪い顔を始める時はいつもこれだ。
 表面は優しくに優雅な仮面をつけて、心の中では深い深いこちらが不利にならない立ち回るための計画を練っている。
 これまでの十年の付き合いの中で、この時ほど侍女に感謝を捧げたことはなかった。

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