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おけいこのはじまり

28 貸し出しのおけいことペンダント

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 そのイワイのブランドのラインナップを見てみたい。

 店には連れていけないけど、と彼のマンションについていった。

 父と同じで、事業をしている男だが、イワイの話の方が手で触れる。実感できる。そういう商売の話に以前から興味があった。それにもう肌を合わせている。いまさらどうこうなどと気にしなくて済んだし、もしそうなるなら、それでもいいと思った。

 要するに、イワイに興味が湧いた。


 

 彼の部屋は本と宝飾品のサンプルとカタログで埋まっていた。

「わあお・・・」

「狭いやろ。最初はもっと広かってん。なんや、いつの間にこうなってしもた・・・」

 様々な紙袋やケースや分厚い素材の見本帳やらで埋まった隙間にみえるカーペットを飛び石伝いのようにしてキッチンのテーブルまでたどり着いた。そしてもう一度部屋をぐるっと見回した。現代アート、古典、東西の歴史、美術品のカタログ本。そんなもので壁の本棚は埋まっていた。絵画も飾ってある。レプリカなのだろうが、かなり有名な現代絵画の数点が飾られていた。

「いろんなもんに興味が湧いてまうねん。気に入ったもんは手に入れんと気ぃすまんねや」

 もう一度飛び石で、今度は本棚のそばに行った。乱雑なようでもきちんと分野別にまとめてある。今図書館で読んでいた平安時代の古典や江戸時代の浮世絵のグラビアもある。それを手に取って開いた。美人画だ。

