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第十一章 ドラゴンと氷の魔女
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「あなたはそれほどに偉大な攻撃系の魔導を扱えるのですか? 相手はドラゴンですよ? 魔法が通用しないと世間では言われているのに、どうやって立ち向かうのです?」
「いえ、そういう意味ではなくてですね。わたし個人の力ではないんです。これ」
そう言い、神父様に見せたのはあの祖父から譲り受けた、はるか古代の宝石を加工したような護符だ。
「これには強力な魔力がずっと封印されてきたんです。どれくらい古い時代に作られたかもわからない、そんな代物です。年月を経過すればするほどに、魔力が増大していく。そんな魔導具です」
「いやいや、それを解放したところであなたが制御できるという自信があるなら、まあ……」
「街を吹き飛ばしていいなら、できるかも……」
「まだやったことはないんですね?」
「試したことあります。騎士団の演習場で」
「そういえばあなたはあそこの騎士の一人と婚約をなさっておりましたね。結果はどうでした?」
結果は……ひどいものだった。
高さ十メートルほどの巨岩が昔から演習場にはあり、普段、それには攻撃魔導の演習として魔法をぶつける訓練が行われていて――。
わたしのこれくらいなら大丈夫だろうと思って放った、攻撃魔法。
そう、それははるかに下位の力を持つ魔導ではなく、失われた上位の魔法だった。
王都で数年前に手に入れた古代魔法を記した辞典を持ち出したわたしは、白き灼熱の檻。と、名づけられていた火柱を数本立ち上げて相手を捕縛するという、その魔法を試したのだ。
「演習場に入られたことあります」
「随分昔ですが」
「大きな巨岩があったの御存知ですか?」
「ああ、あの……貴方の婚約者が魔法剣で砕いたという。あの大岩……」
「実は、あれを氷の魔法で破壊したのがわたしなんです……。白き灼熱とか書いてるから試したら、尋常じゃない暑さの氷の柱がそこかしこから飛び出てきて。あっという間に巨岩を絡めとってしまい……」
「どうなったんですか」
「氷の結晶になって、あっという間に砕け散ってしまいました。跡形も残さずに」
「なんて恐ろしい……そんなもの、街の地下で使わないでくださいね」
「分かっています。ちゃんと自重しますから……」
これで婚約者の名声は地に堕ちた。
少なくとも、神父様は知ってしまった。
彼の偉業はなんでもない、わたしの仕業だったことを。
ついでに、氷の魔女の名前は本当だったな、なんてラルクに呆れられたことも、今ではどうでもいい思い出だった。
「とにかく、ドラゴンについては先人たちも何もしなかったことが正解だと理解していたのでしょう。詳細な記録はもしかしたら他の資料庫にも残っているかもしれない。それはまた別に探るとして、問題は水質の方です。これについても今すぐどうこうしなければいけないということはない。大事なのは」
「やっぱりこれですかー」
「そう。あなたが監視するというそれですよ」
はあ……。
存在する限りは誰かがそれを監視しなければならない。
とはいえ、今の時代は監視するにしてもわざわざ二十四時間体制でやるという必要はなくて。
人員を雇い、魔導具を利用して、わたしがいまイデアとともにしているようにすればいい。
遠隔監視システムを構築すれば話は簡単で。
問題は……。
「またあそこに戻らなければいけないっていうのは、とても苦痛で嫌ですね」
「今度は私も一緒にいきますかな」
「え?」
「一級魔導師並みの紋章眼の宣教師の能力。見てみたくはないですか? 最も披露する場があればの話ですが」
「是非、よろしくお願いします」
はい、と返事ひとつでOK が出た。
ついでに話はまだあるでしょう、と彼は催促する。
「あります。婚約破棄を……女からしたいと思うのは間違っているでしょうか」
「話の内容によると思いますよ。調べ物も一段落ついたことだし、朝の礼拝までコーヒーでもいかがですか?」
