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大学生のおけいこ
44 寝取られ男撃退ミッション
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いつもの通り玄関で妻に見送らせ、ニイナは会社に向かった。
「行ってらっしゃいませ」
青ざめ、打ちひしがれて跪く妻を顧みもしなかった。いい気味だ。もっと苦しめ。心の中でそう毒づきさえした。
この、戦前から三代続く老舗機械加工企業の御曹司で、ゆくゆくは四代目社長として社員四百人の頂点に立つ夫たる自分。その自分を長期にわたって裏切り続けた報いは、たかが数百万のはした金で許すことはできない。相手の、中東某国の大使館とやらに勤務する男に、彼は慰謝料として1,500万を請求した。
以前から怪しいと思っていた妻に探偵をつけたのは年が明けてすぐだった。
ニイナが長期で出張するときは八割がた家を留守にしていた。それ以外にも、月に二三度は日中不在のことがあった。
「どこに行っていた?」
「ちょっと、友達に会いに・・・」
「友達って誰だ」
「学生時代の・・・」
スマートフォンは紛失した際に困るという理由でロックがかけられ、暗証番号さえ夫の自分に伏せる。結婚して三年。最初の一年ほどはその官能的なまでの姿態を週一ほどで堪能していた。だがここ一年は夜の相手を拒むことも増えた。数少ない共にする閨の中でも、ニイナの奮闘も空しく、人形のようにただ寝ているだけの妻。
その妻が、よもや浮気にうつつを抜かしていようとは・・・。
調査会社から受け取った報告書は、ニイナにとって晴天の霹靂と言うべきものだった。
背の高い彫りの深い好男子に甘えたようにもたれかかりながら繁華街を歩く妻。その蕩けた表情。
その男の腕に添えられた、見慣れた白いふっくらした手。
男に手を取られラブホテルに。またある時は男が妻のために市内に用意した部屋に誘う。
そんな姿が数回にわたって撮影されていた。
報告書に添付されたその写真を目にするや、あらかじめ弁護士に注意されていたことも忘れ、トモコを殴った。
それ以来、彼女を抱いていない。
このような穢れた妻を抱く気にはならない。
そう妻には言った。
だが本心は抱きたくて仕方なかった。滅茶苦茶に犯してやりたかった。
相手の男と自分の性戯を比べられるのが怖かったのだ。
しおらしく打ちひしがれている風を装ってはいるが、その心の中はわからない。自分の妻を一度も絶頂に導けなかった哀れな男。そんな風にあざけられているのでは。
一度そう思ってしまうと恐れの方が上回り、妻に触れることさえ避けていた。
そんな内心を悟られたくなくて過度に罵声を浴びせ詰りつつけた。
どうやら妻は例の変態的な性愛に染められてしまっているようだとも報告書にはあった。比べられるのは嫌だ。だから言葉で責める。
食事中には、
「へえ、こんな状況でよくメシが食えるなあ」と責め、
床にはいると、
「やはり長い間平気で夫を裏切ってきたやつは神経が図太いんだな」と責め、
妻がニイナの怒りを宥めようとして身体を開こうとすると、
「散々間男のおもちゃにされた汚い身体を抱けというのか。それは新手の拷問か」
そんなふうに責めまくった。
もう夫婦の間はズタズタだ。
その不満と恨みは当然のように相手の男に向かった。
相手はニイナの弁護士が送った内容証明に対してすぐに顧問弁護士を通じて回答を寄越した。大使館に内密にする条件で請求に応ずると、回答書にはあった。
ニイナには、それが面白くない。
弁護士は、
「これだけの金額の請求に応じてきたのですから受ける方が得策です」と言った。
それは慰謝料総額の十数パーセントを手にする方としてみれば、総額が大きい方がいいからそう言うのだとニイナは思った。だから、弁護士の制止も聞かず、報告書の内容を暴露する手紙を大使あてに送った。
相手は当然減額を主張してきた。示談交渉中にも拘わらず一方的に情報を流布されて名誉を棄損されたから、というのがその理由だ。それに対して、さらに精神的ダメージを与えるべく、相手の男に探偵を張り付かせて逐一行動を報告させている。嫌がらせが目的なので追跡が露見しても構わないと指示した。当然、これも弁護士には反対されている。
「業務妨害に当たります。即刻お止めになるべきです。さもないと逆に刑事告訴されますよ。それだけならまだしも、国際問題にでもなれば収拾がつかなくなります!」
おかげで弁護士とも険悪な状態になってしまっている。
そんな日々が続いていた。
しかしまだ腸が煮えていた。どうにも悔し過ぎて、腹の虫が収まらない!