「キレイや思わへん?」

 後ろにイワイが立っていた。

 太い指が伸びてきてスミレが見ている画の一部を指した。

「足の親指見てみ。反り上がっとるやろ。これも、これも、これもや」

 次々にページをめくり、同じように草履の足の指が反っている絵を繰ってゆく。

「これが美人なんや。当時のエロティシズムいうやっちゃ。なんでやわかるか?」

「・・・どうして?」

「あの時、エクスタシーの瞬間に足の指にちから入るやろ。それを表しとんのや。『小股の切れ上がった女』言うてな。ここを小股いうのやで」

 イワイの指がスミレの髪をかき上げてうなじを晒した。

 首筋にキスを受ける。

「その気で来たんやろ?」

 耳に息がかかる。ゾクゾクと震える身体をゆっくりとしっかりと抱きしめられる。画本が取られ、さらに力強い腕が、締め付ける。胸の奥が、キュンと鳴る。頤に指が這う。

「図書館で会った時からそうやった。レイコちゃん、顔に出とんのやで。『抱いて』て」

 うそ。でも、今は説得力ゼロだ。身体が少しづつイワイを欲しがってくる。

「甘くて優しいのんと、激しくてキツいのんと、中年オヤジのねちょねちょのヤラしいのんと。三色取り揃えてますゥ。いろいろ、選べまっせ。どないすんのん」

 彼の下半身のいきり立ったものが尻に押し付けられる。たまらない。思わず首を後ろに向ける。でも、キスはくれない。

「時間切れになると。お店閉まってまいますゥ。どうなさいますかぁ」

「全部。全部ください」

「毎度ありがとうございますゥ。高こなりまっけど、よろしですかぁ」

「どのくらい、ですか・・・」

「それは、レイコちゃんの言い値ですゥ」

「スミレ・・・」

「もういっぺん。言うて」

「わたしの名前。スミレっていうの」

「よう・・・、言うたね、スミレ」

 分厚い舌がもう一度首筋を這い上る。そして耳たぶを噛み、耳の穴の中を舐め回される。それだけで膝がガクガクするほど、感じてしまう。

「・・・ん、・・・あ、・・・はっ・・・」

「じゃあね、そこにお尻載せて。優しくと、激しくと、ねちょねちょとミックスでさしてもらいますゥ」

 スカートがたくし上げられ、デスクの縁に尻を押し付けられると、片脚を持ち上げられる。あっというまにショーツ一枚が、最後の防衛線になる。

「またイヤらし、エロいストッキング履きはってまあ・・・。舐めて言うとんのと一緒やで。ほな、いかしてもらいまっさ」

 イワイの舌がストッキングの上端のゴムの部分を執拗に舐める。もう一方の手が強引に太腿を押し開き、股間が全開される。

「恥ずかしないんかなあ。こおんなに、お股おっぴろげてまってェ。しかも、こんなおっさんの前で。けしからんで、ホンマに。しかも、お股、匂うで」

「うそっ・・・いやっ!・・・やめて、言わないでっ!」

「やけど、匂うモンは匂うんやもん。あ、ヤバいで。シミできてるやん」

「いやあ・・・あ、も、いやっ」

「イヤなん? もう止める? どっちなん?」

「やめ、ないで・・・」

「なんちゅう、わがまま娘なん? スミレ。レイコよりスミレの方がわがままちゃう?」

 おかしなことばかり言い、太腿の付け根ばかり舐めるイワイの舌が恨めしすぎる。その一言ひとことが、スミレの恥辱をかきたてる。そして確実にそこが濡れてゆく。それだけは事実なのだ。どのような弁解も無駄だった。

 片方のストッキングがくるくると丸められ、抜き取られる。それを嗅がれるのがまた、辛い。

「ちょ、やあ~ん」

「一日分の汗が染みていい味だしとんね。やめられまっかいな」

「やだもう・・・」

「うわ、先、香るで。ブーツやもんなあ。籠っとったなあ、におい!」

 ゾクゾクが止まらなくなっている。ストッキングを首にかけ、舌が今度は、足先に向かってゆく。

「脚下ろさんで。机の縁に載せとき」

 大きく脚を開いて男に股間をさらけ出してただでさえ恥ずかしいのに、さらにそこを強調するようにMの字に。そうしている間に舌がふくらはぎからくるぶしへ足の裏へと這う。

「も、やあ、・・・はず、・・・ああん」

 足の裏に舌が這うくすぐったさと恥ずかしさで身もだえする身体をゾクゾクまでが這いまわる。このゾクゾクを何とかしてくれないと気が狂いそうだ。長い脚を曲げられ足首をがっしりもたれ、目の前で足指まで舐めはじめている。赤いペディキュアを施した爪先をご丁寧に一本ずつ舐め、しゃぶられ、恥ずかしさが最高潮に達する。そんな、恥ずかしいところをこんなにしつこく、ねちっこく舐められるなんて・・・。

「これがお前の小股やな。臭さ抜群やな」

「もう、やあっ! やめ、ああん、・・・そん、・・・ああ、汚、やあん・・・」

「ええとこのお嬢みたいなべっぴんちゃんでも臭いもんはくさいんやなあ。庶民安心するわ」

 舌はなおも足の親指と次の指の間をチロチロ、ぺろーり、ちゅぱちゅぱと舐めている。その間にもう一方の手の爪が、もう片方の内股をぞわぞわと触れるか触れないかで肌を掻く。

「ああん。・・・ああん。も、ああ、いやっ! も、ダメん」

「うわ、なんやお前」

「な、なに?」

「ワシの机なにびしょびしょにしとんのや」

「え、ええっ?」

「見てみい。ショーツから垂れとるやないか。しょうもな。このスケベ。なにしてくれとんねん」

 ほんのちょっとシミが机に付いただけなのに、大げさに恥ずかしいことを。しかも次々と・・・。カアーッと顔が熱くなる。スミレは完全にイワイの術中にはまり、言葉一つで官能を揺すぶられ、もてあそばれている。

