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ただいま

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ホテルを出ると、すぐに洋服屋へ行った。
シンプルなTシャツとパンツを買い、すぐ着るのでタグを切ってもらう。
そのまま新幹線のチケットを買い、駅弁も買った。
久しぶりに乗る新幹線。
最後に乗ったのは、優斗と旅行に行った時。
思い出すと辛いので、それ以上は考えるのをやめた。
新幹線で3時間、駅弁を食べたりコーヒーを飲んだり、景色を見て癒されたり。
優斗からの着信は切ってあるので、音は鳴らない。
今日は仕事だろう。
昨日は日曜日で、ちょっと買い物にでかけると言っていた。
結婚記念日だったから、プレゼントでも買ってきてくれるのかと勝手に期待した。
2人で記念日を祝って、今までの思い出話をして。
これからもよろしくね、って夜には抱き合って。
思い出すと涙が出てきたので、気分転換にまた外の景色を見る。
そうやって何度も繰り返し、ようやく実家に帰ってきた。
インターホンを押すと、中から母親の声がする。
最後に帰ったのは今年の正月。
懐かしい声でまた涙が出そうになったが、心配をかけまいと必死に笑顔をつくった。
「はいは~い、今出ますからね~…って、ゆき!」
突然の愛する息子に目を輝かせ、ぎゅぅ、と痛いくらいのハグをくれる。
安心して、少しだけ涙が出た。
「も~、どうしたの?こんな急に」
お父さんはまだ仕事中なので、母親には先に話す。
「優斗に浮気されちゃった~」
笑顔でそう言うと、母親の顔は一気に曇る。
その顔が見たくなくて、今度はもっと笑顔で言う。
「あ、心配しないで!2人から慰謝料たくさんもらって好きな物いっぱい買えるし!
臨時収入~ってことで久しぶりに家族旅行でもしよ?ね?」
それだけ明るく言っても母親は見抜いていた。
「我慢なんてしなくていいのよ」
そう言うと、さっきよりももっと強く抱きしめてくれた。
さすがにもう我慢はできなくて、母親の優しい胸でいっぱい泣いた。
父親が帰る頃には目が真っ赤に腫れて、一瞬不審者と間違えられたくらい。
お父さんはお母さんから事情を聞くと、それはもうブチ切れて今すぐ優斗に会いに行くとか言い出した。
さすがに止めたが、こうして自分を思ってくれる家族がいて幸せに思った。
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