《完》オレンジ色の誘惑《婚活パーティーでの偶然》

RIKO

文字の大きさ
2 / 5
第二章

オレンジ色

しおりを挟む
パーティー会場出入り口では

イベントスタッフが整列していた。


「ありがとうございました。

お気をつけて」

笑顔の十数人のスタッフに
見送られて会場を出た美晴。



会場の内、外、全体を見回す美晴。




(彼の姿は、どこにも見えないわ。
帰ったのかしら)


パーティー会場の外、
エレベーターの前に立つ美晴。



隅の方に押しやられている
喫煙スペースから

軽く手を上げて、
タバコを灰皿に落としてから美晴のほうへ歩いてくる藤山。


「一杯どう?」

会場を出たところで突然、
堂々と誘われた。


自分に声をかけているのか
確認のために、
美晴は辺りを見回す。



「私?」



「そうだよ。
新木さん、酷いよな。
俺、カードに新木さんって書いたのに」





(藤山さんは、
どこまで本気なのかしら? 

オフィスでもイケメンでもてる感じなのに。
婚活パーティーにまで来て)




美晴は、なおも
キョロキョロして
佐伯を探す。



(やっぱりいない。
所詮、この程度だったんだよね)


(でも、憧れてた彼と
何年もたってから
話せるなんて
思ってもみなかったなあ)





「付き合ってよ。
俺を振ったお詫びに」






「振ったなんて。そんな」




「じゃあ、いいよな?
 よっしゃ、行こう」

藤山、美晴の腕を取る。





そこへ佐伯が息を切らせて現れる。



「ちょっと、待った。
新木さん!」

美晴の腕を掴んでいる藤山の

手を掴む佐伯。





「なんだよ」



「俺も新木さんと
話があるんだ。
新木さんに
決めてもらいましょうか。
どっちと飲みに行くか」


美晴は、佐伯と藤山の顔を
交互に眺める。


(そんな、困るわ。

藤山さんは仕事の関係上
むげに出来ないし。

かといって佐伯さんと
会えたんだから、
一緒に過ごしたいな)



美晴の心はすぐに決まった。







「佐伯さんと……」



窓辺にスカイツリーが眺められるラウンジ&バー。

「いらっしゃいませ」

姿勢の良いウエイターに眺めのいい窓際、
4人掛けの広めの席に案内された。


ウエイターにドリンクのメニューを見せられる。


「ミモザをください」

オレンジジュースの入ったシャンパンベースのカクテル。

(飲みやすいし、何しろ色が気に入っているのよね)




「じゃあ、それとバカルディブラック、あとアンチョビのピザでお願いします」


佐伯は、ウエイターにゆっくりとオーダーする。



(客が偉いのが当たり前と大きな態度に出る男は苦手だけれど、

彼は誰に対しても、少しも傲慢なところの無い人だわ)



「あの、どうしてですか?

私なんかより
もっと別の人誘った方が良かったんじゃないですか?」


「ひどいなあ。そんなんだったら今こうしてないよ」


佐伯は体を前にのり出した。じっと美晴を見ている。


視線を感じて、そこら中をおよいだ美晴の視線は、
テーブルの上のミネラルウォーターが注がれたグラスに行き着く。



グラスを手にしてミネラルウォーターを湿らす程度、口に入れる。




ウエイターが、オーダーしたミモザと
バカルディブラック、小さめのアンチョビのピザを運んできた。





美晴の前のテーブルに音も無く置かれたフルート型のシャンパングラス、

彼の前にはバカルディブラックの入ったグラスが置かれた。







「新木さんは、なんで婚活パーティーに来たの?」


「それは」


(面と向かってだと、恥ずかしいな)




「結婚したいから?」
佐伯は、にっこりと微笑んで首を傾けた。




「そうなりますね」

美穂は、視線をテーブルの上のミモザへ移した。

綺麗なオレンジ色をじっと見つめた。


グラスの表面についた水滴を無意識に指先で触れていた。





「オレンジ色が好き?」

「え?」

唐突な質問に美晴、顔を上げた。




「今日は、ネイルが綺麗なオレンジ色だから」



水滴を拭った自分の指先を見た。


ネイルがミモザと同じオレンジ色だった。

「好きです」


「新木さんに似合う色だよね」
人懐っこい笑顔を向ける佐伯。



(佐伯さんの笑顔は罪だ。たった一言だけで私はすっかり有頂天になってしまった)。


「どうもありがとう」

赤らんでしまったはずの頬を指先で触って、美晴、お礼を言う。



笑顔で語り合う二人。





(こんなに佐伯さんと面と向かって話した事無かったな。楽しい人だわ)


美晴、佐伯を見つめる。



(夢見たい。佐伯さんが目の前にいるなんて)




話しながら佐伯に相槌をうつ美晴。




「ははっ、なんか新木さんって、やっぱり、おもしろい人だね」




「そうですか?」



(面白いというのが、
ほめ言葉かどうかわからないけど


彼がいい意味で言ってくれてるとすれば嬉しいかも)



「見てると飽きないな」
少し身を乗り出す佐伯。





「そうですか?」
テレまくる美晴は、どんどん俯いてしまう。






少し、沈黙があった。







「新木さんは、俺と結婚する気ある?」
真正面から、凄くあっさりとした言い方で聞いてくる佐伯。




(突然「結婚」って!)



美晴、驚いていた目を見開く。




(でも、考えてみると婚活パーティーに出席している時点で
結婚相手を探しに来ている訳だから、
結婚の話を彼が出してきても不思議では無いか)


上に羽織っていたボレロカーディガンを右手の指で掴んで、
冷房の風から体を守るように少しだけ手前に動かした。


横の通路をウエイターが通り過ぎる。


流れてきたニンニクの美味しそうな香りが、美晴の鼻に届いていた。




(ニンニクの香りを嗅ぎながら、
彼と結婚について語る日が来るなんて、少しも予想してなかったわ)






佐伯が、じっと見つめてくる。



「こ、婚活しにきてるので、結婚する気はあります」


意味も無くカーディガンの前をぎゅっと掴んで胸の前に合わせていた。


(佐伯さんは、今どんな表情してる?)


真正面から見る余裕が無くて
首を傾けて伺うように佐伯の顔を見る。



佐伯、美晴へ向けて人懐っこい笑顔を浮かべている。



それを見ただけで、
美晴は赤くなって年甲斐もなく恥ずかしげに俯く。



男を知らないウブな少女のようなしぐさだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

抱きしめて

麻実
恋愛
夫の長期に亘る不倫に 女としての自信を失った妻は、新しい出会いに飛び込んでいく。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

真実の愛は水晶の中に

立木
恋愛
学園の卒業を祝うパーティーの最中、レイシア・マレーニ侯爵令嬢は第三王子とピンク髪の女、その取り巻きたちによって断罪されようとしていた。 しかし断罪劇は思わぬ方向へ進んでいく。 ※「なろう」にも重複投稿しています。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

処理中です...