「そんなこと、ああっ、も、やだっ!」

「そないなスケベはおしおきで再教育せなアカンな」

 ゾクゾクする感覚がもう背中から股間に移り集中し始めた。ショーツの事を言われたせいだ。

「なにこのぽっこり。クロッチ突き上げとるやないか。触ったろ」

「ああーん。そこか、かん・・・じ、あああっ」

「めくってもええのん? あんま溢れさすなよ。溢れさしたらおしおき倍増やぞ」

「そこ、やあん」

 そのクロッチがずらされる。ついに肥大したクリトリスが晒される。前にもそこを舐められているのに、この恥ずかしさはなんだろう。

「うっわ、ぐっちょぐちょ。ビラビラ真っ赤。なにこのクリ。小豆になっとるやないか。お前、エロ過ぎやで。こんなスケベオ●コ人の前で晒して。悪い思わんのか!」

「なんで、そん、・・・ああ、・・・酷、・・・も、やああっ」

「ごめんなさいゆえ。ヤラしいオ●コでごめんなさいゆえや」

「やだあっ!」

「やだやないで。こんなヤラしいオ●コ申し訳ないゆわんと許されへんで」

 そしてついにクリトリスに舌が。

 分厚い熱い軟体動物がゆっくりじっとりとクリトリスを押しつぶすように這い、唾液を塗され時折ヴァギナの愛液を掬ってはさらにグチョグチョ、音を立てて吸われもし、悶絶寸前まで追い込まれる。

「なに悶えとん。ゆえ言うたやろ。ヤラしいオ●コでごめんなさいゆえ」

「あああん。や、ヤラしい、オメ、オ●コ、・・・も、やあっ! ああん。ごめんなさいーっ、ああん。ごめんなさ、ああん!あ、あ、い、い、」

「こんなんでイクんか。そら、反則やろ。約束違反や。」

「そん、約束、なん、・・・だって、ああん、・・・きもち、ああん。あ、あ、あ、いっ! んんんんああああっ!」

 大きく仰け反り、体中が何度も痙攣し、スミレはその狭い机の縁の上で、絶頂した。

 仰け反っている上体をクンと引かれると、絶頂を迎えたばかりで痙攣の続く身体が自然にイワイに覆いかぶさる。くるりと机を向かされ、膝の裏をカックンされる。そんなことされるのは小学校以来だ。自在に女を転がすイワイの手際。転がされる感覚に萌える。両肘が机の上にトンと落ちる。

「うっとこのブランドのラインナップ、見たかったんやろ。目の前にカタログあるやん」

 どうして今、それを見なければならないのか。そう思いつつものろのろ、そのグラビアのような立派な装丁を手にしてしまう。

「あっ・・・」

 イワイの手がセーターの裾から潜り込んで胸シャツの上から胸を鷲掴みにする。優しいけれど強く揉まれると吐息が出てしまう。その間にもう片方の手がシャツのボタンを上から順に1、2、3、と外しあっという間にブラジャーがぶるんとずり上げられてしまう。

「ええ感じのおっぱいやなあ。弾力あるし、吸い付くわ。もう乳首、コリコリやないか」

 もう片方の手が鷲掴みに加わる。

「ちゃんと見とんの? 見たいいうから連れて来たんやで。しっかり見てや」

 そんな耳元で囁かれても。胸を揉まれ乳首を指の間に挟まれ、さらに耳や首筋に息を吹きかけられ・・・。イッたばかりでまたこんなにゾクゾク感じさせられたら・・・。そのグラビアのようなカタログを開いたまま愛撫に陶酔し吐息を漏らすしかなくなっている。

「あっ・・・ああ、・・・ん、あっ・・・」

「声もエッチ過ぎやし・・・。周りの男、迷惑やで。そんなん道歩かれたら、襲いたくなってまうやないか。ああ? 話、聞ぃとんの」

「そ、ああ、そん、こ、あ・・・、いわ・・・れ、あん・・・」

 急に片方の手がスッといなくなったと思ったら、ショーツがスルッと下げられ、中途半端な位置に下ろされてしまう。すかさず前から草むらの下のクリトリスに、ヴァギナに指が這う。イカされた直後で敏感のままのそこが再び充血してくるのがわかる。