今夜も言葉で妻を責めるとしようか。どうやって責め苛もうか。
そんなことを考え、不充分な留飲を下げながら、市街の東のベッドタウンから地下鉄に乗った。
二三駅過ぎたあたりで、込み合った車内の、それもすぐそばから若い女性の小さな、苦し気な声が聞こえてきた。
「・・・やめて、やめてください」
ふと見ると、長い髪をした目元の涼し気なリクルートスーツ姿の女性が、細いフレームの眼鏡の下の美しい顔を歪めている。細身のわりにスーツの下の乳房が大きいことが一目でわかる。
・・・可愛い。
高校のころ憧れていた先輩にそっくりのその女性に、似合わない邪な義侠心にかられた。手をつかねるうちに女性はさらに大胆にイタズラされているらしいのだが、周りは厄介ごとに巻き込まれるのを恐れてか無関心を装っている。
女性は恥ずかしさからか、必死にそれを耐えている。その風情がまた、ニイナのスケベ心を煽った。
ここは社会的地位のある自分が女性を助け、あわよくば女性の好意を得て関係に持ち込めるのではという下衆な下心がムクムクと頭をもたげ、どうにも我慢が出来なくなった。
電車が駅に着く直前を狙おう。
次の駅の案内アナウンスが入ったのを見計らい、
「おい、キミ! やめろ。嫌がってるじゃないか!」
行動を起こした。彼女の後ろで身体を密着させている金髪の若い男の手を掴んだ。
「なにすんだ、テメー」
「しらばっくれるな。キミのチカン行為、ちゃんと見てたんだぞ」
男の腕をねじり上げた。ひ弱そうな男だが、万一がある。鞄を盾に必死に力を込めた。都合よく電車はスピードを落とし、駅に着いた。
「来い! 駅員に突き出してやる」
「放せ! 放せコラ」
暴れる男を何とか抑えつけてドアが開くや大声で駅員を呼んだ。
「駅員さん! 痴漢です。お願いします!」
「あっ!」
例の女性がニイナの身体にぶつかって来た。後ろから降車しようとする人の群れに押されたのだろう。
「あ、すみません」
その一瞬をついて、若い金髪男はニイナの腕を振り払い、逃げ足速くラッシュの人ごみの中に消えた。
もう少しでヒーローになれるところだったのに。
ここのところの鬱屈した心理状態から抜け出せる好機をニイナは逃した。気を取り直したころには、男の影も形も完全に見失っていた。
「あの、ありがとうございました。お怪我はありませんか」
その女性に声を掛けられ、やっと我に返った。
「あ、ああ・・・。そちらこそ、大事ありませんか」
「おかげさまで、助かりました。あなたのような人がもっと大ぜいいてくれればいいのに。
・・・あの、今は急ぐのですが、お礼させていただけませんか。お名前をいただければ・・・」
最初は何人かが遠巻きにしていたが、捕り物劇が終わるや、皆それぞれの行く先に向かって輪を解き、次の電車が来る前のひと時のフォームの閑散が出来ていた。
「そんな。・・・大したことしてませんから」
本当は大したことだと思ってもらいたい下心をなんとかねじ伏せた。
「いいえ。それでは気が済みません」
女性は通っている大学の名前を言った。ニイナが二度受験して二度とも落ちた私立大学だった。
「サンジョーレイコと言います。あの、お名刺いただけますか。ぜひお礼をさせてください」
「・・・そうですか。それでは、・・・私、こういうものです」
「あ、知ってます。こんどOB訪問しようと思ってました。役員さんだったんですね・・・」
「わが社に入社をお考えなんですか」
「はい・・・」
自分の名刺に見入るこのレイコという女子大生に、ニイナは思いきり鼻の下を伸ばした。
「よろしかったら、いちど弊社に来てください。あの大学なら、必ず採用になりますよ」
「本当ですかぁ、嬉しいですぅ!」
「受付にニイナと言っていただければわかります。それじゃあ、お気をつけて」
あまり長々引っ張ると下心を疑われる。就職を希望しているなら、この先も期待できる。ここはあっさり別れた方が印象がいい。
「本当にどうも、ありがとうございました。必ずご連絡します!」
そう言ってレイコは次にフォームに滑り込んできた電車に乗って大学に向かった。
ふむ。まだ俺も捨てたもんじゃないな。
ニイナは独り言ちた。
寝取られた女房の代わりに若い女子大生とムフフな関係にになれるなら、むしろそのほうがいい。
ニイナはその電車を見送り、会社に向かった。
次の駅で降り、女子トイレの個室でウィッグを取り眼鏡を外して外に出た。
スマートフォンでミッションに協力してくれたかわいい手下を呼び出した。
「あ、クマちゃん? 大丈夫だった? ケガとかしてない?」
「全然ヘーキだよ」
「よかったー。クマちゃんヤワだから心配したよ。ごめんね、アブないことさせて。八っちゃんにやらせると相手の腕へし折っちゃいそうだったからさあ・・・」
「でも、あんなんでよかったの?」
「も、サイコー。上出来だったよ。大成功!