「いただきます」
こうして、女神様の象が信徒を見下ろす一階の聖堂へと、わたしたちは移動したのだった。
「いえ、そういう意味ではなくてですね。わたし個人の力ではないんです。これ」
そう言い、神父様に見せたのはあの祖父から譲り受けた、はるか古代の宝石を加工したような護符だ。
「これには強力な魔力がずっと封印されてきたんです。どれくらい古い時代に作られたかもわからない、そんな代物です。年月を経過すればするほどに、魔力が増大していく。そんな魔導具です」
「いやいや、それを解放したところであなたが制御できるという自信があるなら、まあ……」
「街を吹き飛ばしていいなら、できるかも……」
「まだやったことはないんですね?」
「試したことあります。騎士団の演習場で」
「そういえばあなたはあそこの騎士の一人と婚約をなさっておりましたね。結果はどうでした?」
結果は……ひどいものだった。
高さ十メートルほどの巨岩が昔から演習場にはあり、普段、それには攻撃魔導の演習として魔法をぶつける訓練が行われていて――。
わたしのこれくらいなら大丈夫だろうと思って放った、攻撃魔法。
そう、それははるかに下位の力を持つ魔導ではなく、失われた上位の魔法だった。
王都で数年前に手に入れた古代魔法を記した辞典を持ち出したわたしは、白き灼熱の檻。と、名づけられていた火柱を数本立ち上げて相手を捕縛するという、その魔法を試したのだ。
「演習場に入られたことあります」
「随分昔ですが」
「大きな巨岩があったの御存知ですか?」
「ああ、あの……貴方の婚約者が魔法剣で砕いたという。あの大岩……」
「実は、あれを氷の魔法で破壊したのがわたしなんです……。白き灼熱とか書いてるから試したら、尋常じゃない暑さの氷の柱がそこかしこから飛び出てきて。あっという間に巨岩を絡めとってしまい……」
「どうなったんですか」
「氷の結晶になって、あっという間に砕け散ってしまいました。跡形も残さずに」
「なんて恐ろしい……そんなもの、街の地下で使わないでくださいね」
「分かっています。ちゃんと自重しますから……」
これで婚約者の名声は地に堕ちた。
少なくとも、神父様は知ってしまった。
彼の偉業はなんでもない、わたしの仕業だったことを。
ついでに、氷の魔女の名前は本当だったな、なんてラルクに呆れられたことも、今ではどうでもいい思い出だった。
「とにかく、ドラゴンについては先人たちも何もしなかったことが正解だと理解していたのでしょう。詳細な記録はもしかしたら他の資料庫にも残っているかもしれない。それはまた別に探るとして、問題は水質の方です。これについても今すぐどうこうしなければいけないということはない。大事なのは」
「やっぱりこれですかー」
「そう。あなたが監視するというそれですよ」
はあ……。
存在する限りは誰かがそれを監視しなければならない。
とはいえ、今の時代は監視するにしてもわざわざ二十四時間体制でやるという必要はなくて。
人員を雇い、魔導具を利用して、わたしがいまイデアとともにしているようにすればいい。
遠隔監視システムを構築すれば話は簡単で。
問題は……。
「またあそこに戻らなければいけないっていうのは、とても苦痛で嫌ですね」
「今度は私も一緒にいきますかな」
「え?」
「一級魔導師並みの紋章眼の宣教師の能力。見てみたくはないですか? 最も披露する場があればの話ですが」
「是非、よろしくお願いします」
はい、と返事ひとつでOK が出た。
ついでに話はまだあるでしょう、と彼は催促する。
「あります。婚約破棄を……女からしたいと思うのは間違っているでしょうか」
「話の内容によると思いますよ。調べ物も一段落ついたことだし、朝の礼拝までコーヒーでもいかがですか?」
「いただきます」
こうして、女神様の象が信徒を見下ろす一階の聖堂へと、わたしたちは移動したのだった。
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