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第四話 魔法剣と騎士の称号
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しおりを挟むそこに行くと、わたしのような二級魔導師は最底辺の爵位しかない割に、文書屋や代筆屋、弁護士たちが持つような法律の専門書も数多くそろえることが出来る。
爵位は代々受け継がれるものだし――文章に改ざんが出来ないように魔術をかけるのはわたしたちだからだ。
「おじい様の遺産がこういう形で役に立つなんて」
「皮肉だと言いたい? その遺産の一つにはこの侍女も含まれていますよ、お嬢様」
すっと横から手が伸びてきたかと思うと、インクが乾ききらないそれをレイはふーん、と斜め読みしていた。
そして、机の上に置くと、一つうなずき、私からペンを取り上げて品目一覧を記すために空けていたそこの、彼らの忘れ物をそれぞれ事細かく書き込んでいく。
なになに柄のドレス、一枚。何製のスカーフ、模様は何で製造元はどこそこ、という感じに。
それを二枚、二人分書き終えるとレイはそれでは、と紙袋を手にした。
「後はお嬢様が蜜蝋で封印をなされば、正式な拾得物申請書の出来上がり、ですね」
「拾ったものじゃないと思うのだけど……」
「屋敷内はもちろん、お嬢様の。アルフリーダの権利が及ぶ場所ですから。泥棒に来て撃退されたのか、遊びに来て忘れて帰宅したのか。大きな違いになるわ、もちろん、彼らは名誉が傷つかない方を選ぶでしょうね」
「選んだ後にやって来るのは、家から生涯出してもらえない生活か。それとも、分家筋かどこかに追いやられるか。騎士だと称号すらも失うかもしれない」
「主人の落とし物を届けてくれた恩人を恨む従者もいませんから。私の心も気楽になるというものです」
レイって本当に意地悪。
抜け目ないというか、慣れているというか、ずる賢いというか。
それでも、いまは頼りになる侍女だった。
この申請書が、地方都市であるこの街の役場の代わりも果たしている、教会に認められたらの場合だけど。
こうして書類と二つの紙袋を手にした侍女は、意気揚々と出かけたのだった。
我が家から歩いて五分もかからない目と鼻の先にある、教会に向かって。
「結界、本当に解かなくて大丈夫かしら? ま、教会とこの屋敷の間であの子を襲うような馬鹿はいないでしょうけど……」
ここいらは教会を最奥にしてその後ろには三メートルほどの外壁が、背後からの侵入を阻んでいる。
メインストリートではないけど、それに近い雰囲気は持っているかもしれない。
ガス灯が夜は煌々と付くし、城の衛兵と、教会が所属する王都の神殿から派遣された神殿騎士や、衛士たちが定位置に立ち、目抜き通りの治安の維持に努めている。
土日にもなれば多くの露店や商人たちが店を開くようになるこの通りには、普段から監視の目が多いのだ。
つまり、氷の魔女と呼ばれるわたしの役割を求めてくる人々もそれなりにはいることになる。
この屋敷そのものが、ボルダスの街の地下水脈の管理を任されたわたしの事務所になるからだった。
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