彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

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第六章 ドラゴンは魔法剣がお好き

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「どうする? その――腰が痛いなら戻るか? 俺にも責任があるし背中を貸してもいいぞ」
「冗談っ。わたしを背負ったら重すぎて歩けなくなるわよ?」

 ちょっとしたからかいを込めて、そう言ってやる。
 彼は両手を広げまさか、と反応すると、

「アルフリーダーほど細い女を抱き上げたぐらいでへこたれる俺じゃないよ」

 なんて、勘弁してくれたばかりに彼は言ってのけた。
 ちょっと前に私を抱き上げたラルクは、あの屋敷の一階から二階のベッドまで運びあげただけで息を切らしていたのに。
 
「……それなら、もしもこの先にいるドラゴンを見てわたしが気を失ったら運んでね」
「そんなにか弱い女だったか」
「たぶん? 重過ぎると思うから気をつけて」
「はいはい。もしもそうなったらなんとしてでも地上まで連れて戻るよ。あんただけでも必ず地上に戻ってもらわなきゃ俺が叱られるからな」

 その軽口に心の中で感謝する。
 都合よく叱りつけた女が機嫌を直すまで付き合ってくれるなんて。
 彼の心の広さに遅まきながら笑顔を取り戻し、

「ありがとう。仕事だからそうするって言われても嬉しいわ。それと――いきなり怒ってしまってごめんなさい」
「いいよ。あんたより癇癪持ちの女が俺の周りにはたくさんいるんだ」
「そんなに……モテるんだ」

 そう言うと彼は自分から気をつけろと言ったくせに声を隠そうともせず思いっきり笑い出す。大爆笑だった。腹を抱えてたまらないという風に目尻に涙まで浮かべながら笑っていて、私はしたたかに自尊心を傷つけられる。

「あんたは面白い人だアルフリーダ」
「そんなに笑うことないじゃない……傷ついたわ」
「悪かった悪かった。俺の前にいる女達っていうのは逃げてきた女性が多いんだよ。旦那に暴力を振るわれたり、税金が払えないからって途中追い出されて家族散り散りになるようなそんな連中さ。みんな余裕がないんだよ」
「そういうことだったんだ」
「そう! だからあんたの今の話も面白かったし――ハハッ、これはイイッ。いやすまない……あんたの男のことも思い出したら笑いが止まらなくなった」

 わたしの男。
 昔の男、昨夜までの男。
 今のわたしは誰にも束縛されない自由な女よ。
 案内人の右肩に固めた拳を軽く打ち込んで、それを証明する。

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