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12 パンツ
しおりを挟む「やっぱり。全然違うじゃないですか・・・」
と、彼は言った。
「え? 何が、ですか?」
「ヨウジから、いつもお姉さんのことを、レナさんのことを、・・・あなたのことを、聞いていました」
「ああ。弟が・・・。何て言ってました。どうせ、悪口ばかりだったでしょ」
「そうです」
サイトーさんはにっこりと微笑んだ。
「狂暴で、ガキの頃からイジめられまくってますって」
「やっぱりね・・・。帰ったら、とっちめなくちゃ」
自分で言ったこととはいえ、まあ、仕方がない。
「でも、本当はとても、優しい人なんだって。いいお姉さんなんだって・・・」
「え? 弟が、そう言ったんですか」
「いいえ。言葉では、言ってません。でも、わかりますよ。あなたの悪口をいうときのヨウジは、いつも楽しそうですから」
後輩の面倒見の良い先輩なのだな・・・。
レナはその厚い胸板に手を添えた。
一度放出してしまってリラックスできたのか、その態度に硬さや衒いや遠慮が無くなり、ありのままの、自然体のサイトーさんになっているような気がした。
こういう人だったんだ・・・。
「もう一度、しませんか」
「・・・いいんですか」
「だって、このまま終わるのは、イヤじゃないですか」
枕元を探ると、ゴムの包装が二つ置いてある。
それを手に取るレナに、サイトーさんは言った。
「あの・・・、それ、多分、入らないス」
「ああ・・・」
レナは、すぐに理解した。
「必ず外に出してくれるなら、生でもいいですよ」
我ながら、十七歳の女の子にあるまじき発言だとは思う。
チャレンジはした。しかし、結論から言えば、その夜、レナはサイトーさんを迎え入れることは、出来なかった。
サキさんとなら、滴るほどに濡れるそこ。それが、ほとんど潤わなかったのだ。
舐めて。
その言葉が喉まで出かったが、そこは、なんとなく、自重した。
その代り、しょんぼりするサイトーさんが気の毒になり、口でしてあげようと股間に手を伸ばして顔を埋めようとしたが、
「そ、そんなこと、させられません」と言われ、肩を押し戻された。
やっちまったか・・・。とは思ったが、済んだことは仕方がない。
「ゴメンナサイ。こんな女なんです、わたし。もし、イヤなら遠慮なしで、そう言ってくださいね。別に、気にしませんから」
シャワーを浴び直して服を着ながら、なかば諦めモードでそう言った。
ちょっと、この言い方は、冷たすぎはしないだろうか・・・。とは、思った。
「とんでもない」
と、サイトーさんは言った。
「こんな自分でよければ、これからも、付き合ってください。レナさんは、自分が思ってた以上のひとです。ほんとです」
三歳下の女子高生に、彼は最後まで敬称付きだった。
サキさんのような洗練は、申し訳ないけれど、カケラもなかった。でも、その誠実な人柄に、ほんわかしたものを感じ、LINEを交換し、家路についた。
木訥なクマのようなサイトーさんの事を思いながら、ゆったりと湯船から上がり、部屋に戻ってふと気づいた。
「パンツが、若干、足りないような気がする」
そもそも。
それまでのレナはあまり下着に関心がなかった。
下に穿くものと言えば、生理用のを除けば、オールコットンの、三枚セット四百九十円のものをセールの時に量販店でまとめ買いしていた。それに強いて言えば、アンダースコートとか、寝間着を兼ねた部屋着のショートパンツぐらいのものだった。
それが、サキさんとの出会いから急に凝り出して、一着三千円の原色のTバックショーツを買ったあたりから少しずつ変わっていた。
改めてみると、箪笥の中の総数が、約六分の一ほど、枚数にして二、三枚がないような気がする。その中に、お気に入りの勝負もの、黒のTバックのヤツが入っていた。
買ったばかりなのに・・・。
まさかとは思うが・・・。
壁際に立てかけてあるおもちゃのプラスチック製のバットを手に、ヨウジの部屋に行った。去年、ヨウジと行った縁日の、屋台で買ったものだった。
「コレ、お前シバくのに丁度いいわ」
セットに付いていたボールは、ちょうど隣にいた浴衣姿の見知らぬ幼稚園児の男の子にあげた。バットでヨウジの頭をポンポン叩きながら家に帰ったのを思い出す。
「ヨウジ、起きてる? 自家発電中?」
ごそごそと音がした後、なんだよ、と反応があった。
やっぱりか・・・。カギが掛かっている。
「とりあえず、ここ、開けろ」
っるせいなあ、という声が近づき、ドアが開いた。
「なに?」
Tシャツの下の腹をボリボリ掻きながら、不機嫌なヨウジの顔がヌッと出た。
男の匂いが一緒に漂い出てきた。オエッ・・・。
「あんた、まさかと思うけど、姉ちゃんのパンツ、イタズラしてないよね」
「してねーよ。するわけないだろ」
そういうヨウジの目が、泳ぎながらレナのショートパンツの太腿に注がれていた。
すかさず、バットで頭を殴った。
「どこ見てんだよ。露骨なんだよ、目線が」
「・・・ってーなあ! 姉ちゃんのパンツなんか知らねえよ」
「そう・・・。じゃあ、いいよ」
「なんだよ。急に来てその言い方!・・・ったく、叩かれ損かよ」
「言っとくけど、もし、あたしのパンツイタズラしたら、殺すから」
「だから、してねえって」