このお礼はちゃんとするからね。ありがとね」
「いいって、いいって」
地下鉄の駅の出口でクマちゃんは笑った。
「でもさ、アレ、萌えちゃった。こんど続きやろうよ。スミレだって濡らしてただろ? えへへ。じゃあ、第二ステージ、頑張ってね」
クマちゃんはスマートフォンをタップするとジーンズの尻のポケットにそれを突っ込み、目に着いたカワイイ女の子の尻を追っかけて「ねえねえ、カノジョー」と声を掛け始めた。
大学の講義が終わると法学部棟を出て遠く工学部2号館まで行きトイレに直行して朝の変装を再現した。ここならあまり知っている顔もいないからだ。鏡でチェックをし終えると八ちゃんにLINEした。彼は通話で返してきた。
「こっちはいつでもいいよ」
「たぶん待ち合わせは動物園の近くらへんになると思う。合流したら隙を見てホテル教えるから。たのむね」
「了解」
スマートフォンのダウンロードフォルダにある写真をもう一度チェックする。ターゲットの一学年上の高校卒業アルバムから抽出した、あこがれだった先輩の写真を見て鏡の中のウィッグをもう一度手直しする。
向こうが探偵を使うなら、こちらも使ったまでの事だ。尾行調査に比べれば素性調査は比較的安く済む。それに向こうはプレッシャーをかけるために使い、こちらは一撃でノックアウトするために使っている。費用対効果でいえば、圧倒的にこちらの方が価値がある。これはビジネスの基本。スミレにとって、これは愛する男を守るためのミッションなのだ。
あとはスミレの手腕にかかっている。
ガンバレ、スミレ。愛するサキさんのためだ。そうでないと彼はまた・・・。
「このままだと仕事に差し支える。やりたくはないが、彼を、サクラの旦那を物理的に排除することも検討しなけりゃならんかもしらん・・・」
スミレはもうサキさんに人殺しをさせたくなかった。それを繰り返すと、彼の心の傷はさらに広がり、回復不能なダメージを負うかもしれない。彼は、サキさんは、本当に悪魔になってしまうだろう。
サルはいなくなってしまったが、イヌとキジのチームは健在だった。桃太郎は少しづつサルの持っていた重厚さも兼ね備えるようになっていた。愛する男を守るために、女はより強く、逞しくなってゆくのだ。
鏡の中の、ターゲットのあこがれの先輩は銀縁の眼鏡をかける。
図書館の前のベンチで秘書用のスマートフォンからターゲットのオフィスに非通知で電話をする。
ターゲットの今日の予定は把握済みだ。受付が、出た。
「サンジョーと申しますが、取締役営業部長のニイナさんいらっしゃいますか」
出社するや総務の人事係に問い合わせた。
エントリーシートにサンジョーレイコという学生の名前はあるか、と。大学名も伝えた。
しかし、その大学の学生は一人も載っておらず、サンジョーレイコという名前も見当たらないという返事が来た。
「ああそう。わかった、ありがとう」
ニイナは内線電話を切った。
彼女と別れてから未練がつのりだした。
あの理知的な風貌。薄く濡れた唇。スレンダーな割に突き出した胸・・・。
何もかも高校時代にあこがれた先輩にそっくり、いや、それ以上だった。
妻のトモコの身体も悪くはない。見合いの写真で一目で気に入り、当初難色を示したトモコを仲人を拝み倒して結婚に漕ぎつけた。しかし、青春時代の憧れの、それ以上の女性が現実に存在するのを知った今、不貞を犯した妻などもうどうでもよくなるほどに胸が高鳴った。気が付けばスマートフォンの着信を何度も気にして仕事が手に着かないほどだった。
机上の電話が鳴った。
「・・・はい」
「3番にお電話です。サンジョー・レイコさんという学生ですが・・・」
キターっ!
待っていた電話が今日のうちに来た。なんてツイてるんだろう!
と外線ボタンを押しかけたニイナはそこで考えた。
物欲しそうに連絡を待っていたと思われるのもアレだな、と。ここは忙しいビジネスマンを演出しとく方がいいかな、と。
「ああ、ちょっと今手が離せないんだ。連絡先聞いておいてくれる? かけ直すから、って」
「かしこまりました」
ちょうど定時前だ。いそいそとパソコンを閉じ帰り支度を始めると、こういうときに限って工場から注文品の不具合連絡が来る。ぶん殴りたくなるのを懸命に堪え、
「ああ。そりゃまずいな。だけどその対応、明日の朝でもいいかな。きょうこれから大事な商談があってどうしても抜けられないんだ。朝一で工場に直行するから」
電話を切ってすぐに出張中の父社長から直電がある。
「今工場から電話があったが、量産品じゃなくてお前が注文を受けた特注品の不具合だそうじゃないか。お前の指示がないと動けないと言ってきたぞ。大事な商談て、どこのだ」
工場の奴ら・・・。余計なことをチクりやがって!
「サガワさんのとこですが・・・」
「じゃあ、そっちを伸ばしてもらえ。サガワさんならオレが電話しておいてやる」
「あ、いいですいいです。ボク電話します。これから工場対応に行きます」
口から出まかせに言ったことを確認されたら困る。
まったく。
工場の連中は無能ばかりだ。いつも些細なことで人を呼び出す。その特注品のクライアントに電話をし、納期の再確認をし、さらに、
「コンマ三ケタレベルですが、微妙な調整が必要でして。もう一度温度調整から再チェックしたいのでもうあと一週間ほど納期の余裕が欲しいのですが・・・。よろしいですか?助かります。ありがとうございます。・・・はい、それはもう。品質第一でやらせていただきますので・・・」
電話を切ってもう一度工場を呼び出す。
「も一週間、納期伸ばしてもらったから。いますぐボクが行ってどうなる程度の対応じゃ困るでしょ。キチンとじっくり腰据えて対応してほしいなあ。わかった?
それから社長に余計なこと言わないようにね。これの担当はボクなんだから。こっちと社長と二手も対応する身にもなってよ。・・・それはわかるよ。だから納期伸ばしてまで慎重にしようとしてるじゃないか。・・・ウン。・・・ウン。わかった。じゃ、明日の朝、そっちに行くから・・・」
もしかしてこいつら、ワザと自分を妨害するためにこういうことを言ってくるんじゃないか?
ニイナは工場の担当者に毒づいた。それほどまでにあの高校時代の憧れのそっくりさん、サンジョーレイコに夢中になってしまっていた。今朝、満員電車で会ったばかりの、ただの女子大生に過ぎないのに。
女房を寝取られた、男のプライドをズタズタにされた憤懣と悔しさがそれほどまでにニイナを物狂おしくさせていた。あの高校時代の憧れを自分の下に組み敷いて思う存分、思いのままに・・・。
初めは彼女を入社させて役員の秘書にして、と息の長いプランも考えてはいたが、その日のうちに受けた彼女からの電話が、彼に一直線に最短コースを選ばざるを得なくしていた。
あの、拒否しつつも男の愛撫に悶えていた美しい女子大生の恍惚とした表情が妻のトモコの悶える姿態に重なり、彼の股間のものをかつてないほどにいきり勃たせていた。
そして震える指でスマートフォンをタップした。
「もしもし、サンジョーさんですか? お電話いただいた、ニイナです!」
あまり大きくないホテルの方がいい。あまり人目が多いとあとで大事になったときに困る。
ニイナは街中のホテルのラウンジを指定してきたが、自分のアパートに近いからという理由で、予定通り少し中心街から離れた、すぐ近くにラブホテルもある喫茶店を指定した。そこにカメラを装備した八ちゃんを待機させた。
食事がまだだという点から近くのファミレスにも行ける。そこでアルコール、都合よく近くにスナックバーもある。そして例のように酔ったふりをしてラブホテルに連れ込まれる。その一部始終を写真と動画に収める。
ホテルの中ではどうなってもいい。前のヤリチン狩りのときのようにスミレのピアスに臆してもいいし、そのまま事に及んだっていい。要は出てきたときにそれを写真と動画に収め、あとは八ちゃんが「俺の女に手を出しやがって」的にニイナにカラみ、ちょっとした大事にして・・・。出来ればニイナが逃げ出すような感じになればいい。
そしてデータをミタライさんと相手の会社の社長あてに送りつけて、このミッションは終了だ。
相手は業務妨害になるほどに探偵を使っている負い目がある。それにこれは相手の会社にとっては大きなスキャンダルになる。絶対に表沙汰にはしたくないだろう。就職活動中の女子大生を入社をエサに手籠めにした次期社長。そういう烙印は是が非でも回避したがるはずだ。
「実はこんなものが小職の事務所のポストに投函されておりまして・・・」
交渉のテーブルでミタライさんがおもむろに資料を取り出せば、ニイナは白旗を上げざるを得ない。
我ながら完璧な計画だ。
スミレはひとり、ブラックコーヒーを楽しみ、ほくそ笑んだ。
しかし、その日。肝心のターゲットは待てど暮らせどいっこうに現れず、会社も8時を過ぎるころになると電話が繋がらなくなった。仕方なく八ちゃんに撤収を伝え、トボトボ家に帰った。
それだけではなかった。
翌日、授業が終わってから報告に行ったスイートで、スミレはサキさんからこっぴどく、叱られた。スイートに足を踏み入れた途端、頭ごなしに怒鳴られた。
「バカか。お前は!」
「行ってらっしゃいませ」
青ざめ、打ちひしがれて跪く妻を顧みもしなかった。いい気味だ。もっと苦しめ。心の中でそう毒づきさえした。
この、戦前から三代続く老舗機械加工企業の御曹司で、ゆくゆくは四代目社長として社員四百人の頂点に立つ夫たる自分。その自分を長期にわたって裏切り続けた報いは、たかが数百万のはした金で許すことはできない。相手の、中東某国の大使館とやらに勤務する男に、彼は慰謝料として1,500万を請求した。
以前から怪しいと思っていた妻に探偵をつけたのは年が明けてすぐだった。
ニイナが長期で出張するときは八割がた家を留守にしていた。それ以外にも、月に二三度は日中不在のことがあった。
「どこに行っていた?」
「ちょっと、友達に会いに・・・」
「友達って誰だ」
「学生時代の・・・」
スマートフォンは紛失した際に困るという理由でロックがかけられ、暗証番号さえ夫の自分に伏せる。結婚して三年。最初の一年ほどはその官能的なまでの姿態を週一ほどで堪能していた。だがここ一年は夜の相手を拒むことも増えた。数少ない共にする閨の中でも、ニイナの奮闘も空しく、人形のようにただ寝ているだけの妻。
その妻が、よもや浮気にうつつを抜かしていようとは・・・。
調査会社から受け取った報告書は、ニイナにとって晴天の霹靂と言うべきものだった。
背の高い彫りの深い好男子に甘えたようにもたれかかりながら繁華街を歩く妻。その蕩けた表情。
その男の腕に添えられた、見慣れた白いふっくらした手。
男に手を取られラブホテルに。またある時は男が妻のために市内に用意した部屋に誘う。
そんな姿が数回にわたって撮影されていた。
報告書に添付されたその写真を目にするや、あらかじめ弁護士に注意されていたことも忘れ、トモコを殴った。
それ以来、彼女を抱いていない。
このような穢れた妻を抱く気にはならない。
そう妻には言った。
だが本心は抱きたくて仕方なかった。滅茶苦茶に犯してやりたかった。
相手の男と自分の性戯を比べられるのが怖かったのだ。
しおらしく打ちひしがれている風を装ってはいるが、その心の中はわからない。自分の妻を一度も絶頂に導けなかった哀れな男。そんな風にあざけられているのでは。
一度そう思ってしまうと恐れの方が上回り、妻に触れることさえ避けていた。
そんな内心を悟られたくなくて過度に罵声を浴びせ詰りつつけた。
どうやら妻は例の変態的な性愛に染められてしまっているようだとも報告書にはあった。比べられるのは嫌だ。だから言葉で責める。
食事中には、
「へえ、こんな状況でよくメシが食えるなあ」と責め、
床にはいると、
「やはり長い間平気で夫を裏切ってきたやつは神経が図太いんだな」と責め、
妻がニイナの怒りを宥めようとして身体を開こうとすると、
「散々間男のおもちゃにされた汚い身体を抱けというのか。それは新手の拷問か」
そんなふうに責めまくった。
もう夫婦の間はズタズタだ。
その不満と恨みは当然のように相手の男に向かった。
相手はニイナの弁護士が送った内容証明に対してすぐに顧問弁護士を通じて回答を寄越した。大使館に内密にする条件で請求に応ずると、回答書にはあった。
ニイナには、それが面白くない。
弁護士は、
「これだけの金額の請求に応じてきたのですから受ける方が得策です」と言った。
それは慰謝料総額の十数パーセントを手にする方としてみれば、総額が大きい方がいいからそう言うのだとニイナは思った。だから、弁護士の制止も聞かず、報告書の内容を暴露する手紙を大使あてに送った。
相手は当然減額を主張してきた。示談交渉中にも拘わらず一方的に情報を流布されて名誉を棄損されたから、というのがその理由だ。それに対して、さらに精神的ダメージを与えるべく、相手の男に探偵を張り付かせて逐一行動を報告させている。嫌がらせが目的なので追跡が露見しても構わないと指示した。当然、これも弁護士には反対されている。
「業務妨害に当たります。即刻お止めになるべきです。さもないと逆に刑事告訴されますよ。それだけならまだしも、国際問題にでもなれば収拾がつかなくなります!」
おかげで弁護士とも険悪な状態になってしまっている。
そんな日々が続いていた。
しかしまだ腸が煮えていた。どうにも悔し過ぎて、腹の虫が収まらない!