「だめ、あ・・・だ、ああっ! そこ、ああん・・・」

「お客様。お代金、まだでっせ。ちゃんと払ろてや」

「あっ!・・・ちょ、まっ、・・・ああっ!」

 さらにいつの間にズボンを脱いだのか、イワイの禍々しいモノが脚の間から顔を出し亀頭が突き出ていた。手を掴まれてそこに誘導される。やっぱり、巨きい。その異様にゴツゴツした塊を自然に愛撫してしまう。

「今、どんなカッコしてるかわかる? オッパイいらわれて、オ●コいらわれて、クリ転がされて、それでもケツ突き出して、ひとのモノ太腿で挟み込んで・・・しかもグチョグチョに濡らして。そんなん、お代金ようなりまへんで。もっと気持ちようしてくれな・・・」

「あっ! そん、・・・あっ!・・・」

 亀頭の上の張り出したでっぱりがクリトリスを何度も押しつぶす。スミレの愛液で潤滑のよくなったそこを何度も往復しては太腿の間から出てきてクリトリスを責める。もっと責められたくなってしまい、自然に身体が起き上がり反り返り、片手はイワイの首に回り彼を求めてしまっている。もう片方の手は、イワイのモノを自分の中に誘導したがってまだそこにいる。そして出てくるたびに押し付けてしまい、それが強くクリトリスを刺激する。それなのに、出てきたり引っ込んだりばかりでスミレの思うままになってくれない。もどかしさが我慢の限界を超える。たまらない。

「追加料金いただきまっせ。ちゃんと言わな」

「・・・ああっ! ・・・あっ、欲し、ああん、・・・いいんんっ」

「何べん言わすの? これ欲しくないん? そんなら、店じまいやで」

「挿入れて・・・」

「どこに? スミレのどこに、誰の、何を、どのように、どこまで」

「スミレの、ああっ! ・・・そこ、あっ!・・・あ、いいっ!・・・ああん、あ」








「大赤字やわ・・・」

「え?」

 イワイの布袋腹の上に片脚を残したまま、彼の身体からずるりと降り、荒い息を整える。

「れ、スミレちゃん。才能ありすぎや・・・」

「今、レイコって言いそうになったでしょ」

「かんにんや。レイコで慣れてもたし。でもレイコやとレイコさんとカブるしなあ。ちゃんとスミレで上書きせな・・・きっとアンドはんやろ、レイコてつけたんは・・・」

 サキさんのことを言い出したのは無視した。

「才能って、なに?」

 スミレは彼の肩に頭をのせて呟くように尋ねた。

 周りにはものがあふれていてベッドの上だけが何もない空間だった。どっちも全裸。もう冷え冷えとし始めている薄暗い部屋の中だが、ようやく熱い身体の交歓が終わったばかりで汗ばんでいたし、イワイの身体も熱かった。

「イク才能や」

 イワイは言った。

「イクにも才能があんねん。ホンマ、エロのために生まれてきたようなコォやで、れ、スミレちゃんは・・・。おっさん、かなんなあ・・・。どこまでいったら満足すんねんな。精子干上がってまうやないか・・・。ホンマ、大赤字やわ。そのうち、火だるまなってまうなあ、きっと・・・」

 長い髪の毛先をつまんで束にし、イワイの少し胸毛の生えた胸を、乳首をくすぐる。それを面白そうに見下ろしながら、イワイはスミレの肩を抱き寄せた。

「アンドはん、相変わらず忙しいんか」

「・・・うん」

「週にどのくらい会うてるん?」

「一回もないときもある。・・・最近は十日にいっぺんくらいかな」

「それも、せつないなあ。・・・れ、スミレちゃんがいいゆうなら、こんなおっさんでよければいつでもおもちゃになってあげるよ、五十前のおっさん、決算大赤字覚悟や。前も言うたけど。離したないねん、ホンマは」

 抱かれた肩にぎゅっとされる。この人はどうしてこんなに見た目のキャラに似合わない、キュンキュン言葉とキュンキュン仕草ばかりを次々と繰り出すのだろう。よろめいてしまいそうになるじゃないか。

