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第六章 ドラゴンは魔法剣がお好き
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「もういいから早く行きましょう」
「そうだな。ところで俺はそろそろ剣を抜こうと思うんだが構わないか」
ここから先は危険地帯、ということだろう。
彼にどうぞと手で促すとこちらも腰に佩いた炎の魔法剣をすらりと抜き放つ。
一度だけラルクが鞘から抜いて見せてくれたその刀身は、今も変わらず鈍いそれでいて金属ではないような闇色の光を放っていた。
周囲に漂う墨色のそれをまるで吸収してしまうかのように仄暗い。
「……どう思う?」
「その剣のことか? 一介の騎士が持つにしては――価値があるように見えるな」
「叩きつけたらドラゴンでも倒せるかしら?」
「やってみれば分かるかもしれない。できないかもしれないが……俺ならやらない」
トラブルに自分から付き合うのはごめんだ。
そう言ってイデアは自分から率先して次の鉱石ランプが待つ踊り場へと足を進めた。
最下層と呼ばれるそこはこれまで歩いてきたどの通路よりも広く古めかしく、それ以上に沈黙と暗闇が同居していて――何より湿気が充満している。
「こんな場所に住み着くもの好きもいるのね」
「人間じゃないからな魔獣の感覚はよくわからん」
そこからさらに数十メートル進み三つの天井に等間隔で設置された鉱石ランプを越えたその場所は、巨大な空洞となっていた。
見渡せば左右はそれぞれ二百メートルほども余裕があり、見上げれば天井があるようでないような。
その場所にも鉱石ランプは設置されているのだが、その灯りを辿っても照らし出せない高さが見て取れる。
王都にいた頃、週末の礼拝に訪れた神殿の礼拝堂もこんな感じだった。
――あそこは神聖な雰囲気に包まれていて、ここはその対極で最悪だけど。
「……おおきい……」
「な? そう思うだろ?」
思わず感嘆のため息を漏らし、わたしは彼らを刺激しないようにその場所から動けずにいた。
そこにいたのは数十頭の、小山ほどの巨大なウロコの群れ。黒々とぬめぬめとしていて、鉱石ランプの明かりを反射するそれは触れたら即、切れてしまいそう。
ドラゴン。
頭の先から尻尾の先まで数えれば多分、5五メートルはくだらない彼らは一度こちらにちらりと視線をやると興味なさげに瞼を閉じる。
全くやる気のないその素振りが異様なほどに強さを物語る。
伝説にあるような翼はなくて、でも四つ足ででっかいトカゲのような全身をしている。
「大きすぎるわよ。しかもこれだけの群れ、どっから入り込んだの!?」
「俺が知るかよ。それにあいつらよっぽど何かしない限りは俺たちのこと無視するんだぜ」
「脅威にする感じないっていうことなのかなー。わたしたちがありとか昆虫とか見ても特に何も思わないように」
「なんだか複雑な気分だな。地上にいたら俺たちの方が――」
と、そんなことをぼやいていると、なぜかわたしの持つ魔法剣が紅にぎらっと鈍く輝きを放つ。
「そうだな。ところで俺はそろそろ剣を抜こうと思うんだが構わないか」
ここから先は危険地帯、ということだろう。
彼にどうぞと手で促すとこちらも腰に佩いた炎の魔法剣をすらりと抜き放つ。
一度だけラルクが鞘から抜いて見せてくれたその刀身は、今も変わらず鈍いそれでいて金属ではないような闇色の光を放っていた。
周囲に漂う墨色のそれをまるで吸収してしまうかのように仄暗い。
「……どう思う?」
「その剣のことか? 一介の騎士が持つにしては――価値があるように見えるな」
「叩きつけたらドラゴンでも倒せるかしら?」
「やってみれば分かるかもしれない。できないかもしれないが……俺ならやらない」
トラブルに自分から付き合うのはごめんだ。
そう言ってイデアは自分から率先して次の鉱石ランプが待つ踊り場へと足を進めた。
最下層と呼ばれるそこはこれまで歩いてきたどの通路よりも広く古めかしく、それ以上に沈黙と暗闇が同居していて――何より湿気が充満している。
「こんな場所に住み着くもの好きもいるのね」
「人間じゃないからな魔獣の感覚はよくわからん」
そこからさらに数十メートル進み三つの天井に等間隔で設置された鉱石ランプを越えたその場所は、巨大な空洞となっていた。
見渡せば左右はそれぞれ二百メートルほども余裕があり、見上げれば天井があるようでないような。
その場所にも鉱石ランプは設置されているのだが、その灯りを辿っても照らし出せない高さが見て取れる。
王都にいた頃、週末の礼拝に訪れた神殿の礼拝堂もこんな感じだった。
――あそこは神聖な雰囲気に包まれていて、ここはその対極で最悪だけど。
「……おおきい……」
「な? そう思うだろ?」
思わず感嘆のため息を漏らし、わたしは彼らを刺激しないようにその場所から動けずにいた。
そこにいたのは数十頭の、小山ほどの巨大なウロコの群れ。黒々とぬめぬめとしていて、鉱石ランプの明かりを反射するそれは触れたら即、切れてしまいそう。
ドラゴン。
頭の先から尻尾の先まで数えれば多分、5五メートルはくだらない彼らは一度こちらにちらりと視線をやると興味なさげに瞼を閉じる。
全くやる気のないその素振りが異様なほどに強さを物語る。
伝説にあるような翼はなくて、でも四つ足ででっかいトカゲのような全身をしている。
「大きすぎるわよ。しかもこれだけの群れ、どっから入り込んだの!?」
「俺が知るかよ。それにあいつらよっぽど何かしない限りは俺たちのこと無視するんだぜ」
「脅威にする感じないっていうことなのかなー。わたしたちがありとか昆虫とか見ても特に何も思わないように」
「なんだか複雑な気分だな。地上にいたら俺たちの方が――」
と、そんなことをぼやいていると、なぜかわたしの持つ魔法剣が紅にぎらっと鈍く輝きを放つ。
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