今夜も言葉で妻を責めるとしようか。どうやって責め苛もうか。
そんなことを考え、不充分な留飲を下げながら、市街の東のベッドタウンから地下鉄に乗った。
二三駅過ぎたあたりで、込み合った車内の、それもすぐそばから若い女性の小さな、苦し気な声が聞こえてきた。
「・・・やめて、やめてください」
ふと見ると、長い髪をした目元の涼し気なリクルートスーツ姿の女性が、細いフレームの眼鏡の下の美しい顔を歪めている。細身のわりにスーツの下の乳房が大きいことが一目でわかる。
・・・可愛い。
高校のころ憧れていた先輩にそっくりのその女性に、似合わない邪な義侠心にかられた。手をつかねるうちに女性はさらに大胆にイタズラされているらしいのだが、周りは厄介ごとに巻き込まれるのを恐れてか無関心を装っている。
女性は恥ずかしさからか、必死にそれを耐えている。その風情がまた、ニイナのスケベ心を煽った。
ここは社会的地位のある自分が女性を助け、あわよくば女性の好意を得て関係に持ち込めるのではという下衆な下心がムクムクと頭をもたげ、どうにも我慢が出来なくなった。
電車が駅に着く直前を狙おう。
次の駅の案内アナウンスが入ったのを見計らい、
「おい、キミ! やめろ。嫌がってるじゃないか!」
行動を起こした。彼女の後ろで身体を密着させている金髪の若い男の手を掴んだ。
「なにすんだ、テメー」
「しらばっくれるな。キミのチカン行為、ちゃんと見てたんだぞ」
男の腕をねじり上げた。ひ弱そうな男だが、万一がある。鞄を盾に必死に力を込めた。都合よく電車はスピードを落とし、駅に着いた。
「来い! 駅員に突き出してやる」
「放せ! 放せコラ」
暴れる男を何とか抑えつけてドアが開くや大声で駅員を呼んだ。
「駅員さん! 痴漢です。お願いします!」
「あっ!」
例の女性がニイナの身体にぶつかって来た。後ろから降車しようとする人の群れに押されたのだろう。
「あ、すみません」
その一瞬をついて、若い金髪男はニイナの腕を振り払い、逃げ足速くラッシュの人ごみの中に消えた。
もう少しでヒーローになれるところだったのに。
ここのところの鬱屈した心理状態から抜け出せる好機をニイナは逃した。気を取り直したころには、男の影も形も完全に見失っていた。
「あの、ありがとうございました。お怪我はありませんか」
その女性に声を掛けられ、やっと我に返った。
「あ、ああ・・・。そちらこそ、大事ありませんか」
「おかげさまで、助かりました。あなたのような人がもっと大ぜいいてくれればいいのに。
・・・あの、今は急ぐのですが、お礼させていただけませんか。お名前をいただければ・・・」
最初は何人かが遠巻きにしていたが、捕り物劇が終わるや、皆それぞれの行く先に向かって輪を解き、次の電車が来る前のひと時のフォームの閑散が出来ていた。
「そんな。・・・大したことしてませんから」
本当は大したことだと思ってもらいたい下心をなんとかねじ伏せた。
「いいえ。それでは気が済みません」
女性は通っている大学の名前を言った。ニイナが二度受験して二度とも落ちた私立大学だった。
「サンジョーレイコと言います。あの、お名刺いただけますか。ぜひお礼をさせてください」
「・・・そうですか。それでは、・・・私、こういうものです」
「あ、知ってます。こんどOB訪問しようと思ってました。役員さんだったんですね・・・」
「わが社に入社をお考えなんですか」
「はい・・・」
自分の名刺に見入るこのレイコという女子大生に、ニイナは思いきり鼻の下を伸ばした。
「よろしかったら、いちど弊社に来てください。あの大学なら、必ず採用になりますよ」
「本当ですかぁ、嬉しいですぅ!」
「受付にニイナと言っていただければわかります。それじゃあ、お気をつけて」
あまり長々引っ張ると下心を疑われる。就職を希望しているなら、この先も期待できる。ここはあっさり別れた方が印象がいい。
「本当にどうも、ありがとうございました。必ずご連絡します!」
そう言ってレイコは次にフォームに滑り込んできた電車に乗って大学に向かった。
ふむ。まだ俺も捨てたもんじゃないな。
ニイナは独り言ちた。
寝取られた女房の代わりに若い女子大生とムフフな関係にになれるなら、むしろそのほうがいい。
ニイナはその電車を見送り、会社に向かった。
次の駅で降り、女子トイレの個室でウィッグを取り眼鏡を外して外に出た。
スマートフォンでミッションに協力してくれたかわいい手下を呼び出した。
「あ、クマちゃん? 大丈夫だった? ケガとかしてない?」
「全然ヘーキだよ」
「よかったー。クマちゃんヤワだから心配したよ。ごめんね、アブないことさせて。八っちゃんにやらせると相手の腕へし折っちゃいそうだったからさあ・・・」
「でも、あんなんでよかったの?」
「も、サイコー。上出来だったよ。大成功!
このお礼はちゃんとするからね。ありがとね」
「いいって、いいって」
地下鉄の駅の出口でクマちゃんは笑った。
「でもさ、アレ、萌えちゃった。こんど続きやろうよ。スミレだって濡らしてただろ? えへへ。じゃあ、第二ステージ、頑張ってね」
クマちゃんはスマートフォンをタップするとジーンズの尻のポケットにそれを突っ込み、目に着いたカワイイ女の子の尻を追っかけて「ねえねえ、カノジョー」と声を掛け始めた。
大学の講義が終わると法学部棟を出て遠く工学部2号館まで行きトイレに直行して朝の変装を再現した。ここならあまり知っている顔もいないからだ。鏡でチェックをし終えると八ちゃんにLINEした。彼は通話で返してきた。
「こっちはいつでもいいよ」
「たぶん待ち合わせは動物園の近くらへんになると思う。合流したら隙を見てホテル教えるから。たのむね」
「了解」
スマートフォンのダウンロードフォルダにある写真をもう一度チェックする。ターゲットの一学年上の高校卒業アルバムから抽出した、あこがれだった先輩の写真を見て鏡の中のウィッグをもう一度手直しする。
向こうが探偵を使うなら、こちらも使ったまでの事だ。尾行調査に比べれば素性調査は比較的安く済む。それに向こうはプレッシャーをかけるために使い、こちらは一撃でノックアウトするために使っている。費用対効果でいえば、圧倒的にこちらの方が価値がある。これはビジネスの基本。スミレにとって、これは愛する男を守るためのミッションなのだ。
あとはスミレの手腕にかかっている。
ガンバレ、スミレ。愛するサキさんのためだ。そうでないと彼はまた・・・。
「このままだと仕事に差し支える。やりたくはないが、彼を、サクラの旦那を物理的に排除することも検討しなけりゃならんかもしらん・・・」
スミレはもうサキさんに人殺しをさせたくなかった。それを繰り返すと、彼の心の傷はさらに広がり、回復不能なダメージを負うかもしれない。彼は、サキさんは、本当に悪魔になってしまうだろう。
サルはいなくなってしまったが、イヌとキジのチームは健在だった。桃太郎は少しづつサルの持っていた重厚さも兼ね備えるようになっていた。愛する男を守るために、女はより強く、逞しくなってゆくのだ。
鏡の中の、ターゲットのあこがれの先輩は銀縁の眼鏡をかける。
図書館の前のベンチで秘書用のスマートフォンからターゲットのオフィスに非通知で電話をする。
ターゲットの今日の予定は把握済みだ。受付が、出た。
「サンジョーと申しますが、取締役営業部長のニイナさんいらっしゃいますか」
出社するや総務の人事係に問い合わせた。
エントリーシートにサンジョーレイコという学生の名前はあるか、と。大学名も伝えた。
しかし、その大学の学生は一人も載っておらず、サンジョーレイコという名前も見当たらないという返事が来た。
「ああそう。わかった、ありがとう」
ニイナは内線電話を切った。
彼女と別れてから未練がつのりだした。
あの理知的な風貌。薄く濡れた唇。スレンダーな割に突き出した胸・・・。
何もかも高校時代にあこがれた先輩にそっくり、いや、それ以上だった。
妻のトモコの身体も悪くはない。見合いの写真で一目で気に入り、当初難色を示したトモコを仲人を拝み倒して結婚に漕ぎつけた。しかし、青春時代の憧れの、それ以上の女性が現実に存在するのを知った今、不貞を犯した妻などもうどうでもよくなるほどに胸が高鳴った。気が付けばスマートフォンの着信を何度も気にして仕事が手に着かないほどだった。
机上の電話が鳴った。
「・・・はい」
「3番にお電話です。サンジョー・レイコさんという学生ですが・・・」
キターっ!
待っていた電話が今日のうちに来た。なんてツイてるんだろう!
と外線ボタンを押しかけたニイナはそこで考えた。
物欲しそうに連絡を待っていたと思われるのもアレだな、と。ここは忙しいビジネスマンを演出しとく方がいいかな、と。
「ああ、ちょっと今手が離せないんだ。連絡先聞いておいてくれる? かけ直すから、って」
「かしこまりました」
ちょうど定時前だ。いそいそとパソコンを閉じ帰り支度を始めると、こういうときに限って工場から注文品の不具合連絡が来る。ぶん殴りたくなるのを懸命に堪え、
「ああ。そりゃまずいな。だけどその対応、明日の朝でもいいかな。きょうこれから大事な商談があってどうしても抜けられないんだ。朝一で工場に直行するから」
電話を切ってすぐに出張中の父社長から直電がある。
「今工場から電話があったが、量産品じゃなくてお前が注文を受けた特注品の不具合だそうじゃないか。お前の指示がないと動けないと言ってきたぞ。大事な商談て、どこのだ」
工場の奴ら・・・。余計なことをチクりやがって!
