61 / 62
エピローグ
3
しおりを挟む
「教会の主として、この街の市政を司る行政の長の一人として。認めます、今、認めました。あなたには責任はありません、あったとしてもそれは後からどうにでもしましょう。今は何も考えずこう言ってください」
「あ、なに、を?」
「婚約破棄します、と」
強烈な一言。
鮮烈であまりにも強引すぎて、続く言葉が思い浮かばない。
それでも無意識に本能はそれをは口にする。
「婚約破棄……します」
「よろしい。ラルク・セナスとアルフリーダ・ダーゼンの婚約の解消を認めます。理由は、簡単にしましょう。互いに半年間という仮の婚約期間をおいて共に過ごしたとしましょう、そしてあなた達は気付いた。自分達は仲が良くない。それだけで十分です」
「そんな主語のない……慰謝料はどうなります、それにあの二人の浮気は」
「浮気は別問題。慰謝料はもういいでしょ? 朝方あなたの侍女がやってきました」
「ああ、そう――行かせました」
「拾得物申請書。確かに受け取っています。あれを公表されれば互いに困る家もあるでしょう? どう思います?」
「それを盾にして、後からの報復は考えないんですか」
「この教会を相手にして? もちろんやろうと思えばどんな報復も可能です。あなたは女性だし、大金を出して暗殺者を雇うという方法も考えられる。ですがね、いいですかアルフリーダ。何百年も昔ではないのです」
「それは分かりますけど」
「ラルク・セナスが特権を持ち出してくるなら、こちらも特権を振りかざせばいいのです。あなたにはあるじゃないですか、アルフリーダ。この街の水源の管理権。それは今あなたの手にあるんですよ。つまるところ、地下のドラゴン退治に、あの巨岩をも魔法剣を打ち砕いたラルク・セナスを指名すればいいのです。彼は騎士であり、その前に国民に奉仕するべき王族の一員であり、何よりも凄まじく強い魔法剣士なんですから」
そうな計画を聞いてしまったらもう笑い出すしかない。
そこまでは思いつきもしなかった。
いいえ、うっすらとそうしてやろうかと思う気持ちもあったけど。
まさかこんなにきっちりとこうすればいいなんて、わたしには思いもよらない。
「神父様、本当にただの神父様ですか?」
「もちろん、ただの神父です。ただし、世界に教会の神父は十数万といるでしょうが。紋章眼の宣教師は、たった数百人です。そこはお忘れなく」
「ダーレク神父との出会いに感謝いたします。女神様にも」
「ありがとう。それでは正式な受理証明を作成することとしましょう。ああ、それからあれです。この件は教会が請け負いましたので。教会から市長を通じて、ラルク・セナス氏に退治を依頼することにします」
「そうしていただければ嬉しい限りです」
にんまりと意地悪そう微笑む彼は、本当に神父なの? と言いたくなるくらい、悪党の顔をしていた。
その微笑みの対象にならないように気をつけよう。
この時、わたしはそう心に誓ったのだった。
「あ、なに、を?」
「婚約破棄します、と」
強烈な一言。
鮮烈であまりにも強引すぎて、続く言葉が思い浮かばない。
それでも無意識に本能はそれをは口にする。
「婚約破棄……します」
「よろしい。ラルク・セナスとアルフリーダ・ダーゼンの婚約の解消を認めます。理由は、簡単にしましょう。互いに半年間という仮の婚約期間をおいて共に過ごしたとしましょう、そしてあなた達は気付いた。自分達は仲が良くない。それだけで十分です」
「そんな主語のない……慰謝料はどうなります、それにあの二人の浮気は」
「浮気は別問題。慰謝料はもういいでしょ? 朝方あなたの侍女がやってきました」
「ああ、そう――行かせました」
「拾得物申請書。確かに受け取っています。あれを公表されれば互いに困る家もあるでしょう? どう思います?」
「それを盾にして、後からの報復は考えないんですか」
「この教会を相手にして? もちろんやろうと思えばどんな報復も可能です。あなたは女性だし、大金を出して暗殺者を雇うという方法も考えられる。ですがね、いいですかアルフリーダ。何百年も昔ではないのです」
「それは分かりますけど」
「ラルク・セナスが特権を持ち出してくるなら、こちらも特権を振りかざせばいいのです。あなたにはあるじゃないですか、アルフリーダ。この街の水源の管理権。それは今あなたの手にあるんですよ。つまるところ、地下のドラゴン退治に、あの巨岩をも魔法剣を打ち砕いたラルク・セナスを指名すればいいのです。彼は騎士であり、その前に国民に奉仕するべき王族の一員であり、何よりも凄まじく強い魔法剣士なんですから」
そうな計画を聞いてしまったらもう笑い出すしかない。
そこまでは思いつきもしなかった。
いいえ、うっすらとそうしてやろうかと思う気持ちもあったけど。
まさかこんなにきっちりとこうすればいいなんて、わたしには思いもよらない。
「神父様、本当にただの神父様ですか?」
「もちろん、ただの神父です。ただし、世界に教会の神父は十数万といるでしょうが。紋章眼の宣教師は、たった数百人です。そこはお忘れなく」
「ダーレク神父との出会いに感謝いたします。女神様にも」
「ありがとう。それでは正式な受理証明を作成することとしましょう。ああ、それからあれです。この件は教会が請け負いましたので。教会から市長を通じて、ラルク・セナス氏に退治を依頼することにします」
「そうしていただければ嬉しい限りです」
にんまりと意地悪そう微笑む彼は、本当に神父なの? と言いたくなるくらい、悪党の顔をしていた。
その微笑みの対象にならないように気をつけよう。
この時、わたしはそう心に誓ったのだった。
6
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる