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第三話 香油と侍女と貴族の紋章
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「それではお嬢様。ご自分の髪は、ご自分でななさいませ。レイは他のことで忙しくなりますから」
「……頑張ってみる」
では、と一声残しレイは見えなくなった。
自分でやりなさいと言われなくても、そうするつもりだ。
だけど、このもつれた髪は――なかなかに大敵だった……。
どうにかそれをやっつけていつものように髪を洗い終えた頃、レイはバスローブとタオルを用意して戻ってきた。
「本当っ、ひどい目にあわされたって感じ」
そうぼやきながら浴室を出てバスローブを羽織り、髪に巻いたタオルで湿り気を取りながらソファーに座ろうとするわたしを、れいはダメですよと静止する。
居間にある家具はほとんどが祖父の邸宅から持ち込んだもので、どれも貴重な逸品だった。れいは古いものの手入れに関しては意外とうるさくて、総革張りのソファーに水滴一つ落とすことすら許してくれない。
こちらにどうぞと誘われて木製の椅子に寄りかかったわたしは彼女にされるがまま全てを任せていた。
やがて髪が乾き全身に手入れも終わった頃、レイがそばにいてくれることに安心したわたしは、まだ寝たりなかったのか少しウトウトしてしまっていた。
「アルフリーダー、さあ起きてください。今から朝が始まりますよ」
「うーんーっ。まだ寝ていたい……」
「駄目です。 時間は待っているようで待ってくれませんからね」
わたしの訴えはあえなく却下された。
では見てくださいとそう言うと、テーブルの上に彼らが残していったいくつかのものを広げて見せてくれた。
ラルクが昨夜来ていた紺色に染められたサテンのスーツに魔法剣。その他、小物が少々……財布とウイスキーを持ち運ぶために小さな水筒。スキットルと言ったか、その他には小銭だの魔道具だの、騎士が非番のときにも常備するナイフのようなものまでそそこにはあった。
エリダの私物は、と言えば小さな革製のバッグが一つ。
片手サイズのそれには小銭はおろか、紙幣すらも入っていない。
常に家人が同行している貴族なら当たり前のことだけど、化粧品の類と宝石類が中に入っていたのが彼女の淑女の体面を保っているかに過ぎなかった。
「……頑張ってみる」
では、と一声残しレイは見えなくなった。
自分でやりなさいと言われなくても、そうするつもりだ。
だけど、このもつれた髪は――なかなかに大敵だった……。
どうにかそれをやっつけていつものように髪を洗い終えた頃、レイはバスローブとタオルを用意して戻ってきた。
「本当っ、ひどい目にあわされたって感じ」
そうぼやきながら浴室を出てバスローブを羽織り、髪に巻いたタオルで湿り気を取りながらソファーに座ろうとするわたしを、れいはダメですよと静止する。
居間にある家具はほとんどが祖父の邸宅から持ち込んだもので、どれも貴重な逸品だった。れいは古いものの手入れに関しては意外とうるさくて、総革張りのソファーに水滴一つ落とすことすら許してくれない。
こちらにどうぞと誘われて木製の椅子に寄りかかったわたしは彼女にされるがまま全てを任せていた。
やがて髪が乾き全身に手入れも終わった頃、レイがそばにいてくれることに安心したわたしは、まだ寝たりなかったのか少しウトウトしてしまっていた。
「アルフリーダー、さあ起きてください。今から朝が始まりますよ」
「うーんーっ。まだ寝ていたい……」
「駄目です。 時間は待っているようで待ってくれませんからね」
わたしの訴えはあえなく却下された。
では見てくださいとそう言うと、テーブルの上に彼らが残していったいくつかのものを広げて見せてくれた。
ラルクが昨夜来ていた紺色に染められたサテンのスーツに魔法剣。その他、小物が少々……財布とウイスキーを持ち運ぶために小さな水筒。スキットルと言ったか、その他には小銭だの魔道具だの、騎士が非番のときにも常備するナイフのようなものまでそそこにはあった。
エリダの私物は、と言えば小さな革製のバッグが一つ。
片手サイズのそれには小銭はおろか、紙幣すらも入っていない。
常に家人が同行している貴族なら当たり前のことだけど、化粧品の類と宝石類が中に入っていたのが彼女の淑女の体面を保っているかに過ぎなかった。
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