「サガワさんのとこですが・・・」
「じゃあ、そっちを伸ばしてもらえ。サガワさんならオレが電話しておいてやる」
「あ、いいですいいです。ボク電話します。これから工場対応に行きます」
口から出まかせに言ったことを確認されたら困る。
まったく。
工場の連中は無能ばかりだ。いつも些細なことで人を呼び出す。その特注品のクライアントに電話をし、納期の再確認をし、さらに、
「コンマ三ケタレベルですが、微妙な調整が必要でして。もう一度温度調整から再チェックしたいのでもうあと一週間ほど納期の余裕が欲しいのですが・・・。よろしいですか?助かります。ありがとうございます。・・・はい、それはもう。品質第一でやらせていただきますので・・・」
電話を切ってもう一度工場を呼び出す。
「も一週間、納期伸ばしてもらったから。いますぐボクが行ってどうなる程度の対応じゃ困るでしょ。キチンとじっくり腰据えて対応してほしいなあ。わかった?
それから社長に余計なこと言わないようにね。これの担当はボクなんだから。こっちと社長と二手も対応する身にもなってよ。・・・それはわかるよ。だから納期伸ばしてまで慎重にしようとしてるじゃないか。・・・ウン。・・・ウン。わかった。じゃ、明日の朝、そっちに行くから・・・」
もしかしてこいつら、ワザと自分を妨害するためにこういうことを言ってくるんじゃないか?
ニイナは工場の担当者に毒づいた。それほどまでにあの高校時代の憧れのそっくりさん、サンジョーレイコに夢中になってしまっていた。今朝、満員電車で会ったばかりの、ただの女子大生に過ぎないのに。
女房を寝取られた、男のプライドをズタズタにされた憤懣と悔しさがそれほどまでにニイナを物狂おしくさせていた。あの高校時代の憧れを自分の下に組み敷いて思う存分、思いのままに・・・。
初めは彼女を入社させて役員の秘書にして、と息の長いプランも考えてはいたが、その日のうちに受けた彼女からの電話が、彼に一直線に最短コースを選ばざるを得なくしていた。
あの、拒否しつつも男の愛撫に悶えていた美しい女子大生の恍惚とした表情が妻のトモコの悶える姿態に重なり、彼の股間のものをかつてないほどにいきり勃たせていた。
そして震える指でスマートフォンをタップした。
「もしもし、サンジョーさんですか? お電話いただいた、ニイナです!」
あまり大きくないホテルの方がいい。あまり人目が多いとあとで大事になったときに困る。
ニイナは街中のホテルのラウンジを指定してきたが、自分のアパートに近いからという理由で、予定通り少し中心街から離れた、すぐ近くにラブホテルもある喫茶店を指定した。そこにカメラを装備した八ちゃんを待機させた。
食事がまだだという点から近くのファミレスにも行ける。そこでアルコール、都合よく近くにスナックバーもある。そして例のように酔ったふりをしてラブホテルに連れ込まれる。その一部始終を写真と動画に収める。
ホテルの中ではどうなってもいい。前のヤリチン狩りのときのようにスミレのピアスに臆してもいいし、そのまま事に及んだっていい。要は出てきたときにそれを写真と動画に収め、あとは八ちゃんが「俺の女に手を出しやがって」的にニイナにカラみ、ちょっとした大事にして・・・。出来ればニイナが逃げ出すような感じになればいい。
そしてデータをミタライさんと相手の会社の社長あてに送りつけて、このミッションは終了だ。
相手は業務妨害になるほどに探偵を使っている負い目がある。それにこれは相手の会社にとっては大きなスキャンダルになる。絶対に表沙汰にはしたくないだろう。就職活動中の女子大生を入社をエサに手籠めにした次期社長。そういう烙印は是が非でも回避したがるはずだ。
「実はこんなものが小職の事務所のポストに投函されておりまして・・・」
交渉のテーブルでミタライさんがおもむろに資料を取り出せば、ニイナは白旗を上げざるを得ない。
我ながら完璧な計画だ。
スミレはひとり、ブラックコーヒーを楽しみ、ほくそ笑んだ。
しかし、その日。肝心のターゲットは待てど暮らせどいっこうに現れず、会社も8時を過ぎるころになると電話が繋がらなくなった。仕方なく八ちゃんに撤収を伝え、トボトボ家に帰った。
それだけではなかった。
翌日、授業が終わってから報告に行ったスイートで、スミレはサキさんからこっぴどく、叱られた。スイートに足を踏み入れた途端、頭ごなしに怒鳴られた。
「バカか。お前は!」
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