「週に二日三日・・・。アンドはんから借りたいなあ」

「わたしは本ですか」

「あんまりおもろすぎて、ほんで、分厚すぎんのや、この本。新刊なのになあ」

 イワイの手が優しくスミレの頬を撫でる。

「館外持ち出し禁止解いてもらわな。・・・アンドはんに筋通さななあ・・・。一回、会わせてよ」

 きたきた。

 レイコさんの言った通りだ。

 その手に手を重ね、押し付ける。ああは言われたけれど。何度もイカされて充分満足した。身体は。でも心までは、まだまだ。それに、レイコさんの言葉もある。だから、奥さんを排除してまで独占する気なんてまったく起こらない。彼がいみじくも言ったように、最高のおもちゃ以上の気持ちはない。彼もそれはわかっている。これだから年上は楽だ。

「でも、あの『懇親会』より前から知り合いなんでしょ、カレと」

「レイコさんの店の客同士としてなあ」

 彼の手が耳に掛かった髪を解き、耳たぶをくすぐる。

「最初は営業に行ったんや。うっとことコラボでけまへんか、言うて。で、レイコさん美人やし。ボクもそういう趣味あるわけやし。商売抜きで客として行くほうが多なったんや。そのうちアンドはんに会うて・・・。でも同じ客として会うのと、スミレちゃん貸して言いに行くのとはちゃうねん。会うときスミレちゃんも一緒にいてほしいんや」

「・・・いいけど」

「ホンマ?」

「一度話してみるよ。どうせきっと、好きにしろっていうと思うよ」

「さよか。でも、それはそれで、スミレちゃんも、せつないなあ・・・」

「・・・まあね」

「普通の感覚でいうたら、やきもち妬いて欲しいわいなあ。ま、嫁他の男に抱かせとるヤツに言われとないわて、言われるやろけどなあ・・・」

 深刻な話も、この男の口から出るとどこかコミカルになってしまう。それが気持ちを楽にする。布袋腹で脂ぎった中年男でも、これほど女あしらいが上手だとモテるんだろうなあ、と思う。

「ほかに男作ってイカされるとこ見せろっていうくらいだもん。それで昂奮するんだって」

「それ、めっちゃ、わかるわ。ボクも嫁イカされとるとこ見たい思う。でも相手の男次第やけどなあ、それは。ふつうはそんな気色悪いことようせんわなあ。ああいう『懇親会』ぐらいがええとこやな」

 ふとナカジマのことを相談したくなった。サキさんには自分で解決しろと言われたが、正直気が重すぎて取り掛かる気にもなれずにズルズル先延ばししていた。

 イワイはやっぱりまともだった。

「そら、可哀そうやわ。もちろん、スミレのちゃんやのうて、その男の子のほうやで。ボクかて経験あるしなあ。似合わんこと言うけど、思い出したらそういうビターな思い出ばっかや。気持ち、わかるなあ・・・」

「・・・やっぱ、そうだよね」

「いっぺん、ちゃんと話、したりいな。けど、アンドはんのことは言わんといいたほうがええよ。ピュアーな気持ちとして、もう終わらそうて。そう言わんとな」

 イワイがシャワーを浴びている間、さっき机の上で開きかけたカタログを見た。指輪、イヤリング、ペンダント、コサージュ。どれも同じ、デフォルメされたイルカのレリーフがモチーフになっている。その洗練されたセンスに感じ入っていると、あるページに目が留まった。

 一瞬だけだったが、覚えていた。そのページに載っていた写真と同じペンダントがレイコさんの胸元でキラキラしていたのを。レイコさんのはホールがあったが写真のほうはそれがなかった。

 ああ。あれは、そういうことだったのか。

 カタログを見せながら、これはエスペシャルな一点で、と言いながら贈れば女は悪い気がしない。

 自分だけの一品。

 そういう言葉に女はヨワイ。イワイは営業で、と言っていたが、レイコさんの方は・・・。なかなかに興味深いことを知った。
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