彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央

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エピローグ

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 苦い。
 眠気覚ましにはちょうどいいだろうと思って濃いめのブラックコーヒーをもらったらとことん苦かった。
 うえっ、と舌を出してしまいそうになる。
 何かそれを我慢し、絶妙に微妙な顔をしてみせたら、ダーレク神父は楽しそうに笑いながらミルクと砂糖渡してくれた。

「お好きにどうぞ」
「……すいません」
「お気になさらずに。こんな夜は、のんびりと誰かと過ごすのもいいもんですよ」
「それは私にわたしする当てつけですか?」
「まさかまさか、そんな悪意はありませんよ。あの話を聞いた後でも、ね?」
「それはどうも……」

 幼なじみの女に、彼氏を奪われた話をした。
 彼氏というよりも結婚する日取りすら決まりかけていた。
 そんな仲だったのに。
 あっさりと、奪われてしまった。
 しかも、相手は彼を紹介してくれた女なんだから。
 何と言うか――。

「たちが悪いという以外、言い表しようがないですね」
「あっ……はい。すいません」
「あなたが謝る必要はありません。問題は結婚する前で良かったということです」
「本当に、そうなんでしょうか。もう結婚式の日取りすら決まりかけていたのに」
「良かったと思いますよ。むしろ結婚したかったらもっと大変だ」 
「離婚なんてできないんです……怖くて」

 レイはラルクのことをさっさと捨ててしまえばいいという。
 イデアは二人の問題だと言ったし、神父様はそこに関しては詳しく私的な感情を挟まないのはさすがというか。
 やっぱりわたしは強かった。

 婚約破棄をすることで、王族であるラルクや、この街の管理人である父親をもつエリダに恨まれ、後から何かされやしないかと。
 ようやく手にした二級魔導師という地位と、祖父から譲り受けたこの土地の管理権。
 それを失うことが、本当に怖かった。

 だって、それらは人が関わっているから。
 演習場で巨岩を壊したように簡単には割り切れないものだから。

「怖いというのは千差万別な感情ですから。どこまであなたの共感して話をしていいかわかりません。が、男性からの暴力という意味であれば、教会はあなたを守りますよ」
「……え?」
「だってそうでしょ? この教会は女神様のお膝元。知恵と自由と法律の番人であるフォンティーナ様、いらっしゃる場所なのですから。無慈悲な暴力から信徒を守るのも、また聖職者の務め。そう考えてはいますがね」

 あなたはどうですか? 問いかけるその視線で見つめられてわたしは言葉に詰まった。
 助けてほしい。
 その一言はなかなか喉のおくから出てきてくれない。
 出そうとしても出せないのだ。

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