そう言ってヨウジはドアを閉めようとしたが、閉めかけて、立ち止まった。
「・・・どうだった?」
と尋ねてきた。
「は?、何が」
「サイトー先輩。今日、デートしたんだろ」
「・・・うん」
「で?」
「は?」
「だから、どうだったんだよ」
「うん・・・。フツー?」
「付き合うの?」
「どおしよっかなあー・・・ってとこ」
「・・・姉ちゃんには、似合わないよ」
ヨウジは、そう呟いて目を落とした。
「なんで。意外に真面目そうないい人じゃん、サイトー先輩」
「わかんねーよ、姉ちゃんには・・・。とにかく、姉ちゃんには、サイトー先輩は、似合わない!」
ドアが、閉まった。
なんだ、コイツ。自分で紹介しておきながら。変なヤツ。
あのプレイルームの日から一週間が経った。
まだサキさんからは次の調教の日程が来ない。報告に対する返事が一回だけ、あっただけだった。これは、放置プレイだ。SMのM女のプレイとは、結局のところ全て放置プレイに収斂してしまうのではないだろうかと思うほどに、待たされている。
仕方なく、課題だけには取り組んだ。
レナの通う高校は普通の県立の進学校だった。
毎年、上位百名ほどが東西の偏差値六十以上の有名大学に行く。その中の、さらに上位十名前後が、東西の最高学府に進学していた。レナはまだその百名中にすら、入っていなかった。
「そうだなあ。お前の場合、相当頑張らんと、ここもここもここも・・・」
進路指導の教師は、そう言いながら、レナの目の前で進学先のリストの欄を上から順番に鉛筆で乱暴に線を引いて消していき、ほとんど真っ黒になったその紙をレナに返して寄こした。公立高の教師には、おかしな奴が多い。
しかし、それを嘆いていても仕方がない。サキさんとの、甘くてエロい、結婚生活のためだ。とりあえずは、トップ百に入ることを目指そう。
自分だけのプレイルームで、サキさんに心ゆくまで責められ、調教してもらうことを楽しみに、レナは黙々と机に向かっていた。
もう一つの課題は、それよりはラクに達成出来そうだった。
昨日の土曜日、まずは第一段階をクリアした。
結論を先に言えば、レナは、サイトーさんの巨大なイチモツを迎え入れることが出来た。
今回のメイクラブにあたり、レナは、前回の反省点を冷静に分析した。そして、まずは自分がエロい気分にならねばダメだと肝に銘じた。
最初のデートから、毎日のように長くてつまらないLINEを送ってくるサイトーさんを誘い、前回よりは緊張の取れた彼を早々にホテルに連れ込み、シャワーを浴びさせ、ベッドには行かずに洗面台の前に立たせた。大きな鏡に、大きなサイトーさんと、早くもエロい顔をした自分が映っていた。
「キスして下さい」
そう言いながら、見上げるような大男の前に立ち、その首に両腕を回し、ほとんどぶら下がるようにして、口を引き寄せた。ちょっとキツめのコロンが鼻を突く。一応、気を遣っているつもりなのだろう。
唇を滑らせ、舌で嘗め、舌を入れて、舌を絡ませた。
「背中とか、お尻とか、触ってください」
おずおずと大きな掌がレナの肌を這った。勃起した乳首をサイトーさんの腹の上でころころと転がす。
「あふ・・・。気持ちいいですか・・・」
サイトーさんは、目を閉じ、鼻から深い息を吐いた。
「・・・はい」
横目で鏡を見る。筋肉質の、黒々としたマッチョに抱きつき、自らの乳首で肌を弄び、男の乳首に舌を這わせる、イヤらしい、蕩けた目をした、女子高生。
充分、エロいな・・・。
おお。濡れてきたぞ。
サイトーさんのが、レナの股間を、下からムクムクと押し上げて来る。それを太腿で挟み込む。男根はそれでもなお、レナを押し上げようとする。
もしかすると、このまま持ち上げられちゃうんじゃ・・・。そんな突飛な想像をして、また濡れる。クリトリスが圧迫されて、擦られる。しばらく、腰を前後させ、愉しむ。
「あ、気持ちいい。すっごい、ヤラしいです」
愛液が潤滑して動きがスムーズになってくると、快感が昇って来た。
「ああ。サイトーさんの、カチカチです。すごい、感じちゃいます」
『言葉に出せ』
ふいに、サキさんの声がした。
『感じたこと、したいことは全部言葉に出せ。そうすると、もっと気持ちよくなる』
サキさん・・・。
レナは、サキさんとは違う男のモノを股で扱きながら、微笑した。悪い女だな。と、思う。
サイトーさんも興奮し始めたのか、レナの尻を掴み、揉むを繰り返しながら、首筋にキスをしてくる。
「レナさん・・・。いい、匂いです」
とサイトーさんは言った。前回より、進歩を感じる。
「レナ、さんは、やめてくださいよ。レナって、呼び捨てでいいです。そのほうが、感じますから・・・」
「・・・はい」
レナはまたも、微笑した。
サイトーさんを鏡に正対させ、背中に回り、手でサイトーさんの胸を腹を、愛撫しながら、抱きかかえる様に、両腕を、下の方へ。中学からテニスを始めたレナでも、どちらかというと、左より右の方がリーチが長く、掌の大きさも右の方が大きい。握力も、右だった。右が先に届いた。サイトーさんの男根に、やっと、指先が、届く。
やっぱり、大男だ、と、思う。
指で触った、それはもう、天を突いていた。
「ウッ・・・」
男の発するうめき声に、ゾクゾクした。
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